ゆうすけの豪海倶楽部The Diving Junky Magazine

標準和名の重要性

早くも「ヤドカリを通して屋久島の海を語る」という企画があまりにも難しいことに気づき、テーマを変えようかと思う今日この頃。。。(笑)
普通に「屋久島で見られるヤドカリを紹介!」に変えちゃおうかな〜(^^;;

唐突だけど、「ホワイトソックス」という英名(?)にはいつも違和感を感じる。人の見方にはいろいろあって、同じ生き物を見ても同じように見えるとは限らない。見る人が違えば、見方も変わってくるのだ。

白い足に着目して「ホワイトソックス」と呼んでいるのは分かるのだけど、僕的にはむしろ真っ赤なボディの方が目を引く。白い足よりも、真っ赤なボディにこそ、強烈な印象が残るエビだと思うのだけど。。。

僕なら間違いなく「レッドなんちゃら」とかいうニックネームをつけるに違いない。(^^;;

【ヒメホンヤドカリ属の一種 – Pagurixus haigae】

ヒメホンヤドカリ属の一種

写真はまだ和名のないヤドカリだ。

当然、「ヒメホンヤドカリ属の一種」では味気ないので、ニックネームをつけた。僕はこいつを初めて見たとき、ハサミ脚の「ハの字」の斑紋が強烈に目に入ってきて、「ハの字の子」と呼んでいた。

しかし、あるヤドカリ好きなガイドさんと話をしている時に、話の中で盛んに出てくる「ゴマ塩」というニックネームのヤドカリが、この「ハの字の子」と同一のヤドカリの事を指している事に気づくまでかなり時間がかかった。(笑)

さすがに僕にはこのヤドカリから「ゴマ塩」はまったく連想できなかった。。。(^^;;

僕は昔から生物は識別&分類さえしっかりできていれば名前なんてどうでもいいという考えを持っているのだが、これはあくまでも1人で生物観察を楽しむ場合の話。

さすがに複数の人と共通認識を持つためには標準和名は本当に大切だ。

このヤドカリにも早く和名がついてくれるといいのになぁ〜

暑中見舞い申し上げます。

暑中見舞い申し上げます。

7月に入り、基本的にダイバーの少ない屋久島でもさすがに忙しくなってきました。。。

「屋久島のヤドカリ」を通して屋久島の海の特徴を語る企画は今回はお休みさせてください。(^^;;

ひとまず今回はこれまで僕が観察してきたヤドカリの中でも一番のお気に入りを紹介します。

アカツメサンゴヤドカリの色彩変異個体

写真はアカツメサンゴヤドカリの色彩変異個体です。

通常は白い部分が淡いパステル調の紫色に染まり、超普通種のアカツメサンゴヤドカリが何だかとってもお洒落なヤドカリになっちゃってます。(笑)

こんな体色の子に出会ったのは、この時限り。。。

さて、まだまだ忙しい日々が続きますが、果たして来月号では本題に戻れるのだろうか?(・・;)

またまたお休みして、二番目のお気に入りヤドカリを紹介していそうな気もする。。。(笑)

屋久島を南限とするヤドカリたち

前回は「屋久島を北限とするヤドカリたち」を紹介したけど、今回は屋久島以南では見られないヤドカリを紹介したい。

ヤドカリに限らず屋久島で見られる生き物は、基本的に琉球列島などで見られるようなカラフルな熱帯性の種類が中心だ。

しかし、主に屋久島の南を流れる黒潮は南方からこうした熱帯性の生き物を運んでくるだけでなく、屋久島よりも北に生息する温帯性の生き物の南への分布拡大をブロックする。

そのせいか屋久島は奄美以南の琉球列島ではめったに見られないような温帯性の生き物の南限になりやすい。

こうして黒潮のおかげで屋久島は熱帯性の生き物と温帯性の生き物が混在する多様性の高い海域になっている。

【ホンヤドカリ】

ホンヤドカリ

屋久島には北海道から九州までの温帯域で普通に見られるホンヤドカリもごくごく普通に見られる。

このヤドカリは沖縄はもちろん、奄美以南では見られない種類なので、間違いなく屋久島周辺の海域が南限になる。

地味で温帯域では普通に見られるヤドカリを紹介しても、誰も興味を示さないかもしれない。。。(笑)

しかし、屋久島でホンヤドカリが普通に見られるという事実は生物地理上、非常に重要な事だ。

主に熱帯性のヤドカリが生息する海域でこの温帯性のホンヤドカリが同時に見られる光景は、きっと生物の分布に詳しい人間からしてみると驚きの光景なのかもしれない。。。(^^;;

【フルセゼブラヤドカリ】

フルセゼブラヤドカリ

屋久島には奄美以南の琉球列島では見られないヤドカリはいろいろいるのだけど、どれも基本的にはとても地味!

