潜るコピーライターのアンダーウオーターズポエム | 豪海倶楽部 |
秘技・ヤジロベエの術 月日が経つのは早いもので、JUN-Pが豪海倶楽部にお世話になって5年にもなる。あまり潜れもしない自分が、名うてのガイドさん達がひしめくこの場にいつまでも居てもいいのかなぁ。と、悩まないでもないけど、、。憧れて、仲間に入れてもらった豪海倶楽部。この場所が好きだし、ダイビングが好きだし、離れるのは寂しすぎるので、書けない時は休み休みしながらも続けさせてもらっている。 潜れないなら潜れないでも、ダイビングと繋がっている自分には変わりなく、そんな自分が想うことを伝えられたらいいな。と思う。。。なんてのは、ちょっといいかっこしてるのかもしれないけど。 読者さん、雄輔さん、豪海ライターのみなさん。これからもお願いします。 さて、この右端のプロフィールに、職業コピーライターとか。とあるが、最近のJUN-Pはコピーライターから広がって、印刷物のデザインやら制作などのお仕事をしている。現在、派遣でお勤めしているのは報道媒体紙を発行している会社で、その媒体に毎月掲載されている旅のページのデザインを担当しているのだ。 その紙面はイラストがたくさんあり、デザイン性も豊かで、しかも毎月違うカラーを打ち出しながら記者が旅した各地の紹介をしていてとても楽しい。JUN-Pが読者の頃からの憧れの紙面で、担当できた時は本当にうれしかった。不思議なもんやね。そろそろ3年の契約は切れるけど、毎日たのしくお仕事している。 とはいえ、その旅面だけが仕事ではないので、いろんなページの見出しカットのデザイン、表やグラフもつくったりしてる。中でも好きなのは記事に添えるイラストで、報道関係なものだから、ゴートーとか、ひったくりとか、悪い人を描く事も多いけど、歴史や自然環境の話題もあるし、ほのぼのとした赤ちゃん話題とか、メタボなおじさんとかいろいろあって、場面や構図、ときには台詞なども自分で考えられて楽しい。 余談だが、JUN-Pはここ3年で変な態の人を描くのが上手になったと思う。友人が見て「きゃ、きも」と笑ってくれれば上々の出来で、「うわぁ〜。きもぉ〜」と引かれてしまうと失敗作だ。微妙なきもさのさじ加減を学んだとも言える。けど、国宝建築物の屋根にカラス被害!のイラストを描いて「これどこの納屋や!?」と言われた時はかなり落ち込んでみた。JUN-Pがここ3年で上達しない事、それは建物のイラスト。パース、、超苦手。そして地図だった。 そう、問題はこの地図にあった。 毎日たのしく。といいながらも、この会社でのお仕事はほぼ三分の一が地図関係であり、その作成が重要なお仕事なのである。これにはこまった。JUN-Pは地図が読めない。というより今まで読むつもりもなかった。だってあれは難解な暗号図と思い込んでいたもの。なのに、その暗号を解読し、尚かつ読者に分かりやすいようにつくるのがお仕事のひとつになってしまったのだ。JUN-Pでも東西南北という言葉は知っている。地図上では北が上で南が下だ。当たり前だ。けれど、じゃぁ、東は右?それとも左?と聞かれたら?。。。それがピン!とこないのだ。東西の観念がない!これは致命的だった! わりとホットな報道媒体なので、過酷でシビアな降版の締め切りがある。この締め切り直前に、記事になりそうな事件が発覚すると修羅場が始まる。すわ現場地図の作成だ!と記者が依頼に駆け込んでくる、その前にデザイン部署の社員さんは地図帳を広げて用意している。社内は各部署が低いパーテーションだけで区切られていてフロア全体を見渡せる。こういったとっさの事件にいち早く全社が対応できるように考えられているからだ。社内は騒然とし緊迫状態にある。JUN-Pはどきどきしながらも出来た地図をすぐに校閲に回せるようにスタンバイしている。こういった現場地図はベテランの社員さんが作成する事になっていて、それはほれぼれするほどの手際よさでみごとに美しくスピーディに仕上げられる。しかし、事件というのは起きる時には多発するものらしく、締め切り前にもう一件、となると社員さんも滝汗で、何台かあるMacの前を反復横跳びしながらの作業になる。そしてさらにもう一件!緊迫がつのる。そうなるともうJUN-Pも黙してはいられない。サポートしなくては、、!と、ある程度下絵ができた所で記者が飛んでくる「現場!○○公園の東!」。え、、、?東?