ガイドのつぶやき 海辺のエッセイ | 豪海倶楽部 |
第二話 またしても沖縄(後編) 幸いにして、減圧症やそれ以外の高気圧障害にはならなかったようであるが、人には言えないダイビングをしてしまった。(この場を借りて、言っていますけど?)再び、水深25mで残圧を見て驚いた。そして、もっと驚いたのは、水深計の置き針が・・・55mを指している。冷静に考え、極力ゆっくりと浮上して、水深3mで残りのエアーを吸い尽くしてエキジットした。 自分の記憶に、ここまでポッカリとブラックゾーンが出来てしまう経験は、水中はモトより、陸上生活を含めて初めてであった。内地に戻ってから、フイルムを現像して更に驚いたのだが、記憶のない部分のカットも存在している。存在を認めてヘッドファーストで潜降し、窒素酔いの原因になったイソバナも写っていた。 その時、一緒に潜っていたダイバーの誰一人として、僕が窒素酔いになっている事に気が付かなかったらしい。それとなく、自分がどの辺りにいたのか聞いたのだが、ボトム付近で写真を撮っていたと言う話ししか出てこない。何故?どのようにして自分が浮上したのか?残圧ギリギリで意識が戻ったのか?まったく分からない。まさか、窒素酔いになりながら、無意識の内にBCへ吸気していたとも考えられない。唯一予測できる幸運は、深かったとは言え、ボトムがあったからである。 窒素酔いの場合、あるコマンドを受けた状態になると、その指示(この場合は自分が出している)が満たされるまで、それに伴う行動が続く。例えば、窒素酔いのダイバーに「残圧確認」の手信号をすると、残圧計を見ようとする行動が続く。つまり、左手に残圧計が掴めなければ、その行為を遂行するまで続けるのである。僕は、ボトムに到達したことによって「あのイソバナを撮影するのに潜降する」と言う呪縛から幸いにして解放されたのであった。誰がこの呪縛を解いてくれたのだろうか?僕はこの時、ハッキリと認識をした。沖縄は、まだまだ僕の沢山の秘密を持ちたいんだと。そして、沢山の「ブルー」を見せたいんだと思った。 |
鉄 多加志 1965年生まれ 清水出身 生まれ育った環境が、都市部?の港湾地域に近く、マッドな環境には滅法強く、泥地に生息する生物を中心に指標軸が組み立てられている(笑)この業界では、数少ない芸術系の大学出身で写真やビデオによって、生物の同定や生態観察を行う。 通称「視界不良の魔術師」 静岡・三保 ダイバーズ・プロ アイアン 〒424-0902 静岡市清水区折戸2-12-18 Tel:0543-34-0988 Divers Pro IRON blog.goo.ne.jp/under-w blog.livedoor.jp/diverspro_iron ameblo.jp/g-iron iron@if-n.ne.jp |