潜るコピーライターのアンダーウオーターズポエム | 豪海倶楽部 |
Mother's beacon 〜ぱいぱい塔〜 第二話 海と空の境目にある小さな陸。 ずーっと、ずーっと昔、科学の前、戦争の前、発明の前、冒険の前、そんなずっと昔、海から“命の素”を授かった女性が生まれたんだ。誕生時代のお話だよ。 その女性は、ある日オッパイいっぱいに満ちてきた“命の素”を抱きしめてふるえたんだ。この気持ちはなんだろう?自分が誰かに抱きしめられたいと願うよりも強く、誰かを抱きしめたいという想い。まるで祈りのような・・・それは、慈しみという愛だったんだ。 女性はお母さんになった。たくさんの子供を生んで“命のてん”を繋げ、愛を伝えていこうとしたんだよ。厳しい環境の時代だったけれど、お母さんは頑張った。そして世界中に家族を増やしていったんだ。どんな生き物達も仲間同士のルールを守り、思いやりの心をもって生きてきた。 なのに!時代が経つにつれ、忘れっぽくなり我がままばかりを言い出した“人”の子供達は、喧嘩をしたり、まちがった科学をしてお空を破り、おおきな氷を溶かし、陸のほとんどを失ってしまったんだ。地球は少し病気になっていた。 まよいの時代が長く続いたんだ。その末にどうしようもなく、最後に海に甘え住むところを求めていった。けど、その頃には海もとても疲れていたんだよ。陸からの移動をはじめた生き物達は、苦労して苦労を重ねた。もちろん身体との戦いもあったけど、辛かったのは、何よりも種族にこだわる“人”が、その同種族をも信じられずに、先を急ぎあったり、横入りをしたりの寂しい喧嘩を続けることだった。見るにたえないこの光景に、海は思わず大きなため息をついてしまったんだ。“人”はびっくりしたよ。海は怒らないと思っていたからね。 激しさよりも苦しげな、悲しみの風におびえる“人”・・・。なんの武器もなくなった時代に、本当は一番力が弱い“人”を、他の生き物達はかばうようにして、弱い者をかばうのは当然のようにして守ってくれたんだ。そんな生き物達に支えられて、しゃがみこでいた“人”が立ち上がった時には、身体に染みついていた“疑いの心”は吹き飛ばされていた。 心が澄むと、それを待っていたかのように、空気の精“泡ん子”が話しかけてきたよ。『海とお空、いろんな生き物達と、命の仲直りをしよう。。一緒に海に入ろうよ。。。』ってね。“人”は泡ん子と、他の生き物達ぜんぶと手を繋いだんだ。地球が少し笑ったような気がしたよ。そうして、とてもゆっくりとだけれど・・、海はすそのほうから・・すこしずつ、みんなが微笑むような受け入れをはじめてくれんたんだ。 時にはさとすように根気よく、また叱るように厳しく、そしてやっぱりとても優しいお母さんのような海。すすんで最後になった“人”が海に入る頃には、生き物同士、心の中で種族の区別はなくなっていた。地球に住む生き物達はぜんぶ、海を中心としたおおきな家族であると気付いたんだね。そしてもう二度と家族同士が喧嘩をしないように、道に迷わないように、お母さんの想いを忘れません。という誓いをこめて“ぱいぱい塔“をつくったんだよ。 “ぱいぱい塔“からは、あたたかい雰囲気が伝わってくる。なかなか陸に上がれなくなった子供達に、お天気のこと、気持ちのあり方、懐かしい昔話や、時には科学の頃の過ちなども・・、歌にして風にのせたり、波をゆらせたり、光をぴかぴかさせたりして伝えてくれるんだ。 本当の事はその反対になりつつある・・。 その最後の象徴だとも伝えられる陸さくらは、土にしっかりと根をおろし、まるでお母さんを守るように、枝を広げているという。 マシロとジュンペチは、陸さくらの雰囲気を分かち合った後、しばらくじぃ〜っとしていたんだ。お互いに何を考えているのかは聞かなくてもよかった。そのうちマシロがウインクをして、くるんと仰向けになってくれたよ。「やったね!」それは昔から2プクが気にいっているゴッコの合図なんだ。魔法のゴッコだよ。方法は簡単だ。