イクメン観察 その3
さて、育児ノイローゼか、はたまた新参の外敵の侵入にあったためか、観察していた父親たちの失踪により頓挫してしまったイクメン観察。やっぱり、安易にテンジクダイの産卵だのハッチアウトだのに立ち合わせてもらおうと思うのは、甘かったのかしら。しかし、八丈の海は毎年同じではなく、来年の今頃、また同じようにテンジクダイ達の産卵ブームが起きるとは限りません。今年、見逃してしまったのは残念ですが、もしかしたら、もっとすごいブーム到来の可能性もあるわけですから、次回のチャンスに期待しましょう。
そんなことを考えていたのですが、実はテンジクダイを追いかけている間、必然的に目に入ってきてしまったクマノミたち。こちらも、今年の産卵は、ずいぶんとお盛んだったのです。クマノミたちは、昼間っから産卵してくれますし、その半日前、もしくは前日にせっせと産卵床の掃除をしているので、産卵に立ち会うのは比較的簡単です。別に狙いを定めていかなくても、偶然立ち会ってしまうことも。卵を守っている夫婦もたくさんいるので、産みたての赤い卵、少し時間が経った朱色の卵、孵化が近づいている銀色の卵と、いろんなステージの卵を見ることができます。
クマノミの場合、テンジクダイや他のスズメダイたちと違って、卵の世話は夫婦で行います。しかし、育児の主役は、やっぱりオス。ほとんど付きっきりで、せっせと卵のそばでひれを動かし、新しい水を送り続けます。メスもたまに手伝いますが、どちらかと言うと、イソギンチャクの周辺を泳ぎ回って余所者の侵入を防ぐ役割を担っているようです。しかし、卵がギンギンに銀色に光りだしてくると、メスが手伝う割合が増えてきます。クマノミの卵のハッチアウトは日没の時間前後。大潮の日が多いようです。このハッチアウトの日を当てるのが、なかなか難しい。
ある日、ゲストの方とクマノミの群生地に行った時、ある夫婦の卵が孵化寸前になっていることに気が付きました。卵の中で稚魚の目がはっきりと見えている状態で、今にもプリッと出てきそうです。今夜ハッチアウトするかも知れないなあ。でも、こんな状態になっても、まだハッチアウトしない可能性もあるのよねぇ。ぼんやりと、そう思っていました。
そして、運よく、次の日もゲストの方と同じ場所に行くことができたのです。なんと、卵は、まだありました。しかも、夫婦の様子は昨日までと違い、2匹でかなり激しく卵を煽っているのです。もう、卵がちぎれて飛んでいっちゃいそうなくらい。こりゃあ、今夜がおめでただろう!と思いました。
もちろん、大当たり!!
早めに行って、待っている間にエア切れになってしまってはいけないので、日没ギリギリまで我慢してエントリー。それなのに、どうしても気が急いてしまって、早足(?)で泳いでいくと、既に始まっているではありませんか。
最初は時間がかかっているように見えましたが、しばらくすると一気に稚魚が飛び出してきました。
ある程度孵化すると、今度はまた少し時間がかかります。
残っている卵・・・というより、稚魚が岩に張り付いているように見えますね。
偉いなあと思ったのは、なかなか孵化しない残り少ない卵を、夫婦が必死になって煽り続けていたこと。一つ残らず、全員が旅立っていくまでは「早く出てきなさい!!」と叱咤激励し続けているのです。
生まれてきた稚魚に対して、親のクマノミは、どんな思いを抱いているのでしょうか??
親子のご対面♪
夫婦が、せっせと子供たちを海へと送り出している間に、日は沈み海の中は真っ暗。産卵やハッチアウトとは無縁の独身クマノミたちは就寝の時間です。近くで2匹のクマノミがバタバタと泳ぎまわっていても、全く関係なし。「お先に!」と、さっさとイソギンチャクに包まって寝ていました。
さて、ハッピーな気持ちで、またもや早足でエントリー口は戻っていたのですが。なんと、エントリー口付近の砂地に、テンジクダイたちがいっぱい散らばっているじゃあ、ありませんか。私ったら、テンジクダイは夜行性で、昼間とは居場所が違うってことを、うっかり忘れていたのです。もしかして、私が定点観察していたのって、無駄だったのでしょうか?
せっかくハッチアウトしそうな日がわかるようになっても、夜になったらどこかへ移動してしまっているって・・・。
この傾向と対策は、来年の課題ですね。
水谷 知世
昭和40年代生まれ
兵庫県出身
一見、負けず嫌いで男勝りというイメージだが、実は繊細な女性らしい一面を持つ、頭の回転はレグルス一番!!の頼もしい存在である。(レグルス親方・談)
伊豆諸島・八丈島
レグルスダイビング
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