復興のステップ
豪海倶楽部11月号がアップされる本日11月1日はビッグブルー・カオラック店のオープンの日なのだ。というわけで、タオ島からカオラックへ引っ越してきて半年間休ませていたショップや家の大掃除からはじまり、ボートの準備、器材のメンテナンスなどなどシーズンスタートのための陸の仕事をしまくっていた。南国で半年間放ったらかしにしておくと、開けてビックリ!家の中やショップの中に蛇はいるわコウモリが住み着いているわ、あげくに大トカゲが乱入して来たり・・・。シーズン頭は珍獣との戦いから始めなければいけないのだ。
そんなこんなでかれこれ10日以上ダイビングをしていなくて年間でこんなに窒素を抜くのはこの時期くらいなのだが、実はこの間、海ではないけれど川ではスノーケリングをしていた。
3.11に押し寄せた津波が川を何キロも遡った結果、三陸の川は瓦礫だらけで油が滲む見るも無惨な姿に変わり果てていたのだが、毎年秋になると4年前に生まれて海へ泳ぎ出たシロザケが産卵のために戻って来る。しかし津波直後はとても鮭が遡れる状態ではなかった。そこで、ダイビング仲間で岩手で『みちのくダイビング・リアス』を主催するくまちゃんは『三陸ボランティアダイバーズ』を立ち上げ、ダイバーとしてできることとして漁港や河川の清掃をやり始め、仲間とともに毎日毎日気の遠くなるような作業をやり続けて来たのだった。そして見事に鮭の遡上に間に合う様に川が綺麗になりシロザケが遡上して来たのだ!
くまちゃんとは友達でもあり、タイ・カオラックで2004年のインド洋大津波の際に被災〜復興の過程を見て来た僕は彼らの活動を応援していて、僕自身も被災から1ヶ月後のタイミングで東京でチャリティーイベントを開催したり、3ヶ月後のタイミングで岩手で海の清掃ボランティアをしてきたのだが、今回は7ヶ月経ったタイミングで今期初の鮭の遡上を見るツアー『サーモンスイム』の受け入れの準備が整ったということで、ビッグブルーのゲストに声をかけて岩手に駆けつけたのだ。
人々の努力で鮭が遡上できるまでに蘇った河川、被災を乗り越える力強い鮭の生命力、そして復興への道のりはまだまだ先は長いが一歩ずつ着実に前に進んでいる被災地の姿を見届けてきた。
もちろんただのお遊びだけが目的という訳ではなくサーモンスイムの後には河川の清掃活動もしてきたのだが、僕自身としては、被災地がツアーを受け入れたという事実こそがもの凄く重要な事だと考えている。もし、読者の中に被災地に観光目的で行くなんて不謹慎だなんて考える人がいたらその考えは間違っていると言わせて欲しい。復興に向けて頑張る被災地の人々にとって、被災後初めてゲストがツアーに来てくれることがどれだけ嬉しいことであり復興のステップとして意味のある事か、僕自身が身に染みて経験してきた。
被災直後に某都知事が花見を自粛せよとか寝ぼけた事を言っていたが、本当の復興支援とは何か?被災者が被災地で生きて行くために必要な事をよく考えて欲しい。それぞれの産業で違いはあるかもしれないが、レジャー産業、観光業に携わる者としては、人々が現地に行って被災の現状から目を逸らさず復興の過程を自分の目で見ることは意味のある事だと思うし、そもそも津波が到達していない場所が街としていかに普通に機能しているのかも知るべきだし、三陸の素晴らしい大自然や美味しい海や山の幸を堪能したり、現地の人々とコミュニケーションを取って今なりの三陸をめいっぱい経験して現地にお金を落として行く事が本当の意味での復興支援になると考えている。
と、ちょっと熱くなってしまったのだけれど、津波被災を乗り越え復興してきたカオラックのシーズンが始まるということで、来月からはアンダマン海の話をお楽しみに!
大村 健
(おおむら・たけし)
1973年、京都生まれ
ガイド会所属
18歳で大学のクラブでダイビングを始め、その後、バックパックを背負って海を潜り歩く旅を経て、20歳の頃に秘境・タオ島に出会う。以後、徐々に発展してきた島とともにダイビングにのめり込んで今に至る。
現在、タイの2つの海を舞台に、海のポテンシャルをフルに引き出すべく精力的に潜り倒す日々を送っている。
東南アジア・タイ エリア情報
タイ・タオ島/カオラック
Big Blue Diving
www.bigbluediving.jp
take40mura.blog17.fc2.com
タオ島店
14/126 Moo 1, Koh Tao , Koh Phangan
Suratthani 84360, Thailand
Phone : 66-77-456 179
カオラック店
57/7 Moo 7, Khuk Khak Takua Pa,
Phang-Nga 82190, Thailand
Phone : 66-76-486 773
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- 2020.10:前を向いて進もう
- 2020.8:タイ、タオ島の今
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- 2019.6:圧倒的な魚影の濃さ
- 2019.3:いろんなバリエーション
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- 2018.8:新しいオモチャ
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- 2017.10:引きの美学 その2
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