マシロの上で浮力をとって、視界から離れないようにクッキリと見つめ合うだけ。でも威力はすごい!マシロの青い瞳に、お空を飛んでいるジュンペチが映るんだよ〜!ジュンペチの瞳にも、お空を飛ぶマシロが映る。このゴッコは、懐かしさや、憧れ、優しさ、切なさ、いろんな味が入った缶々のドロップに似ている気がするんだ。その時々に何をおもい出すかは、手の平に出してからしかわからない・・・。甘ぁいイチゴ?嬉しいパイン?もしかしたらヒュウヒュウと辛いハッカ味かもしれない。ハッカは嫌だなぁ〜。なるべく入っていなければいいのに・・・。なーんて考えていると。 「行こうか?」 マシロから静かな雰囲気が流れてきたよ。 2プクは海の外へ冒険にでることを決めていた。 キッカケは陸さくらだった。見たい、見たいと思うほど、見たい気持ちが強くなればなるほど、いつか見られなくなるかもしれないってことが恐くなってきたんだ。そして、まるで呼ばれているかのように2プクの胸をザワザワとさせる『ハカナイ?』の、そのまた向こうにある形のないハテナな雰囲気を、どうしても確かめたくなっていったんだ。2プクはお互いの泡ん子をつんつんくっつけて、小さな決心をたしかめあったよ。昔なら海に飛び込む勇気が必要だったけれど、今は海から飛び出す事に勇気が必要な時代に変わっていたからね・・。 2プクは、海の長老“モンツキカエルウオ”のジィちゃんのところへ行った。 “モンジィ”は厳しい意見をすることで有名だ。まぶたの虹をクルクルさせて、いつも「ううんにゃっ」と首を横にふる。「どうしてそんなに厳しいの?」って聞いたら、昔は何を相談されても、どうしても「うんうん」って首を縦にすることしか出来なかったんだって。一生懸命に顔色を変えたりしていろんな合図を送っても伝わらないことが多くて、それで間違ったことをする子とかもいて、辛かったって・・。だから今は「少し厳しいくらいがいいんじゃモン」って言うんだよ。でもそんな事を言いながらも、いつも最後にはうなずいてくれるモンジィなのに、今回は様子がへんなの、なかなか「うんうん」の気配を感じられないんだ。 「ううんにゃっ。考え直すのじゃモン」 「大丈夫っ!危なくないよ。僕達はちゃんとバディをするよ?」 「モーーン!もーっちろんじゃモーン!何があってもバディをする心は忘れたらいかーんじゃモーン!」 「ひゃっ。びっくりした。やだなぁ大丈夫だよ〜!僕達は大の仲良しなのだから」 「そうか?2プクは仲良しさんかモン。」 「?そうだよ?変なこと言うねぇ。ねぇ〜行ってもいいでしょう?」 「モううンむぅ」 「何??何か恐いことでもおこりうるの?」 「・・モ、モ・・・ンゥ」 「!。まぶたの虹が不吉を言うの?」 「・・・モ・・ン」 「でも行くよ!行きたいんだ!決めたんだ!ねぇ?『うんうん』ってしてよ。じゃないと心に糸がからんで・・、モンジィの困った顔を引っ張っていくようでつらいよ。」 「モゥーン。・・外は・・・、外はとても美しいんじゃモン」 「だから直接みたいんだ!」 「どうして美しいのかが分かるかモン?」 「ん、なんとなく・・わかるような気がするから・・」 「そか。なら、どうして美しいものがあるのか・・わかるかモン?」 「!。それは『ハカナイ?』の向こうにある雰囲気のこと?」 「モン。向うにあるとも“にプクいち“であるとも言えるものじゃモンよ」 「やはりそうか・・。僕達は、その知らない事がある事こそが恐いんだ。」 「そりを・・。勇気をもってたしかめられるかモン?」 「・・・・」 その雰囲気はモンジィにも伝わって、ついには「うんうん」ってうなずいてくれたんだよ。モンジィの虹が露をすべらせたようにルリルリと光った・・・。2プクはそれを美しいと感じ、そう感じてしまったことが、何故かいけない事のような気がして目を伏せかけたんだ。 海から出るには守り事がある! 海から出るには守り事があるんだ!! けどジュンペチは、そんなことは「かんたん」だと思ったんだ。 出発は夜の真ん中にしたんだよ。