ここでは少しでも派手な種類を紹介しようと思う。(笑)

派手なゼブラヤドカリの仲間の中で、主に温帯域でよく見られる種類にフルセゼブラヤドカリという種類がいる。

屋久島では割と普通に見られる種類だが、奄美以南ではかなり稀な種類だ。(というか記録もない可能性も。。。)

ちなみに小笠原では見られるので厳密な意味で「南限」ではないのだけど。。。(^^;;

このヤドカリは学名をPylopaguropsis furuseiといい、古巣の八丈島で散々お世話になった発見者・古瀬さんに献上された学名&和名だ。

古瀬さんは20年以上前、まだウミウシがブームになる遥か前からウミウシの分類に取り組んでいたり、ヤドカリもマクロ、マクロと騒がれるずっと前から観察・整理していたという、今考えると非常にマニアックな方だった。。。(^^;;

ウミウシはその後、大ブームになったので、古瀬さんには先見の明があったと言えるけど、果たしてヤドカリはどうかな。。。?(笑)

屋久島を北限とするヤドカリたち

黒潮は台湾と与那国島の間から沖縄本島や奄美大島などを避けるように東シナ海を北上し、屋久島付近で大きく曲がり日本の太平洋側に流れ込む。

この流れのおかげで南からカラフルな亜熱帯域の生き物が屋久島に流れてくる一方で、この黒潮が障壁となって逆に屋久島以南では見られないような温帯系の魚も見られるのが屋久島の海の大きな特徴だ。

そして共に幼魚ではなく、成魚が見られ繁殖もしているのだから、初めて屋久島の海に入ったダイバーは「ここはどこ?」と混乱してしまうのも無理はない。(笑)

ヤドカリも当然、亜熱帯種と温帯種が混じる混沌とした状況が見られる。

今回は屋久島以北では見られないヤドカリを紹介したい。

つまり、屋久島を北限とするヤドカリたちだ。

【ティーダゼブラヤドカリ】

ティーダゼブラヤドカリ

2007年4月に新種記載された美しい南方系のヤドカリで、 ティーダは琉球の言葉で「太陽」を意味するそうで、鮮やかなオレンジ色の体色からこの名がつけられた。

今のところ琉球列島以北からの記録はないようなので、屋久島のこの記録が北限になるのだと思う。

ただ、屋久島でもやっぱり数は少なく、過去に数個体しか見た事がないので、普通種とは言えないかもしれない。。。

【ヒルギノボリヨコバサミ】

ヒルギノボリヨコバサミ

上のティーダゼブラヤドカリが琉球列島以北では見られないヤドカリであるのに対し、このヒルギノボリヨコバサミはもっともっと南の八重山諸島のみで見られるヤドカリなのだが、屋久島ではある一定の環境であれば成体もかなりの数が見られる普通種だ。

この和名からも分かるように八重山諸島などではマングローブ域で見られるヤドカリなのだが、屋久島にはまともなマングローブ環境はほぼないと言っていい。

ではどこにいるのかというと、川の普通の河口だ。

泥環境であることは同じなのだが、横からは生活排水が入り込むようなやや汚い川の河口に生息している。

多分、黒潮を通して八重山諸島方面から頻繁に運ばれ、こうした場所に仕方なく適応するのだろう。。。

屋久島の海は黒潮の流れからいって、沖縄本島付近や奄美諸島などとは交流がないが、西表島や与那国島など八重山諸島からは黒潮を通して生き物が流れてくる。

なので、沖縄本島や奄美大島ではまだ記録がないような生物が、突然、屋久島に現れ、そのまま環境に適応して世代を重ねる例は多い。

これも屋久島の海の大きな特徴だと思う。

屋久島から記載された新種のヤドカリ

5月23日、いよいよ誠文堂新光社より「ヤドカリ(ネイチャーウォッチングガイドブック)」が出版される。

著者は伊豆大島ダイビングセンターの有馬くんだ。

僕も有馬くんからのリクエスト・リストに従って写真を何枚か提供しているのだが、もはや何枚提供しているのかよく覚えていない。。。(^^;;

彼からのリクエストに従って写真を用意したので、「このヤドカリだけはぜひ屋久島の写真を使って欲しいなぁ〜」と思いつつも、リクエストされなかった種類もある。

それは2009年に新種として記載された「スミレヒメホンヤドカリ」だ。

【スミレヒメホンヤドカリ】

2009年に新種として記載されたスミレヒメホンヤドカリ(Pagurixus purpureus)は、写真を見れば分かるようにとても綺麗な色彩のヤドカリなので、かなり前からダイバーの間ではよく知られていた種類だ。

屋久島産スミレヒメホンヤドカリ
屋久島産スミレヒメホンヤドカリ

国内では伊豆大島、四国、そして屋久島など日本の暖温帯域で広く見られる種類で、屋久島では特に珍しいヤドカリではなく、そこら中で見られる普通種だ。

なかでもゼロ戦と呼ばれるポイントでは狭い範囲に数百個体がギッシリひしめき合って生活している。

今のところ琉球列島からの記録はなく、主に日本の太平洋沿岸で見られることから、国内では黒潮の流域で見られるヤドカリだと考えて良いかと思う。

今のところ屋久島が国内の南限生息地になる。

新種を記載するためには当然、標本の採取が必要になるのだが、伊豆大島や四国、屋久島などから標本が集まった。

そんな中から、このスミレヒメホンヤドカリのホロタイプに選ばれたのが、屋久島で採取された個体だった。

新種を記載する際、いくつかある標本のうちその種の基準となる代表的な標本を1個体だけ指定する決まりがあり、その標本をホロタイプという。

つまり極端な言い方をすると、スミレヒメホンヤドカリ(Pagurixus purpureus)というヤドカリは、この屋久島の標本に対して与えられた名前なのだ。

これはどういう事かというと、今後、このスミレヒメホンヤドカリに2つの種類が混じっている事が分かった場合などでも、少なくともこの屋久島の標本だけはスミレヒメホンヤドカリ(Pagurixus purpureus)であることは揺るぎなく、この標本を基準として他の似た種類と比較・検討がされることになるのだ。

分かりやすく言うと、仮に将来、伊豆大島で見られるものと屋久島で見られるものが別種だと分かった際には、屋久島のものがスミレヒメホンヤドカリになり、伊豆大島のものは別種になるわけだ。

なