マリンレイクのイソバナ
僕らが運行するクルーズ船「龍馬I」には日本人の他に、パラオ人、フィリピン人のクルーが乗務しています。
彼らは皆な真面目でよく仕事をしてくれます。プロとしての意識が高いのでしょう。
同じように彼らから高い意識を感じるのが「食べるという事」に関して。彼らとかわす挨拶からそれを感じることができます。
普通、日本人は「こんにちは」などの挨拶言葉を交わすのが一般的ですが、彼らの場合「秋野さん、ランチ食べた?」から始まり、「朝食あるよ」「スナックあるよ」「おやつどう?」「ディナーディナー(夕食を食べて行け、という意)」まで、とにかく朝から晩まで「食べ物の心配」ごとに挨拶の軸が置かれるのです。
どうしてそんなに僕の食のことを心配してくれるのかといろいろ考えたところ、これは文化・習慣の違いなのだという結論に達しました。
食事が出来る人ができない人に施す。宗教的な教えも影響しているのでしょう。それで挨拶の内容も、挨拶=相手の事を思う=お腹を空かせていないか気遣う=食事を振舞う、という意味の繋がりになるのだと僕は考えています。
いま僕は龍馬に乗務しています。この原稿を書くちょっと前、僕は船内でランチを食べていました。
ちょうど半分くらいまで食べたところで、別のクルーが2人僕より遅れてきてきました。僕と同じお皿を各自用意して、同じメニューをサーブして、僕の横に座り、僕の半分減った料理も見ながら、僕に向かって一言「秋野さん、ランチ食べた?」
僕は笑顔で「ありがとう、食べてるよ」と返すのです。(笑)
と、そんなことを書きたかった訳ではありません。
パラオには「マリンレイク」という有名な場所があります。直訳すると「海水湖」になります。キノコのようにポコポコと小さな島がいくつも重なり合うロックアイランドと呼ばれるエリアには島の数が450以上あり、その中は湖があるものもあります。
無毒クラゲがウジャウジャいるジェリーフィッシュレイクも代表的なマリンレイクの一つです。
ですが、ダイビングポイントのマリンレイクは実は細い水路で海と繋がっており、厳密に言うと完全なる湖ではありません。
誰がこのポイントをマリンレイクと名付けたのか分かりませんが、海水湖と訳すから違和感があるだけで、「海と繋がっている湖のような場所」と解釈すれば、まさにその通りなのです。
そんなマリンレイクの水路にはイソバナが大輪を咲かせています。
以前はアジア系観光客によるスノーケリングツアー中のサンゴやソフトコーラルの上での「立ち上がり」によって、この辺りのイソバナは全滅に近い状態になりました。
しかし、なんとこのコロナでそういった観光客インパクトが無くなったため、綺麗に復活してきました。また再び人が訪れるようになると痛むかもしれませんが、そういう意味では、まさに今の旬と言えるでしょう。
天気の良い日に少しカメラを煽って構えると、水面にはジャングルや、水底の白砂も写り込みとても綺麗です。
浅い環境だから、幾らでも粘って自分の好きな構図を作ることができます。
また、ここを訪れるなら朝一に行くことをオススメします。大体ここは皆さん他のサイトを回った後、最後に寄る場所として認識されているようで、朝は滅多に人に会いません。僕個人的には、ここは朝の光が一番おいしい時間帯(撮れる)の場所だと思っています。
皆さんもマリンレイクに行くときには是非時間にこだわってみてくださいね。では。
秋野 大
1970年10月22日生まれ
伊豆大島出身
ガイド会所属
パラオ在住25年。パラオ現役ガイドで最古参。「データ」が大好物で、なんでもかんでもすぐに分析したがる「分析フェチ」。
だいたいの魚は好きなのだが、やっぱりブダイのことだけは苦手。とりわけ3cm以下の魚には激しい興奮を示し、外洋一発系の魚に果てしないロマンを感じるらしい。
洋酒より焼酎。肉より魚。果物と酸っぱいものは見て見ぬふりをする。最近甘党。人生ビール党。
ミクロネシア・パラオ
DayDream PALAU
P.O.Box 10046 Koror Palau 96940
Tel:680-488-3551
Fax:680-488-2199
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