お空へ帰る星チビ達が、道案内をしてくれるから。チビッ子達はラクガキ上手、光を線で繋げると、親子のむくむくクマさんや、チクッと毒のサソリになるよ。星チビ達が海に描くのは夜空の模様の逆さ真似ッコなんだって。 「ホントかな?でも、お空の星座はきっともっと大きいのだろうね。ねぇマシロ?」 「うん。とてもとても大きいと思う」 「お空は深いのかな?」 「うん。とてもとても深いと思う」 「でも海も深いよ?」 「底に行ったことがある?」 「ない」 「僕もない。けど・・・」 「けど・・・、なぁに?」 「どちらも深いところは同じ青ではないかしら?」 「そうだね。きっとマシロの瞳と同じ色だね」 「うん。僕はこの色に何か約束のようなものを感じるんだ」 「次ぎはお空に生まれると言うの?」 「わからない・・・。でも世界は不思議なようでいて、ごく自然に不思議じゃないから」 「マシロはまた哲学な事を考えたね」 「僕達海時代の生き物は、前世を昨日と同じ感覚で覚えているよね。でも来世の事は明日のようにわからない。まったく缶々入りのドロップみたいだなって」 「え〜?たはっ。ゴッコの時の・・・聴こえちゃってた?」 「うふふ・・、ジュンペチの雰囲気は正直だからね。。実は僕はね・・、初めてJUN-Pだったジュンペチに出会った頃の・・、鯉の頃の・・、お池の頃の想い出がとても辛くて、辛くて、消したいと願ったことがあるの・・。でもね、その想い出を否定することは、JUN-Pとの出会いを否定して、今のジュンペチとの出会いも空しいことにすると気がついたんだよ。それに辛かったけど懸命に生きていた自分がいたことは確かなんだ。自分が自分の存在を否定する事だけは嫌だもの」 「うん。・・・ありがとう。消さないでくれてありがとう。それになにより、マシロがマシロを消さないでいてくれたことが嬉しいよ。また会えたものね。。。」 「会えたね。。」 「うふ。ねぇ・・おもい出ってさ、いっぱい増えていくけどパンパンになったらあふれるのかな?もしあふれ出しちゃったらどうなるんだろう、、とか考えない?」 「考える時はあるよ。一杯になってあふれると、遠い昔の事から順々に忘れてゆくのかな?って・・。どうだい?ジュンペチは辛いことから忘れたいかい?」 「うーん。そうだけど。そうだけど、ダメだとは思うの。だって、ドロップの缶々からハッカ味のが出てきたからって、いちいち中に戻していたら、最後にかたまって出てくるのじゃないかな。」 「うふ、そう思うの?僕もわざわざハッカ味のを選んで食べたいとは思わないけど、なぜかハッカが多い缶々だったことはあるよ。それはなぜだろうね?」 「うーん。ジュンペチも食べたくないのに多いような気がする、なぜだろう?なぜかなぜだか多いんだ」 「そう・・、でもきっとその時は他の誰かの缶々からハッカ味が少なくなっているかもね?」 「うん。そうだね、そうだといいね。あぁ〜ドロップ食べたくなっちゃったぁ。むにゃむにゃ」 波がゆらりと心地いい。海藻が首をかしげると、マシロがふわん。クラゲのスカートがめくれると、ジュンぺチもふわぁん。2プクはウトウトと眠りに入っていったんだ。 海のしずくの、てん。てん。てん。 星の光りは、空の、てん。 ねむれよ、よい子よ、あたらしい明日のために。 空をあおげば、てん。てんてん。 ねむれよ、よい子よ、優しい想いをだいて 本当のあっち、夢のこっち、そんな場所からお歌が聴こえていた。 ときおり感じる“ぱいぱい塔”の子守歌は、 本当はいつもいつも世界に満ちているのかもしれないけれど、きっと心が身体にとらわれているときには聴こえないのだろう。お歌の意味を探そうとして、一生懸命に耳を澄ませても澄ますほどダメだもの・・・。 ヒュンヒュルピゥゥン〜。突波だぁ!速いぞ!! 「きゃぁ!目が覚めたー!」 泡ん子と水とのへだたりもまるでないような気持ち、海の上空はcrystal freeだ。ジュンペチは何を考えるでもなく、ただ何かを感じていた。