私がレグルスに来たばかりの頃、親方は「エビ・カニ　ガイドブック」の出版に向けて、追い込みに入っていました。当時、私が知っているエビ・カニと言えば、クルクルカクレエビ（アヤトリカクレエビ）とムギワラエビ（オルトマンワラエビ）くらい。あとは伊勢海老、車海老、ブラックタイガー、ズワイガニ、毛ガニ？？？　って感じ。それに対し親方はほとんどの人気種を既に撮り終えていて、「あとまだ撮ってないのは、ウスハオウギガニ、ハチジョウヒライソモドキ、云々かんぬん…！！」などと叫んでいたのですが、私にはさっぱり意味不明。

もちろん、こんな新参者は役に立つわけがなく、もっぱらエビ・カニ好きの先輩スタッフが活躍していました。どの位好きかと言うと、独立して自分のショップを出した際、店にエビの名前を付けていた位。当時２０代の痩せ型、ジャニーズ系の顔立ちで、海の中ではとても頼もしいモテモテの男性スタッフだったのですが、海から帰ってきてシャワールームに入るなり「きゃ〜っ！」と女のような悲鳴を挙げて飛び出してくることがよくありました。真っ青な顔をして「誰か、誰か、こ、これ、これ取って！」と指す方向を見ると、そこにはクモが。確かに大きくて気持ち悪いけど、クモや虫を見る度に騒いでいるようじゃ、八丈島なんかで暮らしていけないでしょうが。それに、よく見ると、例えば「モクズショイ」なんかに似てなくもない。

そうだ、これはクモじゃないんだよ！　カニだよ！！　カニ！！

カニだと思えば怖くないでしょ？

そっかー！　カニなんだぁ。

わーい、カニ、かわいい…。かわ…。

やだぁぁぁあ！！

やっぱり、クモだあっ！　怖いよぉぉぉお。

ハサミが有るか無いかだけで、そんなに違わないと思うんだけど、どうしてそんなに差別するのかなあ。クモに似てるからカニも嫌いになるか、カニに似ているからクモも好きになるか、どっちかって訳にはいかないんでしょうか？　ちなみに、クモの中にも結構きれいなものがいるんですよ。

それより最近エビを見ていると、ノミやダニを連想することがあって、時々ゾッとした気分になるようになりました。イソギンチャクエビの仲間など、文句なしにきれいだと思っていたのですが、これが布団の上にいっぱいいたら気持ち悪いだろうなあ…って。もしコシオリエビの小さいのが、猫の毛の間から顔を出していたら、迷わずプチっと…。

イソバナカクレエビは水中で見ていても、ダニにしか見えない。

さて、これを読んだ方、エビ・カニ嫌いになっちゃったかしら？

それとも、クモやダニを見直してみる気になったかしら？