期間限定 スペシャルトーク 豪海倶楽部  

エビカニガイドブックインサイドストーリー 第20回

こんにちは、久米島の川本です。さて、今回は前々回に続くガレ場探索の攻略法パートIIです。前回までは、一口にガレ場と言っても、様々な環境のガレ場があり、探索する前にまず、そのガレ場の体質・レスポンスなどを見分ける事の重要性を書きましたが、今回はその次の段階です。良いガレ場を探し、生物を探し始めた時、まず、気に掛ける事は、今から探索しようとしている場所の細かな情報です。今回は、そのアドバイザーとして、ガレ場スペシャリティーなどという冗談みたいなコースも常時開催している久米島のダイビングサービス・エスティバンで現在、ガレ場スペシャリティNo.1の座を欲しいがままに独走しているタツヤ君に皆さんに理解しやすいようにアドバイス願います。

川本 :こんにちは、タツヤさん!・・・(こういう時だけ「さん」付け)

タツヤ:こんにちは。・・・・(「さん」付けなど滅多に無いから、やや緊張気味)

川本 :え〜、今回は、球美の海をフィールドとし、ガイドをしながら、日々の空いた時間をガレ場のリサーチに費やし、毎日精力的に仕事をされてる高橋達也さんに、アドバイザーとしてお越し頂きました。・・・(「久米島の海」というところが写真集宣伝の下心で「球美の海」と言うのもミエミエだし、「毎日精力的」と入れるのも、「もっともっと仕事しろ!!」の裏返しに取れて、さらにプレッシャーを与える効果大に!?)

今回は、ガレ場探索の攻略法を一般ダイバーの方に解り易く紹介していく訳ですが、タツヤさんには、一番難しいと思われるケブカキンチャクガニの棲息していそうなガレ場の解説や探し方のコツを説明して頂きます。では、お願いします。

タツヤ:まず、大小さまざまなコブシ大の転石が積み重なっているガレ場が理想的です。最下層はサラサラとした白い砂地ではなく、海藻や甲殻類の脱皮殻、魚の糞が混ざっている雰囲気で言うとグレーがかっているガレ場を探します。このときのポイントとしては、転石が砂(泥)に埋まっていない事。細かいサンゴ礫が多すぎない事。3〜4重位に転石が積み重なっている場所が探しやすくなります。

探し方としては、転石をめくった時に他の転石下に逃げ込む事がありますので、充分なスペースを作っておくと良いでしょう。ケブカキンチャクガニの毛の色から考えられるとおり、魚の糞や砂(泥)内の分解者の糞の中に埋まっている事もありますし、この時はイソギンチャクだけは上に出しているので、それを見つけたら手でサッと軽く払ってみます。

また、捲った石の裏側の隙間に入り込んでいる事もあるので裏側もチェックが必要です。

後の注意点としては、ニジハタが石の隙間に隠れている事がありますので急に出てきて食べられてしまわないように注意して下さい。

川本 :はい、大変意義深いアドバイスの数々、本当にありがとうございました。さすがに、No.1の言う事は私などの一般庶民ダイバーとは違い含蓄がありますね。今後のご活躍も大いに期待してます。ゲストの高橋達也さんでした。どうぞ、皆様、最後にもう一度暖かい拍手でお送り下さい。・・・・・(今後の活躍を大いに期待とサラーっと更にプレッシャーを与え、最後にとにかく気持ち良く帰って仕事してもらう為に、皆を巻き込んで拍手で送る・・・・・なかなか僕も策士になった、うんうん(笑)!?)

閑話休題、注意点のまとめです。

  1. 石やサンゴ礫の大きさや、その重なり具合の分析
  2. そこの環境の幅(砂地があるのか、泥質なところもあるのか)

まず、この2つが重要事項です。ここから探したい生物を考え、ある程度の絞込みも考慮しながら探していくわけです。生物達は食物の豊富さや住み易さなどの諸条件で、その場所が生活しやすいからいる訳です。隠れ方もその生物や個々の大きさでそれぞれですから、その辺を考慮して探しましょう。例えば、ケブカキンチャクガニなどは上記のとおりですし、大きい石やサンゴ礫をはぐった下に小さい石の集まりがあれば、フリソデエビやトゲツメエビなどが候補に挙がりますし、集まった石の大きさが親指ほどの集まりであれば、イザリウオの幼魚やイザリウオモドキなどが体色を石の色に合わせながら潜んでいる事も多々あります。大切なのは、生物達は隠れているのですから、石をはぐって、すぐに見つかる事もありますが、そこから更に擬態して潜んでいる可能性の熟知やはぐった後の更なる逃走経路も考慮に入れて探すという事です。そうすれば、探せる生物の可能性の把握や取り逃がしたものの可能性、また取り逃がさない為の対処なども考えられ効率的な探索が出来ます。

今回、ざっと書いたデータは沖縄などの亜熱帯エリアでの事ですし、ここに当てはまらないラッキーやアンラッキーな事柄は自然界のことですから当然起こりえます。2回にわたり、グダグダと書き綴った事を要約しますと、荒らされていない良い環境を探しだせる眼力を持ち、又、見つけたその宝物みたいな場所の環境を変えずに自然に近い状態のまま維持し、そして、生物の種類やその大きさ、食物や逃げる時の習性などを考え想像し、丁寧に丁寧に探してみるという事です。そうすれば、貴方のフィールドにあったガレ場探索攻略法の傾向と対策がきっと見えてくるでしょう!!

さて、雄輔親分のご好意で、これまで書かせて頂いたエビカニインサイドストーリーですが、今回を持って、一旦区切りをつけたいと思います。このコーナーのお話を頂いた時には「あれも書こう!これも書こう!!」とテーマは尽きる事はなかったのですが、飽き性の僕は、そろそろ別なテーマ(そんな大層なもんじゃないけど!?)を取り組みたいと思います。来月から、又、違うコーナーにてお邪魔します。では!!

写真は、6月中旬に出版した写真集「球美の海・・・ベジタブルフィールドの住人たち」の表紙に使ったウミウシ(Ardeadoris egretta)とウミウシカクレエビでした。


川本
川本 剛志

1965年4月3日生まれ
福岡県出身

久米島でダイビングサービスを営むかたわら、ライフワークである、冬に訪れるザトウクジラや各種の魚類、サンゴ、ウミウシ、甲殻類の生態を写真に収め続けている。多数の図鑑雑誌に写真を提供し、エビ・カニガイドブック2-沖縄・久米島の海から-等の著作を持つ。

沖縄・久米島

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BY 編集部