ガイドのつぶやき 海辺のエッセイ | 豪海倶楽部 |
最終話 青が僕にくれたもの(前編) あれから、そして今でも僕は青に生かされている。 いったい、いつまでこの付き合いが続くのか?僕にも分からない。明日やめる事もできるし、数年前に諦めた煙草のように、終わりが来るまでには、何度のリフレインを経験するのかも知れない。仮にやめれたとしても、それは時として毒のように、時として切ない思い出のように、必要な時に僕の気持ちを満たしたり傷つけたりすることであろう。 潜らなくても夢の中で暮らせるんだ。潜らなければ、自分が自分として、この世に馳せた思いを全うすることは出来ない。やめてしまうことは、あまりにも悲し過ぎる。 「自発的に止める事のできない行動は病気です」 ある医者がこんな発言をしていた。慢性窒素欠乏症...それが僕らの病名です。不活性ガスの窒素が常用性あるいは習慣性を伴うハズもない。 しかし、その空気の約8割を占めるガスは、圧力を伴う事で僕らを魅惑の坩堝へと誘う。 そのガスは体内に溶け込み、ある圧力下で麻酔作用を施す。もうオマエの自由は奪ったよ。深海の神の誘いは切迫しているようにも聞こえる。 しかし、その緊張感は当の本人にとっては他人事である。マティーニの法則に従い、1mごとに酔いを重ねる。深海の神は、この時点で「バッカス」を名乗る。 千鳥足は、上昇を欲するであろうフィンキックを邪魔する。この気持ち良さから、明確に脱したいと言う強い意志は持ち続けられない。 「お前はもっと自由な存在だ」 深海の神はそうツブやく。背中に背負った圧縮空気からではなく、自分と同じ環境圧にある酸素を取り入れろと促すのであった。 セカンドステージが口から外れる。映画のアビスのような光景が展開される。何度目かの海水の吸引で、これが映画ではなく、現実だという刹那を知る。水深70m...でだ。 |
鉄 多加志 1965年生まれ 清水出身 生まれ育った環境が、都市部?の港湾地域に近く、マッドな環境には滅法強く、泥地に生息する生物を中心に指標軸が組み立てられている(笑)この業界では、数少ない芸術系の大学出身で写真やビデオによって、生物の同定や生態観察を行う。 通称「視界不良の魔術師」 静岡・三保 ダイバーズ・プロ アイアン 〒424-0902 静岡市清水区折戸2-12-18 Tel:0543-34-0988 Divers Pro IRON blog.goo.ne.jp/under-w blog.livedoor.jp/diverspro_iron ameblo.jp/g-iron iron@if-n.ne.jp |