今シーズンのアンダマン海
この記事がアップされるのはちょうどゴールデンウィークまっただ中。僕はたくさんのゲストで賑わうタオ島でガイドとして毎日朝から晩まで潜り倒しているところだろう。
タイは太平洋とインド洋の境目を作っているので、東西にシャム湾とアンダマン海という2つの異なる海を持ちそれぞれが正反対のシーズンを持つという話をしてきたが、ちょうどゴールデンウィークがシーズンの入れ替わり時期で、アンダマン海を望むカオラックからシャム湾に浮かぶタオ島へ引っ越すのだ。
この原稿は前もって書いているので、今回のネタは少し前まで潜っていたカオラックのお話。
今シーズンのアンダマン海は、シーズン初頭は波風がありしんどい日々が続いていたが、中盤からは毎日快晴べた凪で大物運が炸裂したシーズンだった。
過去の大物当たり年の例では、栄養豊富な濁った冷たい水塊が表層まで上がって来ていて、確かに大物は出ているのだが、濁っていて良く見えないとか、とにかく水が冷たくて寒いというパターンが多かった。しかし、今シーズンはほとんど毎日どこかでジンベエやマンタが出現したのだが、水温は温かく安定し、透明度も20m〜30mほど抜けていて、波風も無く水面も穏やかで、本当に恵まれた海況のなか大物を堪能できたシーズンだった。
シーズン中はガイド業に忙しく、なかなか自分でカメラを持って潜る機会が作れないのだが、隙を見つけて何度か調査ダイブや撮影ダイブに行って来たなかで僕が撮った今シーズンのアンダマン海の印象深い写真をご紹介しよう。
自分として今シーズンの一番の発見はこちら。通常は潜らないマニアックな場所で初めて見つけた美しいハゼ。アドニスシュリンプゴビーの雄、ヒレ全開!
1度目の調査では数十センチという極悪の透明度の中で肉眼では確認できないまま無理矢理撮った写真の中に気になる魚が写っていた。そこで、2度目はコンディションを選び、その魚に狙いを定めて潜った結果、見事にヒレ全開の写真が撮れてとっても嬉しくて印象に残ったダイブだった。
そして、今シーズンと言えば大物。
今シーズンはジンベエやマンタも何度か撮る機会を持てた。タイで15年ガイドインストラクターをやっているので今までにジンベエやマンタはいくらでも撮って来たわけなのだが、今までに撮ったことのある同じような写真を今さら撮っても面白くない・・・
同じジンベエやマンタでも、他の海とは違う、タイの海らしい表現がしたい・・・
などなど、もっとこういう風に撮りたいな〜という欲求はどんどん贅沢になっていくのだ。
僕はタイの海を“豊饒の海”と表現し紹介している。
沖縄のK島の先輩ガイドのK本さんは“節操の無い海”とばっさり切って捨てるのだが・・・(^_^;;
その文言どおり栄養豊富な海中は生物でみちあふれてとても賑やかなのである。そんな中に大物ジンベエやマンタが登場するのだから、単に青い海にジンベエやマンタががド・アップで写っているだけの写真では“タイらしさ”は表現できない。なんてことを考えながら、大物が出る度に、周りをキョロキョロ、環境を把握し、ジンベエやマンタの泳ぐ方向を見極め、その先にある何かを絡めた写真が撮れる場所へダッシュ・・・。そんな事を繰り返しながら撮ったのがこちら、ソフトコーラル&魚影越しのジンベエザメ!
そして、ソフトコーラル越しのマンタ!
これぞ豊饒の海・タイならではの水中写真!、だと僕は思っている。
・・・が、自分としては決して納得いっている写真ではない。目の前に広がる光景はもっと美しく迫力があるのだが、それをこの写真では表現し切れていない。
という訳で、今までも、今も、これからも、同じタイの海で潜り続けていても、まだまだ飽き足らずにもっともっと!とタイの海で潜り続けて行くのだ。
さあ、これから半年はタオ島で潜り倒すど〜!!!
大村 健
(おおむら・たけし)
1973年、京都生まれ
ガイド会所属
18歳で大学のクラブでダイビングを始め、その後、バックパックを背負って海を潜り歩く旅を経て、20歳の頃に秘境・タオ島に出会う。以後、徐々に発展してきた島とともにダイビングにのめり込んで今に至る。
現在、タイの2つの海を舞台に、海のポテンシャルをフルに引き出すべく精力的に潜り倒す日々を送っている。
東南アジア・タイ エリア情報
タイ・タオ島/カオラック
Big Blue Diving
www.bigbluediving.jp
take40mura.blog17.fc2.com
タオ島店
14/126 Moo 1, Koh Tao , Koh Phangan
Suratthani 84360, Thailand
Phone : 66-77-456 179
カオラック店
57/7 Moo 7, Khuk Khak Takua Pa,
Phang-Nga 82190, Thailand
Phone : 66-76-486 773
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- 2020.11:コロナ禍の潜り方
- 2020.10:前を向いて進もう
- 2020.8:タイ、タオ島の今
- 2019.10:花魁の舞
- 2019.9:自然光
- 2019.6:圧倒的な魚影の濃さ
- 2019.3:いろんなバリエーション
- 2019.2:いろんな楽しみ方
- 2018.11:賑やかな水中と静かなビーチと
- 2018.8:新しいオモチャ
- 2018.6:スペシャルな1年
- 2018.4:シーズンの変わり目
- 2017.11:華やかな海中世界
- 2017.10:引きの美学 その2
- 2017.6:引きの美学
- 2017.4:自然光
- 2017.3:絶好調の海
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- 2016.11:閲覧注意!?『う◯こ』のお話
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- 2016.9:ええ感じになってきました
- 2016.8:セイルロックの夏
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