南国通信 楽園からのらくがき 豪海倶楽部  

独立記念日とイレズミフエダイ

10月1日、パラオ人スタッフは皆お休みしたい日だ。そう、パラオの秋の大イベント、独立記念日なのだ。陸番というお店に残る勤務になってしまったスタッフは大体お昼を過ぎる頃にはどこかに居なくってしまう。パラオのシンボル的なKBブリッジという大きな橋の下では、ボートレースが行われ、出店がでたりして大賑わいになる。あちこちでイベントもあり、そりゃもう大変な騒ぎだ。

ウチのボートキャプテンのゴードンは、そのボートレースで最も高いクラスのトネルボートというカテゴリーに毎年出ている。車で言ったらF-1みたいなものか。このトネルボートを操縦(操船ではないそうだ)できるのはパラオで4〜5人しかいないらしい。よく分らないけど きっと凄いことなのだろう。そういう彼と一緒に仕事をしているってことは、日本で例えたら、F-1パイロット(ドライバーではないそうだ)の佐藤琢磨氏と一緒に仕事しているようなものだというのか。ふーん。そんなゴードンは3日前から練習の為にお仕事は休暇をとっていた。

しかし、そのレースの日程は1日繰り上げられて今日、9月30日に行われた。理由を簡単に説明すると、「今日でないとレースのスポンサーが付かない」ということらしい。おいおい、そんな理由かよ。である。独立記念日一番のビックイベントであるこのボートレースが1日繰り上げになるなら…と、他のイベントも次々前倒しになってしまった。だから本当の独立記念日である明日は大きなイベントは何も無いらしい。うーん。国を上げてのお祝いがこれでいいのだろうか? って、思ってしまう僕が日本人的感覚なのだろう。こういう時にパラオに住んでいる日本人たちは、納得とか、理解とか、あきらめを混ぜた顔でこう言う。「まぁ、パラオだからね。」正しいパラオの表現の仕方の一つである。

独立記念日でさえもパラオはパラオらしい。そんな平和なパラオの海は今、春秋の風物詩であるイレズミフエダイの群れが見られる。普段はなかなか見る機会が無いこの魚。ごく稀に単独で見ることもあるが、この春秋の時期以外に複数でいるところを見たことは無い。本来群れを作らないのだろう。漁師が釣り上げてくる水深を聞いても普段はかなり深いところに生息しているようだ。単独で深場にいる魚が、決まった時期に浅いところへ群れを作りに来る理由は産卵のためと考えるのが妥当だろう。その群れが水深20mほどのリーフエッジからドロップオフを移動する。きっと移動はしなくてもいいのだろうが、群れの後ろから大量のサメがくっついて来るので それを牽制しているようだ。サメとは目的が違うが、これだけ綺麗で目立つ魚が集まっているなら僕らだって近寄ってみたい。

そんなイレズミフエダイが作る群れは1000や2000の小群れじゃない。5000? いや下手をしたら10000も居るのではないだろうか。冗談抜きで数え切れないから雰囲気で説明すると、「上下の幅が15mくらい、向こうが見難いくらいの密度の群れが、川のように目の前を2分くらい流れ続ける」って書いたら想像できるだろうか。

うん。いい感じに表現ができたな。なんだか乗ってきたぞ。乗って気調子に計算してみようか。イレズミフエダイ1尾で大きくてもせいぜい60cm、体高は30cmだ。15mの高さになるのに単純に50尾が上下に並べばいい。秒速50cm程の速さで群れが移動するとして、目の前には1秒で約1列のイレズミフエダイが通過することになる。2分120秒で120列だから50匹×120列で6000尾。実際はそんな規則正しく壁で動いているわけではないので、進行方向を軸にして90度回転させた壁がもう一枚分くらい居るとして計算すると約12000尾となる。なるほど。

まるで算数・・・そんなこと考えながら、一人の部屋で魚の図鑑を確認しつつ電卓パチパチたたいてニヤニヤしている僕はおかしな人ですか? まっ、いいでしょう。本人がやっていて楽しいことが大切です。(←ここ重要)

そんな僕ですが、ガイドくらいできます。
この群れ見たくないですか? みたいでしょ?

この、今いる群れは10月3日まで。次は10月26日〜11月1日までですが 今回ほど大きな群れにはならないでしょう。その次のチャンスは来年、2006年3月21日〜28日、4月24日〜27日、5月22日〜26日。一番群れが大きくなる可能性があるのは3月。それも21日〜25くらいまでが最も大きな群れになるでしょう。5月も見られますが3月ほど大きな群れではないでしょう。どうです? 気象予報士ならぬ イレズミ予報士は。結果は来年3月。絶対に感動すること間違いなしですよ。


秋野
秋野 大

1970年10月22日生まれ
伊豆大島出身

カメラ好きで写真を撮るのはもっと好き。でもその写真を整理するのは大キライ。「データ」が大好物でいろんなコトをすぐに分析したがる「分析フェチ」。ブダイ以外の魚はだいたいイケルが、とりわけ3cm以下の魚には激しい興奮を示し、外洋性一発系の魚に果てしないロマンを感じるらしい。日本酒より焼酎。肉より魚。果物は嫌い。苦手なのは甘い物。

ミクロネシア・パラオ

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