潜るコピーライターのアンダーウオーターズポエム 豪海倶楽部  

マシロに捧ぐ

あの時つなげなかった言葉が、今ごろになって線になる。相変わらず行く先は見えないのだけれど・・・。

さ青の瞳は海の色
遠い日にした約束の色
あまりにえんえん泣きすぎて
赤くなっちゃったも1つの瞳も
隠さなくてもいいんだよ。

君の身体は白だった。
生まれた時から真っ白だった。
こんど生まれてくるときも
そのままがいいよ。。。
Blueに映える

大阪の東部工業地帯と呼ばれるそこには、かつては河であっただろう汚水が流れる広大なうねりと、半年後には全生産ラインを他国へ移管する運命の工場があった。派遣で仕事をしていたとはいえ、世代を重ねた工場の「アナログで保管していた製品スペックを全てデジタルデータ化せよ」という指令には少し気が遠くなったものだ。

「似合わへん」と知人達は言ったが、何を指しているのかは、敢えて聞かなくてもよかった。次に海へ行くまでの期間、与えられたこの場を存分に楽しむつもりでいたのだ。出会いなら、いろんな所で待ち伏せしているものだから・・。

だが待っていたのは人との出会いではなかった。

ただでさえ緊迫した廃工の雰囲気のなか、派遣社員に免疫のない正社員達にまじっての単独作業はかなり孤独なものがあった。気持ちに反し口数は少なくなり、朝昼夕と工場の庭にある池を眺めに行くのが日課となっていた。その人工池は工場が出す廃棄物が土壌を汚染していない、という事を証明するための飾り物だ!!

池も海の仲間のような気がして。どこかで繋がっているような気がして。似ているところを探しに来たのだが、少し違っていた。これ見よがしに配置された花壇に縁取られ、最後の桜を水面に映す。花は毒気を撒かないのだろうか?錦鯉達の舞さえも乱れてサイケな意匠を放つ。

さ青と赤のオッドアイ、そいつは池でういていた。プイッと身体を斜に構え空を睨むようにしていたが、赤い方の瞳を水面下にしている姿は、涙を隠しているようにも思えた。

「隠すなら池の仲間から隠せばいいのに。。」

昨日まで、なんとなくそいつと境遇を重ねながら、ちっこけな優越感で眺めていた心が揺れる。同じ相手に恋したような・・、誰かの想い人に気付いたような・・、バツの悪さにもさり気なく、逸らした視線でもう一度、瞳を覗きこみたい気持ち。

マシロと名前を付けたとたんに、ぽちんと跳ねて沈んでいった。
水面の模様をまぜかえす小さな波紋が歌声になる。

いつも通りゆく雲に聞こう
君はあの煙突と友達かい?
だったらちょっと伝えてよ
オイラのお空を破いたまんま
ずっと刺さったつもりなの?って

流離いをする雲に聞こう
君の友達の風さんだけど・・
なにか懐かしい匂いがするよ
それってどこから持ってきてるの?
オイラもそこへ行ってみたいの

オイラを見てるこの子に聞こう
もしや何かを隠してないかい?
まぁいい・・。ひとつ教えてよ
海ってたいそうキレイらしいね
いったいどんな色をしてるの?

オイラもいつか行くつもりなの。

・・・終鈴が早鐘のように鳴り響く。

「マシロの瞳と同じ色やで・・」


仲
JUN-P(仲 純子)

大阪在住ファンダイバー
職業:コピーライターとか

1994年サイパンでOWのライセンスを取得。

宝物はログブック。頁を開くたび、虹のような光線がでるくらいにキラキラがつまっています。

海に潜って感じたこと、海で出会った人達からもらった想いを、自分のなりの色や言葉で表現して、みんなにも伝えたいなぁ。。。と思っていました。そんな時、友人の紹介で雄輔さんと出会い、豪海倶楽部に参加させていただくことになりました。縁というのは不思議な綾で、ウニャウニャとやっぱりどこかで繋がっているんだなぁ・・って感動しています。どの頁がたった一枚欠けても、今の私じゃないし、まだもっと見えてない糸もあるかもしれない。いままでは、ログブックの中にしまっていたこと・・少しずつだけど、みなさんと共有してゆきたいです。そして新しい頁を、一緒につくってゆけたら嬉しいです。