ガイドのつぶやき 海辺のエッセイ 豪海倶楽部  

拝啓・・・母上様

母の日の2〜3日後のこと。アオリイカの産卵を見に行った。いつもと変わらない場所ではあるが、この日は何だか雰囲気が違っていた。

少しどんよりした中で、アオリイカの産卵を待つ。数は少なく1ペアのみ。交接を終えた後、いつもなら卵を産み付けるメスの後ろで見守るオスが、この日はなぜか遠くで見ているだけ・・・

2回目の産卵に入る前に、メスと眼があった。とても悲しげな、寂しげな眼をしていた。いつもと違う。

と、2回目の産卵に入った途端、、産卵床から黒煙があがった。黒煙は見る見る大きくなった。

えっ!!!

と思った瞬間、黒煙の中から、アオリイカが必死に逃げ出そうとしている。

その先には、鬼のような顔をした黄色い姿があった。

そうなんです。産卵するアオリイカをウツボが待ち伏せして喰らいついているのです。黒煙はイカの墨。

長い体をアオリイカに巻きつけ、頭からかぶりついて相手の動きを止めている。

頭を喰いちぎられ、胴部だけ、落ちるアオリイカ。

弱肉強食の世界ではあるが、2回目の産卵のときのメスの眼は・・・。

今から考えると、ウツボがいるのに気づいていたのかもしれない・・・。

少ない確立とはいえ、子孫繁栄に命をかけたメスの気持ち。勇気。

母親の強さを知ると共に、生きることの価値、命の尊さを学んだ気がします。


八木
八木 克憲

1970年3月生まれ
川奈在住
ガイド会在籍

むか〜し昔のことじゃった。岐阜の山奥に一人の若者がおったとさ。小さい頃は山や川で朝から晩まで駆けずりまわりよった。その若者は、都会さあこがれ名古屋へ出稼ぎに行き公務員になったとさ。何不自由なく暮らしていた中、どこで頭を打ったのか?若気の至りというものか?公務員をきっぱり辞めダイビングの世界さ飛び込んじまった。サイパンに渡りMOCダイブセンターヒロの元、丁稚奉公をしたとさ。帰国後、縁あって川奈という海に出会い、腰を据え一生そこで潜り続けるのじゃそうだ。自然と戯れるのがそれはそれは楽しいのだそうじゃ。あ〜めでたしめでたし!

伊豆半島・川奈
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