期間限定 スペシャルトーク 豪海倶楽部  

エビカニガイドブックインサイドストーリー 第14回

このエビカニインサイドストーリーのコーナーが設立される以前の久米島のコーナーを受け持っている時にも、少し書いた事ですが(もしかしたら、あまりにマニアックすぎてこのコーナーが出来たのかも!?)、今回はせっかくこの専門コーナーが出来たのでもう少し話を推し進めて書きたいと思います。テーマはウミシダ共生性の十脚甲殻類・・・・・

要するに、バサラカクレエビやコマチコシオリエビなどのウミシダを宿主(ホスト)とする仲間達のお話です。

沖縄本島周辺では7科22属41種のウミシダ類の中にカクレエビ類14種・テッポウエビ類3種・コシオリエビ類5種・コマチガニ類4種の計4科10属26種の十脚甲殻類を確認されています。ウミシダと甲殻類の関係はお互いのそれぞれの利益を共有しあって共生する共利共生ではなく、甲殻類の方が一方的に利用し搾取する片利共生という見方の方が妥当だと思われてます。

利用・搾取方法としては、ウミシダの色彩に合わせウミシダの擬態化をし、その一部として外敵から身を守り、ウミシダが羽枝で採取したプランクトンを自身の栄養を取る為、中心の口盤に運ぶのですが、その時に腕や羽枝の中心にある食溝を使って流しそうめんみたいに餌を通します。エビ・カニ達は、その途中で食溝を通ってくるプランクトンを横取りし食べます。ウミシダとしては、家賃を払わずに下宿され、冷蔵庫を勝手に荒らされるという具合でしょうか(笑)? 見ているこちら側も複雑な心境にさせられます。もしかしたら、共生生物の排泄物や死骸が食物になりウミシダも幾ばくかの恩恵を受けているのかもしれませんが、はっきりした事は解かっていません。

さて、この中で分類上厄介なのは何と言ってもカクレエビでしょう!?

テッポウエビやコシオリエビ・コマチガニは微妙なものもありますが、だいたいその模様で見分けが可能ですが、カラーバリエーションや模様の変化が激しいカクレエビは一概にこうだとは決め付け難く、例外も多々あり、ここだけの話ですが、極々たまにですが、怪しいものに関しては「これです!絶対!!これにしときましょう!お願い(泣)!!」という感じの時もあるのです(笑)。

海中での分類上の要点になってくるのは、まず第一に「どのウミシダに付いてるか?」なのですが、宿主選択の特異性が強い種、例えばリュウキュウウミシダエビはリュウキュウウミシダにしか付きませんし、トゲナシカクレエビはオオウミシダにしか付きません・・・・などに関しては、まだ確認しやすいのですが、ハナウミシダに付くカクレエビはバサラカクレエビ・ホソウミシダエビ・ウミシダカクレエビ・ウミシダヤドリエビ・チビウミシダエビなどや未記載種と思われるものも入れると7種確認されており、多いハナウミシダには、種類は別として100匹以上の共生エビが付いている事もあるそうです。宿主選択の特異性の強い種に関しても、浮遊生活を送った後、本来の宿主に辿り着くまでの途中のものもあるかもしれません。プロポーションに関しても、図鑑に掲載されている個体が標準のものが多い為、それと断定しがちですが、例外などもままあり、ウミシダヤドリエビなどは、体型が細いものが多いのですが中にはずんぐりした子もいて、「これ、絶対別種!もしかしたら新種か〜!?」などと甘すぎる夢を幾度と見、幾夜となく枕を濡らした事もありました(泣笑)。

写真や海中観察時の簡単な見分け方としては、

バサラカクレエビ眼ペイが真横に真っ直ぐに
ツノメヤドリエビ眼の先に薔薇の棘でも付けたかのように尖り、それはバサラよりも著しい
ウミシダヤドリエビ眼ペイがバサラと比べると斜め上方に少し後方に伸びる感じ
ホソウミシダエビ身体が他のカクレエビよりも細く、額角のあたりや腹節が長い
チビウミシダエビ身体が小さく、他のカクレエビに比べると、眼がちょこんって付いてる感じ
ウミシダカクレエビ身体が細く他のカクレエビに比べてハサミ脚が長い
リュウキュウウミシダエビ 眼の先が尖っていないものが多く・・・・お手上げです(泣)

自分で書いておいてなんですが(泣)、たださえ、こんな訳の解からんオタク系の見分け方を言われ、その他に未記載種と思われるツノメヤドリエビ似のものやその他何種、バサラとの違いが微妙なペリクリメネス・コルナートスなどがあると言ったらどうします? それは、もう嫌になりますよね(笑)。自分で言うのも何なんですが、観察時の見分け方に関しての傾向と対策については、ほんと、お手上げ状態なのです。それはもう、今までの勘や経験値がものを言うのです。

要するに、標本を採取し分類していくのとは違い、写真童貞(あっはっは!)もとい、同定(ごめんなさい、一人で嵌まって大笑いしてました。頭がフリーズ状態です)や海中観察ではこれらの分類は困難な部分があり、現状、例外なプロポーションや棲息状態では、最もそれに近い種やそう思われる種を伝えてる訳です。但し、ウミシダとの共生の話もそうですが、これからもっともっとエビカニオタクが増え(怖えぇ〜)、海に頻繁に潜る我々ダイバーが少しでも、研究者の手助けをし、様々な海中観察例が増えていくと、そういった疑問にも光明が見えてくるのかもしれません。


バサラカクレエビ

P.コルナートスみたいなバサラ

ツノメヤドリエビ似の未記載種

ウミシダヤドリエビ

ウミシダヤドリエビ? 未記載種?

追伸:
図鑑作成の折に、このウミシダ共生性十脚甲殻類に関して様々なご助言を下さった琉球大学の藤田氏に深くお礼を申し上げます。


川本
川本 剛志

1965年4月3日生まれ
福岡県出身

久米島でダイビングサービスを営むかたわら、ライフワークである、冬に訪れるザトウクジラや各種の魚類、サンゴ、ウミウシ、甲殻類の生態を写真に収め続けている。多数の図鑑雑誌に写真を提供し、エビ・カニガイドブック2-沖縄・久米島の海から-等の著作を持つ。

沖縄・久米島

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BY 編集部