ガイドのつぶやき - 伊豆諸島・八丈島からThe Diving Junky Magazine

ひまわり、たんぽぽ、すずめだい

2007年のことですから、かれこれ10年近くも前です。西表の矢野さんのところで潜らせてもらいました。

当時、スズメダイについていろいろと疑問を持っていた親方の加藤から頼まれて、矢野さんにコガネスズメダイについて質問しました。

細かいことはもう覚えていないのですが、その時矢野さんが

「あの本見た時、びっくりしたんだよな。こんなの見たことないって。」

とおっしゃったのです。

あの本、というのは、山と渓谷社の「日本の海水魚」。その439ページに載っているコガネスズメダイ。その右下隅っこに載っている幼魚の写真を見て驚かれたそうです。

よく見ると撮影地はどれも伊豆半島と伊豆大島。

「西表にもコガネスズメダイはいるって思ってたんだけど、この写真のサカナと違うんだよな。幼魚は、こんなんじゃないんだよ。」

一見、黄色い体色のインパクトが強すぎて、どれもこれもコガネスズメダイと呼ばれていたスズメダイ。

よく見ると、実はその中に複数の種類が混在していて、伊豆で見られるタイプと西表で見られるタイプ、どちらかがコガネスズメダイではなかったのです。

結局、数年前に、西表で見られるスズメダイに、ヒマワリスズメダイという名が付きました。

両方を見比べてみないことには、なかなか見分けられるようにならないかも知れません。実は八丈島、コガネもヒマワリも、どちらも幼魚から成魚まで全てのステージを見ることができます。色は同じ黄色ですが、コガネはふっくらした体形、ヒマワリはスリムです。

コガネスズメダイの幼魚は丸っこくって豆粒のよう。ある程度までは成長して大きくなっても可愛く感じられます。

コガネスズメダイ幼魚
コガネスズメダイ若魚

ヒマワリスズメダイは細長く、幼魚は可愛いのに、成長すると目の周りが黒ずんで顔色が悪い印象になります。

ヒマワリスズメダイ幼魚
ヒマワリスズメダイ幼魚
ヒマワリスズメダイ若魚

これでコガネは分類上混じりっけなしのスズメダイになったのですが、ヒマワリの中にはまだ複数が混在しているのではなかろうか?という話が残っていました。

八丈島では、ヒマワリスズメダイと言えば、1種類しか見られません。

ではどうしてそんな疑問が出たのか? と言うと、海外で見かけたスズメダイの中に、どうしても名前がわからないものがいたからなのです。

幼魚はヒレだけが黄色いのでアルファスズメダイのような気もするけど、大きいものは体色も黄色っぽくコガネスズメダイに似ているという、なんだか厄介な存在でした。

コガネとヒマワリがちゃんと分けられていなかった頃には、訳がわからないという感じ。私が初めて写真を撮ったのは2005年のフィリピンで。矢野さんと出会う、さらに前の話でした。まだカメラが銀塩です。

タンポポスズメダイ幼魚
タンポポスズメダイ若魚

2011年に出した「スズメダイ」の本には「ヒマワリスズメダイ タイプ2」として掲載されています。

先日、このスズメダイに、やっと名前がつきました。なんと、タンポポ。黄色い花シリーズです。

名前を付けたのは、鹿児島でスズメダイの分類を進めていらっしゃる岩坪さん。

さらに驚いたことに、このニュースが9月17日付の読売新聞の鹿児島版に掲載されたのです。ヒマワリとタンポポの生態写真も掲載され、撮影者として加藤の名前も載っていました。

9月17日付の読売新聞 鹿児島版

あともう1つ、八丈島には名前の付いていないスズメダイが残っています。

もう少ししたら和名が付くはず。デビューが待ち遠しいな。

" ひまわり、たんぽぽ、すずめだい " へのコメント

  1. 蛭田 博行: 2016年10月25日 8:13 AM

    ヤッコも綺麗だけどスズメダイも可愛く綺麗ですネ。                
    ひまわり・・夕立・・蝉の声~

    『夏休み』(吉田拓郎)…でした。 

  2. み: 2016年10月28日 1:36 PM

    YouTubeで聞いてみました。今の私には冬休みしかありません。。。

水谷
水谷 知世

昭和40年代生まれ
兵庫県出身

一見、負けず嫌いで男勝りというイメージだが、実は繊細な女性らしい一面を持つ、頭の回転はレグルス一番!!の頼もしい存在である。(レグルス親方・談)

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