何かというのは“身体の素“のようなもの。海にも、陸にも、お空にも、ただ“身体の素“があって、ただたまたまいろんな組み合わさり方をして、いろいろ姿が違う形になり、そこに”命の素”が宿る?・・・。遠い目で彼方を見ていたマシロが、おもい出したように言った。 「ねぇジュンペチ?お空のね、イルカ座って知ってる?」 「知らないよ〜。あるの?」 「うふ。あればいいなぁ。と思っただけ」 「なぁ〜んだ。うふふ。ジュンペチがつくろうか?」 「うひゅ」 可愛いテレ笑いだね・・。ジュンペチは、そんなマシロが大好きなんだよ。だから一緒に同じ雰囲気を感じる旅がとても嬉しかった。そしてさっきは同時に“ぱいぱい塔”の子守歌を聴いていたんだなぁ〜と思って嬉しいことばっかりだったんだ。 朝陽が海からゆであがる頃、そろそろ海面が近づいてくる? 一枚一枚、波をめくるよ。透明なベールがサワサワくすぐったいね。だんだん、だんだん、あたたかくなる。光をとてもおおく感じて、色がパステルにちかくなる。泡ん子はなんだかちょっぴり嬉しそう。そうだね、お外は泡ん子の庭。キラキラが泉のように弾けるはずだ、もうすぐ虹のある場所だもの。キラキラは虹をすべって海に飛び込む。僕達は虹の通りを目じるしにして、泡ん子に入って飛んでいくんだ! 虹・・・。モンジィが憧れた夢。 ウンウン・モンジィ、その昔♪ 「・・モンジィに、見せてあげたかったね」 別れ際、モンジィの虹が美しく光ったことをおもい出したよ。 モンモンモンジィ、モンジィジィ♪ 2プクは、よりいっそう大きなお歌をしながらはしゃいだ。 「ふわぁ・。・やいやい、にぎやかな雰囲気だねぇ。眠れやしねぃよ。むにゃむにゃぁ」 え??なんだ〜?突然おかしな雰囲気が伝わってきたよー。 「へへんっ、ここでぃ!」 「なんでー?なんで居るの?全然気付かなかったよ!」 「てやんでぃ〜!あったりめぃだよぉ。オイラ眠って雰囲気を消してたからねぇ〜」 「冒険をオイラに隠すなんてぇ無理な話だぇ?泡ん子同士の噂ってぇのはビンビンとここんとこ、ほらオイラの敏感なウロコに伝わってくるんでぃ!まぁ逆っさまに触れなかったことをありがたく思って、空まで連れていくことだね。いっちょう気ップのいいとこをお見せよ!くすくす」 「なに?なに?いったいどういうこと?」 「やっと気付いたね〜!ジュンペチを驚かそうとおもったんだよ、うふっ。仲間は多いほうが楽しいよ。心強いしねっ。ジュンペチもそうだよね。それよりもゴルゴルのかくれんぼは上手だろ?」 「え?マシロは最初から知っていたの・・・・・・・・・?」 ゴルゴルは、さっそくジュンペチの泡ん子の一部を「ちゅぱっ」と吸い取ると、自分の空気孔から出して、マイ泡ん子にしてしまったんだよ。ジュンペチは自分の中に、いままで感じたことのない雰囲気が生まれたことに気付いてとまどった。マシロはこっちを見てキョトンとしている。 『ダメだ!こんなドンヨリとした雰囲気は隠さなきゃいけない!』 ジュンペチはとっさにそう思い、手をギュッとしたんだ。 つづく お話は来月号へ続きます。。。 |
JUN-P(仲 純子) 大阪在住ファンダイバー 職業:コピーライターとか 1994年サイパンでOWのライセンスを取得。 宝物はログブック。頁を開くたび、虹のような光線がでるくらいにキラキラがつまっています。 海に潜って感じたこと、海で出会った人達からもらった想いを、自分のなりの色や言葉で表現して、みんなにも伝えたいなぁ。。。と思っていました。そんな時、友人の紹介で雄輔さんと出会い、豪海倶楽部に参加させていただくことになりました。縁というのは不思議な綾で、ウニャウニャとやっぱりどこかで繋がっているんだなぁ・・って感動しています。どの頁がたった一枚欠けても、今の私じゃないし、まだもっと見えてない糸もあるかもしれない。いままでは、ログブックの中にしまっていたこと・・少しずつだけど、みなさんと共有してゆきたいです。そして新しい頁を、一緒につくってゆけたら嬉しいです。 |