ガイドのつぶやき 海辺のエッセイ 豪海倶楽部  

天女の舞いおりた海

-三保真崎海岸-

伝説では、三保の海岸に天女が舞いおりたそうだ。巷のウワサでは、羽衣を掛けるのに丁度良い枝ぶりの松が見えたので、立ち寄ったらしいのだが...。特に海が綺麗で、それに魅せられて降りて来た訳じゃなさそうだ。けど、天女が降りてきた事には間違いないようだ。どうせなら、天女も潜りたくなるような魅惑的な海を語ってみましょう。(ってぇのが、今回の連載のテーマです)

ちなみに...

三保の松原は、大正十一年に全国で初めて国の名勝指定を受けた松原です。全国一の規模でした。その後、明治に入って社会構造の変革にともない、壊滅的な伐採が行われました。戦時中は、燃料として供出され、その数を減らすと共に、多くの人々の命を繋ぎました。このような幾度もの危機的状況を乗り越えて、今の松原が存在しております。

第一話 ハゴロモの伝説は続く

いつも潜っている三保の真崎には、ハゴロモハゼと呼ばれるハゼの仲間がいる。たかがハゼ?と言う方もいると思うけど、このハゼ単なるハゼではなく、駿河湾と相模湾でしか見つかっていない学名も和名もないハゼなのです。つまり研究が進めば、新種として発表されるハゼなのであった。どうせ三保にいるんじゃぁ、地味なハゼなんでしょぉ、って思ってませんか?(笑)これが、とんでも無く綺麗で妖艶な色彩なんですよ。現在、熱海、川奈、土肥、大瀬、獅子浜などでも確認されていますが、定量的に観察ができているのは「三保」だけ。個人的な願望を言わせてもらえれば、景勝地「羽衣の松」が有名な三保の松原のある場所だけに、ハゴロモハゼ属に分類させれば良いなぁと思っている。(笑)見つけてから、かれこれ10年ほど経つので、そろそろ○○ハゼ属の1種という言い方も飽きてきました。(苦笑)

通称、アイアンゴビーって言ってますけど、こう言う呼び方って気分を害される人もいるので、最近は内輪だけで使っています。(って、また公の場で使ってしまった!)(^-^; 見られる期間は、年差はあるものの、およそ5月後半から12月までの半年間になる。他の共生ハゼと比べて、やや下限水温が高いようで、17度を境に出没をしている。つまり、この号が出ている時期は、ドロの中でお休みの最中なのです。1年の半分しか出勤しない欧米人並みのバケーションですね?(笑)フォトジェニックなだけに、沢山のフラッシュやライトを浴びて、お疲れなんでしょうか?(苦笑)さて、この魚がハゴロモハゼ属として新種発表されれば、それはもうこの地の、まさにうってつけの魚になることに違いありません。伝説は、今新たな形で、伝えられる...のかも知れません。(ちょっと弱気?)


ハゴロモハゼ属の1種 水深21m 体長5cm

鉄
鉄 多加志

1965年生まれ
清水出身

生まれ育った環境が、都市部?の港湾地域に近く、マッドな環境には滅法強く、泥地に生息する生物を中心に指標軸が組み立てられている(笑)この業界では、数少ない芸術系の大学出身で写真やビデオによって、生物の同定や生態観察を行う。

通称「視界不良の魔術師」
静岡・三保

ダイバーズ・プロ
アイアン

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