よき八丈島再び
ふとガイド中に思った。
潜行して見る魚を指してボードに名前を書いてゲストに伝える。
エキジットまでにすべての魚の名前を伝えたらガイド料が倍額。一種類でも名前が書けなかったらガイド料は無料という賭けをやったら面白いかな。
さて今年の八丈島、黒潮が長々と島を覆い、ぬくぬく水温と透明度で十数年前のよき八丈島を彷彿させるほど様々な南の魚たちが出現している。
思えばその十数年前、毎日新たな種の発見があり、ワクワクしながら撮影したものです。
カメラはもちろんフィルム時代。一回のダイビングで撮影できる枚数は36枚です。
ピグミーシーホースを見つけたのもこの時代。36枚撮りきりで、20回ぐらい撮りに行ったかな。クレナイイトヒキベラのオスの背びれ全開写真を何度も撮り直したことか。思えばいろいろな撮影シーンが浮かぶその中で、一番の出ものは何といってもベニゴンベである。
ベニゴンベの日本での生息は小笠原のみで、サイパンやグアムが本場。そんな種類のゴンべが八丈島でたったの一匹ですが見つかったのです。
見つかった場所は乙千代ガ浜のドロップオフ縁の小さなサンゴ。激流に耐えてそのサンゴの下をクルクルと回るベニゴンベを必死に撮ったことを思い出します。
その記録により、図鑑で分布にちゃんと八丈島が載っているのです。しかしその後の記録はなく、せっかく入れてもらった分布も役には立たず、幻の分布となった次第です。
それから十数年、今年の八丈島の底力は凄かった。毎日馬車馬のように海に潜って疲れ果てた体だったのに、ベニゴンベのチビを見つけた瞬間、疲れは一気に吹き飛び、いつ写真が撮れるのかスケジュールの合間を探したほどでした。
まぁでも空いた日なんてあるわけなく。その後別の場所でももう一匹のベニゴンベの幼魚が見つかり、今八丈島には二匹もベニゴンベが見られる快挙となったのです。
そしてやった空いた時間ができて、というか無理やり作って一眼もって行ったのにろくな写真も撮れず、コンデジで撮ったベニゴンベの方が数倍よく撮れたので、見ていただくのは当然コンデジ写真となるわけです。一眼写真はお蔵入り・・・、お見せできません。
皆さんもいなくなる前に見に来てくださいね。
加藤 昌一
横浜出身、獅子座
昭和30年代生まれ、気分は昭和50年代
1992年にレグルスダイビングを設立する。フィッシュウオッチングの草分け的存在。
飽くことなく潜り続け、水中生物は分け隔てなく撮り集めているため、膨大なフォト・ストックを有する。
ガイド業も第一線で活躍しているが、写真家としても注目され、「エビ・カニガイドブック」「ウミウシ 生きている海の妖精」「スズメダイ」「海水魚」を出版する他、さまざまな水中写真を図鑑や雑誌に多数提供している。
水中生物だけではなく、陸の生き物も大好き。特に爬虫類が大好き。
伊豆諸島・八丈島
レグルスダイビング
〒100-1511
東京都八丈町三根1364-1
Tel/Fax:04996-2-3539
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