ヒガシ、、ってどっちですか?右ですか?左ですか?とは聞けない、、。絶対聞けない状況。そこに、降版10分前です!のアナウンス。。そして無情にもきっかり10分後、降版終了しました!と最終アナウンスが流れる。。。 この悪夢のような修羅場を体験し、JUN-Pは決心をした。東西を、左右に関連づけて完全に把握するのだ! それには語呂合わせがいいだろう。絶対に勘違いしない語呂合わせ、それしかない。JUN-Pは英語のライトと右を関連づけて覚えるのにもこの手を使って成功した。ライトとレフトは同じラ行なので覚えにくい。けれど、右利きのJUN-Pは「オーライ」と右手を上げて合図をするので、右はライトなのだ。これは絶対忘れない。 ヒガシはヒという字がつくのでヒダリだろうと思い込みがちだが、これは罠だ。JUN-Pはこの罠に何度もはまっているにも関わらず、まだこれにとらわれていて他の語呂が思いつかない。こまりきって同僚に相談すると、心優しき彼は「う〜ん」と、指を折りながら考え続け、そしてすばらしい技を伝授してくれた。 「ヤジロベエになりましょう!」 は? 「自分の頭を北と決めて、ミギヒガシ・ヒダリニシ。両手に5個の文字を持ちバランスを取って立つのです」 す。すごい! まさしくそれは天からの声。 ミギはヒダリ。ヒダリはニシ!両手に文字を5個ずつ握って人は立っている! ミギニシ・ヒダリヒガシとしては、文字が4個対6個になり、世界が傾く!森羅万象のバランスが崩れてしまう!これほどに完璧な覚え方があろうか!日本人は天才だ。この同僚君も天才だ!JUN-Pは目からウロコがとれるほどに感動した。これぞ名付けて、秘技・ヤジロベエの術。やったぁ!精神大革命。それからのJUN-Pは地図をつくることが怖くなくなったのだ。 はて、しかし、この秘技をお仕事だけに使うのはもったいない。なんとかダイビングにも活かせないものだろうか? JUN-Pがあんまり潜らなくなった理由のひとつは、ダイビングが怖くなったからだ。怖くなった理由もたくさんあるが、ものすごい方向音痴なので、帰るべき方角が分からないのも不安要素なのである。お出かけ先で、街角で、海や山で、JUN-Pを捨てることは容易い。頭を持ってくるっと回せばもうどっちから来てどっちへ進むのかを見失っている。方角に関してはいままでずっと、天才バカボンの歌だけを頼りに生きてきたが、お日さまが昇る方角は、正午や夜中、ましてや海では分からない!なまじ分かったとしても、その東と呼ぶ方角が自分の右手なのか左手なのかが覚えられなかった。けれどヤジロベエの術を修得した今、これを水中で活用すれば、少しは不安も解消されるはず。両手を拡げ水平に中性浮力をとれば、右手は東を指すのではないだろうか??帰るべき方角が東であれば、右手に進めばいいのである。 いや。待って。。ちょっと違う? そうするにはまず、北を見つけて頭を向けなくてはいけないのではないか!!たぶんそうだ。 海で北を定める決め手はなんだろう?必ず北を向いている魚?そんなの居ない。居てもいつもは居ない、居ても見つけられないかもしれない。じゃぁなに?決め手、決め手、そんなのなにもないはずだ。いやJUN-Pが知らないだけでなにかあるのかもしれないけど。。 人、我欲を捨て無心に中性浮力をとらば、自ら磁力を帯び、そのかしら常に北を指し示したり。とはならないものだろうか? …ならへんやろな。。 お給料をもらったらかっこいい方位磁石を買いにいこう! |
JUN-P(仲 純子) 大阪在住ファンダイバー 職業:コピーライターとか 1994年サイパンでOWのライセンスを取得。 宝物はログブック。頁を開くたび、虹のような光線がでるくらいにキラキラがつまっています。 海に潜って感じたこと、海で出会った人達からもらった想いを、自分のなりの色や言葉で表現して、みんなにも伝えたいなぁ。。。と思っていました。そんな時、友人の紹介で雄輔さんと出会い、豪海倶楽部に参加させていただくことになりました。縁というのは不思議な綾で、ウニャウニャとやっぱりどこかで繋がっているんだなぁ・・って感動しています。どの頁がたった一枚欠けても、今の私じゃないし、まだもっと見えてない糸もあるかもしれない。いままでは、ログブックの中にしまっていたこと・・少しずつだけど、みなさんと共有してゆきたいです。そして新しい頁を、一緒につくってゆけたら嬉しいです。 |