ガイドのつぶやき 海辺のエッセイ | 豪海倶楽部 |
悪徳だった夕暮れ商法 初夏から秋にかけて、レグルスでは「悪徳夕暮れ商法」が横行し、ゲストの間で話題沸騰となります。 最近ではブログが普及して、この「悪徳夕暮れ商法」について書かれた記事も多いので、この言葉で検索するとレグルスがヒットしてしまいます。何も知らない人が見たら、高い器材を定価で売りつけて、あっと言う間にローンを組ませてしまう悪徳ダイビングショップだと勘違いするに違いありません。 そもそも「悪徳夕暮れ商法」という言葉を一番気に入って使っているのは、他の誰でもない、売ってる本人の親方なんですが…。日中のダイビングが終わったところで、「夕方に魚の産卵が見られるんですけど、行きませんか??」というお誘い。何の産卵が見られるかは時期によって違います。初夏のキンギョハナダイから始まり、レンテンヤッコ、トサヤッコ、ヒメテグリ、そしてミヤケテグリやコウワンテグリへと続きます。「今日のダイビングはこれで終わり。さて、ビールでも飲むか〜!」と思っているところへ、「今の時期、夕方じゃないと見られないんですよ〜。まだまだ時間あるし、どうせ暇でしょ〜。感動しまっせー。」と、誘いをかけるのです。2本潜るのに必要なお金しか持って来ていないゲストには「足りない分は、あとで振り込んでくれれば良いですよ〜。」。来る度に違う魚の産卵が見られるので、何度も引っかかってしまうゲストもいらっしゃいます。 しかし、予定していなかった3本目のダイビング代がかかってしまうとは言え、なぜ「悪徳」なのか?? 「産卵、見れまっせー」と言って誘い出し、「いや〜、今日はダメでしたね〜」という結果に終わる事が多ければ、そりゃあ「悪徳」でしょ、と言われかねませんが、親方の場合ここ2年間100%の確立で見ているのです。そして帰ってくると「悪徳夕暮れ商法、大成功!」とガッツポーズ。ゲストも「いや〜、悪徳夕暮れ商法に引っかかってしまった〜!」と嬉しそう。変なの。 でも、たった一人、本当に本当の意味で「悪徳夕暮れ商法」に引っかかってしまった人がいます。 それは私。 私は「コブヌメリの産卵が見られるから一緒に行こう!」と言われたのです。同じ場所でヒメテグリの産卵も見られるので、ゲストには両方をビデオに撮ってもらう算段でした。私はヒメテグリの産卵は何度も見たことがあるので、興味があるのはコブヌメリの方だけ。 カメラを持って出かけたのですが、肝心のコブちゃんは、砂の上でじーっとしたまま動きません。たまに、ズリッと3cm程度移動するだけ。親方は「そっち、見てて」と、ゲストを連れてヒメテグリの産卵場へ。すぐお隣なので様子はよく見えます。私は必死でコブちゃんを睨みながら、時々お隣をチラ見。しばらくすると、ヒメちゃんの方は産卵を始めてしまった様子。ハラハラしていると、ついにコブちゃんが始動しました。ズリ、ズリっと、10cm以上移動。いよいよか!?と思っていたら、全身をぶるぶるっと震わせ、下半身を砂の中に埋めてしまいました。ついに寝てしまわれたのです。 「寝ちゃうんですかぁぁぁっ!!!」 コブちゃん、産卵せずにご就寝でした。仕方なく私もヒメテグリへと回ったのですが、時すでに遅し。何も撮れず The END。 これは、それより前の別の日に撮ったものです。 メスが「ふん、そんな簡単に誘いに乗ると思ったら大間違いよ」とそっぽを向いてます。 でも最終的にはオスの腹びれに乗ってブーンと旅立ち。 「やばいっ! こっちにはパパラッチが待ち伏せだ!」 後ろから見ると、細長いオスにポッテリのメス。ちょっと重たそうですね。 上昇しながら、ずるずる〜っと卵が出てきています。ちょっと小さめのカエルの卵みたいです。でもね、私は今月号の豪海倶楽部にはコブヌメリの産卵を載せたかったんですよ。 それなのに、それなのに…。 親方に騙されたんです。 やっぱり「悪徳夕暮れ商法」は「悪徳」でした。 |
水谷 知世 昭和40年代生まれ 兵庫県出身 一見、負けず嫌いで男勝りというイメージだが、実は繊細な女性らしい一面を持つ、頭の回転はレグルス一番!!の頼もしい存在である。(レグルス親方・談) 伊豆諸島・八丈島 レグルスダイビング 〒100-1511 東京都八丈島八丈町三根1364-1 Tel/Fax:04996-2-3539 http://www.edit.ne.jp/˜regulus |