期間限定 スペシャルトークThe Diving Junky Magazine

第46回

先月、沖縄美ら海水族館のイルカの生息調査の一環としてある調査のお手伝いを依頼されました。

久米島周辺に点在するパヤオの中の一基に、レコダーを設置しイルカの鳴音を録音して、ある期間中に、実際どれだけのイルカがパヤオに来ているのか?どんな種類のイルカが多いのか?などなどを確認する為で、内蔵のハードディスクには、2週間分まで録音可能という事でした。

パヤオの応急修理や点検は、県が入れているパヤオ(名称ニライ)や久米島漁協が入れているパヤオで何度も依頼されているし、そういった研究には出来る限り協力したいし、今回は鯨類の調査を精力的に行われている水族館職員の友人に依頼されたという事もあり快く受けた次第です。もちろん、日頃潜れないパヤオに潜れる機会を逃したくないという本音もありましたが(笑)!!

ここで、パヤオの説明です。外洋の沖合いに設置された人工漁礁の事で、水深400m〜1000m以上の場所にあります。時に緩く、時に激しく、常に潮流を受ける為に、ロープには海草・貝類などの色々な生物が付着し、それらを目当てに小さいな生物達から大きな生物達まで集まる食物連鎖の拠点を形成しているのです。マグロ類のキハダやメバチやガジキなど、時にはクロマグロもその近辺で釣れたりするダイバーなら一度は潜ってみたいと思う凄い場所なのです。

今回の調査の最終目標は、漁業者が釣ったマグロなどの魚を釣り上げている途中にイルカに食べられてしまう「イルカ被害」を防ぐ為の手段を構築するものが狙いです。

現在、久米島漁協が設置したパヤオが東西南北に10数箇所ありますが、だいたい4マイル〜20マイル以上離れた距離にある為に、漁業者同士、無線で連絡を取り合い情報交換をしています。もし、情報がない状態で、6番パヤオに行ってみてイルカが沢山いて漁にならなければ、漁業者は違うパヤオに移動しなければなりません。燃料代も掛かるし、時間も掛かる、潮流も変わるし、チャンスも逃すかもしれないというロスを無くそうというプロジェクトなのです。

将来的には、イルカの鳴音判断でその存在の有無を確認し、その情報を出航前・もしくは航行中に、モバイル(携帯電話)で確認する事が出来れば余計な無駄が省けると言うものなのです。電波上の交信の理詰めは、ほぼ問題ないらしいのですが、問題はイルカの鳴き声による分類らしく、種別によってもそうなのですが、海域、深度によっても鳴音が変わり、それをはっきり分類するのが難しいそうです。

イルカが多いと言われている他のパヤオより距離の近い4番パヤオに器械を設置する為に出航しました。約40分後に到着しましたが、漁をしている船が多く、如何に久米島漁業共同組合の許可を取っているにしても漁の邪魔になるので待つことにしました。待っている間に6番パヤオにイルカがいるとの無線が入ったので、急遽、6番パヤオに向かう事になりました。

約一時間後の到着時にはイルカが確認出来ないし、マイクで音も拾えないので、、パヤオの周りを魚群探索器で探してみます。・・・・が、影は見えません。確認出来ないので、もし、いるならイルカが釣った魚に喰いついて来るかもしれないという理由で、試しにルアーで魚釣りです。掛かった魚を喰らいつきやすい様にゆっくりとあげていくと・・・・、そこには別のものが!!

「来たぞ〜!・・・・、あれっ?違う、サメだ〜(泣)!!」。なんと数匹のサメがそこに群がって、釣られた小さなメバチに喰らいついているではありませんか!!

不思議なもので、すぐ隣の竿に掛かっているメバチには目もくれずに、始めに喰らいついたメバチにだけサメや他の魚が群がります。弱った獲物の方が、狙い易く効率がいいからでしょうが、その場面はやっぱり凄いです!!

暫く様子を見ましたが、6番パヤオの近辺にはイルカはいないようなので、善後策を相談しているところ、5番パヤオにイルカがいるという無線が入ったので、急ぎ5番パヤオへ!!約一時間後、5番パヤオに到着し辺りを見回すと、シワハイルカが数頭、パヤオの周りを泳いでいます。調査員の目視できたイルカの鳴音を録音したいという理由で設置は当初の4番パヤオから5番パヤオに変更。ボートを固定させる為に、ボートをパヤオに近づけます。固定用のロープを持って、入ろうとした僕に、「待って!大きな影が見える!!」っと、調査員の方の声!!

何せ、めちゃくちゃ外洋のパヤオである。夜の漁業操業時には、でかいサメがウヨウヨ現れる事もある危険な外洋である。日中であろうと何が出て来ても不思議でないパヤオなのですから、その「待って」はまさに天の声、至極当然の事なのでした。船上から様子を見てみると、その影がジンベエザメである事がはっきりと解った僕は、「大丈夫!ジンベエですよ!!行きますよ!!」という言葉を残し、一人海中へ!!ディープブルーに包まれた僕の視界に、パヤオワールドが!

そこに、悠然と泳ぐ彼の姿が僕の視界の中に!!

このあと、いよいよ器械の設置となる訳ですが、このあとのお話は、「ガイド会」のHPの「世界の海ブログ」にてお伝えします。当店「ダイブ・エスティバン」のHPのトップページの下方に3つあるバーナーの内の「ガイド会」というバーナーからお探し下さい。月初めの一日が僕のブログの日なので、このまま、続けて見られますから!!では、宜しく!!

川本 剛志
川本 剛志

1965年4月3日生まれ
福岡県出身
ガイド会所属

久米島でダイビングサービスを営むかたわら、ライフワークである、冬に訪れるザトウクジラや各種の魚類、サンゴ、ウミウシ、甲殻類の生態を写真に収め続けている。多数の図鑑雑誌に写真を提供し、エビ・カニガイドブック2-沖縄・久米島の海から-等の著作を持つ。

沖縄・久米島
DIVE ESTIVANT

〒901-3108
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BY 編集部

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