南国通信 楽園からのらくがき | 豪海倶楽部 |
ロッテとチューク 先週は、フィッシングや教会での結婚式、それに2つのTV取材などが重なり、そこに普段の仕事や雑用も重なって、てんてこ舞いの1週間であった。睡眠時間は、長くても4時間、短い時は2時間位しかなく、正にナポレオンのアルプス越えである。そのアルプスもやっと無事超える事ができた。 1つの取材は、スカイパーフェクトTVの旅番組で、4月15日と29日、それに5月13日と27日の4回に亘って放映される予定だ。こちらは、ロッテの優勝に関連した番組で、レポーターはかつてロッテに在籍した事もある元ヤクルトのピッチャー・ギャオス内藤である。なんで、南の島・チュークでプロ野球かと言うと、それにはれっきとした訳がある。チュークに、『ススム・アイザワ』という日系2世の男性がいる。母をチューク人に持ち、終戦を機に父の祖国・日本に渡った。日本で就学・就職の後、やがては当時のプロ野球球団に入団する。日本のプロ野球が現在の12球団に統合される以前の陽明期、高橋ユニオンズという球団にピッチャーとして籍を置いた。ロッテの前身である。当時のチームメイトには、スタルヒン、佐々木信也などがいると言う。そして、3年間のプロ野球生活の後、再び母の祖国・チュークに渡り実業家として名を成し、現在に至っている。 番組は、そのススム・アイザワ氏と当時のチームメイト達との交流、彼の現在の姿と、彼が住む南の島・チュークの紹介等である。こちらは、忙しい私に代わって妻・カオルがコーディネートをし、ガイド役を勤めた。今回は、ガイドさんもかなりブラウン管にも登場するそうなので、とても楽しみにしている。レポーターがギャオス内藤ときては、プロ野球キチの私としては、おとなしくしている訳にはいかない!彼の好意もあって、談話のシーンは殆どがプロ野球の話で盛り上がってしまった。 そしてもう一つの取材、これもまた日系人を対象としたものであった。チュークには沢山の日系人がおり、その数は全人口の3割にも当たる。中でもその最たるものが『モリ・ファミリー』である。 1892年、今から114年も前の明治の半ば、1人の日本人がチュークに足を下ろす。彼の名は『森 小弁(もり こべん)』、若干22歳でこのチュークに住み着き、以後の人生を南の島に捧げた。今あるモリ・ファミリーは、彼・森小弁の子孫達なのである。100年以上も前、1人の男から派出したこのファミリーは、直系だけでもすでに1000人を数える。現在のチュークの社会を語るのに、モリファミリーを抜きにしては語れない程である。前出の、ススム・アイザワ氏もチュークに帰り、この森小弁の孫娘を妻に迎えている。 番組は、このモリファミリーにスポットを当て、モリファミリーを通してチュークを見つめてゆくもので、リポーターの、〆さば(アタル・ヒカル)という漫才師が、面白おかしく、ハイテンションでモリファミリーとチュークの社会を紹介してゆく。しかし、モリファミリーに残ると思われる日本人の精神構造の話になると、ちょっとトーンが低くなってしまう。日本名の、『森』から来るイメージに惑わされるようだ。 森小弁の子供達に対する教育と躾けはとても厳しいものがあったと聞く。その意を継いだのが、長男・森太郎であった。かれは、チュークの日本時代、早稲田大学に学び完璧な日本人としての教育を受ける。今は、その太郎もこの世にはなく、他の10人の小弁の子供達もすべて他界してしまった。しかもモリファミリーで日本語を話す人達でさえ今はもう居ない。早くもモリファミリーは、4世、5世の時代にまで突入している。かつて、日本時代の日本人の良さを受け継ぎ、実感した人達は今はもう皆無となってしまった。戦後60年のアメリカの統治と教育の中で、日本人の血を誇りに思うと言うモリファミリーの人達の中でさえ、日本人としての精神は今確実に薄れてきている。これもまた民族の歴史の流れであり仕方の無い事であろう。今回の取材を通して、ひしひしとその思いを感じたものである。 番組は、東京12チャンネルの、“所さんの 学校では教えてくれないそこんトコロ!”『ありえねぇ〜ツアー』という番組である。放映は、4月7日(金)の午後8時からの2時間特番となっている。その中でチュークのコーナーも放送される。2人の漫才師レポーターに混じり、おふざけガイド役で出演している私の奮闘振りもまたお見逃し無く!! そんな中、南の島の教会で簡素な式を挙げ、愛を誓いたい、と言うお客様がいらっしゃった。南の海をたっぷりと堪能した後の、チューク最後の日、普段着のままでの結婚式に臨んだ。お二人の為にチュークで最も由緒ある、海辺のプロテスタント教会をご準備した。この教会には、キリスト教のミッションハイスクールも併設されており、協会側の粋な計らいで生徒達も授業の合間を縫って、この結婚式に参列する事となった。愛の誓いが終わり、牧師から二人の夫婦名が呼ばれるのを合図に、それまで水を打ったように静かだった教会に生徒達の歓声と祝福の嵐が沸き起こる。厳かな雰囲気の中で緊張の連続だった二人の顔にも一気に笑顔がはじける。澄みきった空と海に愛の笑顔がこだまする。いつまでもお幸せに・・・、と祈る。 アルプスを越える チューク諸島 |
末永 卓幸 1949年1月生まれ 長崎県対馬出身 立正大学地理学科卒業後、日本観光専門学校に入学・卒業。在学中は地理教材の収集と趣味を兼ねて日本各地を旅する。1973年、友人と4人でチューク諸島を1ヶ月間旅行する。1978年チューク諸島の自然に魅せられ移住。現地旅行会社を設立。現在に至る。観光、ダイビング、フィッシング、各種取材コーディネート、等。チュークに関しては何でもお任せ!現地法人:『トラックオーシャンサービス』のオーナー。 ミクロネシア・チューク諸島 現地法人 トラックオーシャンサービス P.O.Box 447 MOEN CHUUK STATE F.S.MICRONESIA #96942 Tel/Fax:691-330-3801 www.trukoceanservice.com Suenaga@mail.fm |