南国通信 - パラオの海からThe Diving Junky Magazine

ヘレンリーフ 2018

ヘレンリーフ

今年もまた6月23日から1週間、パラオから南に550km南下するヘレンリーフへ行ってきた。

ヘレンは南北35km、幅15kmにもにもなる広大な環礁で、HELEN REEF(ヘレンリーフ)もしくはヘレン環礁が正式な名称となる。

以前、豪海にも書いたと思うが、この場所には滑走路が無く飛行機は降りられず、ヘリコプターでは遠すぎで航続距離が足らず、唯一の訪れる方法が船という場所である。僕もパラオでガイドを始めた頃から行ってみたい場所だったし、龍馬を就航した最大の理由でもあった。

なのでここは僕にとっても龍馬にとっても特別な場所なのである。年間で訪れるダイバーは30人もいない。たまにヨットが立ち寄る程度。とにかく人が来ない=「滅多に行けない場所」なのである。

毎年少しずつ、ルートだったり、スケジュールだったり、「なにか」手を加えながら変えていて、今年は南西諸島の“5島+1環礁”全ての場所に潜ることと、新たに手に入れた「海流図」を参考にそれぞれの場所を潜ることにしていた。

特にクルーズの名前にもなっているヘレン環礁は、龍馬を就航してからずっと環礁内を潜ることに重点を置いていたので、今年はその外側を潜ってみようと思っていた。そこで役に立ったのがこの海流図。6月のヘレンリーフ近辺は南赤道海流が当たっているようで南東からの流れとなる。当然ながら潮当たりのいい東側を潜ろうということになった。

ウメイロモドキ

今回潜った環礁外側の北東の張り出しを潜るのは実は2回目。ヘレンクルーズを開始して最初の年に潜ったというログがあるのだが、当時の僕がサボっていて何もデータを書いてない。何年も前のことなので覚えても無い。じゃあまあ潜ってみましょうと入ってみた。

エントリーしたら0.5ノット程度の流れがリーフに沿うように南から北に向かって流れていて透明度は50m。リーフの白と、真っ青な海の色とのコントラストが気持ちいい。

まずはカンムリブダイの群れがお出迎え、人を見たことがないから僕らが横を泳いでいてもフツーにしてる。続いてグレイリーフシャークとマダラトビエイがドロップオフ下に見える。さらに下には1.7mもあろうかという大型のハタ「タマカイ」が付かず離れず僕らのことを観察している。追うと逃げるが追わなきゃ逃げない。豪華じゃないですか。どうして今までここに潜っていなかったのかちょっと思う。

ここまでが序章。そこからが凄かった。

ツムブリ

ギンガメアジ1000尾ほどの群れがワーっと寄って来て僕らの周りを回り始めたら、続いてツムブリの2000尾以上もいるかと思うすごい群れが僕らを取り囲んでグルグル回りはじめた。ダイバーの泡に絡みつくように下から水面に向けて一気に泳ぎ上がり、さらに降りて来る。そして周りグルグル。これを繰り返しながら5分以上も回っていた。

目の前を通る1尾1尾と目が合う。僕らを興味深そうに見ている。ダイビングして僕らが水中を見に行っているはずなのに、逆に見られている。変な感じ。ギンガメとツムブリの同時攻勢にちょっとひるむがとにかくものすごい群れに囲まれてダイバー皆のテンションも一気に上がった。

楽しい時間は常にあっという間で、40分という時間はすぐに過ぎてしまった。エキジットした水面で皆が感動していたのは言うまでもない。

もちろん常にこういったシーンに出会えるわけではないのだろうが、またチャレンジしてみたいと思う。特に来年はもっともっと環礁の外側を潜ってみたい。クルーズが終わったばかりなのにもう来年のことを考えている自分が可笑しい。これからもずっと、何か新しいことに挑戦し続けたいし試していたい。ワクワクすることドキドキすること、それを冒険と言っていいのなら、これからも僕は冒険を続けたい。

カメラを構えるダイバー

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秋野
秋野 大

1970年10月22日生まれ
伊豆大島出身
ガイド会所属

パラオ在住25年。パラオ現役ガイドで最古参。「データ」が大好物で、なんでもかんでもすぐに分析したがる「分析フェチ」。

だいたいの魚は好きなのだが、やっぱりブダイのことだけは苦手。とりわけ3cm以下の魚には激しい興奮を示し、外洋一発系の魚に果てしないロマンを感じるらしい。

洋酒より焼酎。肉より魚。果物と酸っぱいものは見て見ぬふりをする。最近甘党。人生ビール党。

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