ベラスコリーフ
ベラスコリーフに行ってきた。
パラオの最北端でカヤンゲル州領海内、英語だとVelasco reefと書く。
南北におよそ37km、東西に17kmほどあるリーフで南端にちょっとした環礁、ガルアンゲルがある。リーフの大きさはパラオ本島のバベルダオブよりも大きく、もし陸地だったら、パラオにしては大きな“いい島”になるのにと思う。
載っている海図も少なく、Google Earthで見ても1/3くらいしか出てこない。当然インターネットを調べてもほとんど何も出てこない。更に、ここの海中を知っているガイドもほとんどいないため、事前情報収集は意外にも、もっとずっと遠いパラオ南端ヘレンより苦労した。
ベラスコリーフの北端はコロールから直線距離でおよそ130㎞。ダイバー用の日帰りダイブトリップでは微妙に遠い距離のため、基本的にはない。
しかしクルーズ船ならアプローチできる。龍馬を駆って5月23日から26日まで行ってきた。
初日にノーザンリーフと呼ばれるカヤンゲル南にあるリーフを潜り、ここから徐々に北上しベラスコを潜っていく、カヤンゲルまでは海の色がパラオ独特のどっしりとした青だが、ベラスコは北赤道海流の影響を受けているので、水の色は水色。
水中景観はパラオというよりもマリアナの海に近いイメージが強い。サイパンやグアム、ロタといった島々のような水の色。とても新鮮だ。
印象としてはどのポイントも、まずツムブリが多い。
どこに入ってもツムブリの熱烈歓迎を受ける。2009年からパラオはサメを始めとする魚類の保護に乗り出していて、近年その結果が海の中に現れてきているように思う。魚が増えている気がする。
全体的にしかまだ分からず、潜っているポイントも限られているのだが、一か所ピックアップするなら特に面白いポイントはベラスコチャネルという、ベラスコの西側に長さ5㎞以上ある太古の川の跡。ここの出口というか終わりの部分が非常に面白い。
全体的にフラットな地形のベラスコにおいて、ここは大きな水路跡が水中にあるため、おそらく魚たちの隠れ家となっているのだろう。グルクン類から始まり、ヤッコもチョウチョウウオも他のベラスコよりも多い。
カヤンゲル以北では珍しい光物の群れも、ここではオオメカマスやブラックフィンバラクーダが大きな群れを作っていて目の前を通っていく。
そしてそんな彼らの捕食者となるイソマグロやシルバーチップシャーク、グレーリーフがウヨウヨ泳ぐ。人を見たことがないから魚が逃げるどころか寄って来る。まあ天国なポイントなわけです。
どうしてこんなところに潜りに行くのか?というと、単純に「人の知らないところを潜ってみたいから」シンプルにそれだけ。
ベラスコには島がない。だから風よけになる場所がない。北赤道海流が当たるから波が立つ。
なのでとにかく行くのが難しい場所で、龍馬なら行けるが非常に海況に左右される。僕も今回で北端まで来たのは2回目。
そう、ここもまた滅多に来れない場所。そんな場所にあるダイブサイトを一つずつ紐解くように潜っていくのは面白い。まさに冒険。
現代の世の中は何でもインターネットで調べられるし見られる時代。でもここは誰も知らないし分からない。ここに潜る僕らだけの海がここにある。
秋野 大
1970年10月22日生まれ
伊豆大島出身
ガイド会所属
パラオ在住25年。パラオ現役ガイドで最古参。「データ」が大好物で、なんでもかんでもすぐに分析したがる「分析フェチ」。
だいたいの魚は好きなのだが、やっぱりブダイのことだけは苦手。とりわけ3cm以下の魚には激しい興奮を示し、外洋一発系の魚に果てしないロマンを感じるらしい。
洋酒より焼酎。肉より魚。果物と酸っぱいものは見て見ぬふりをする。最近甘党。人生ビール党。
ミクロネシア・パラオ
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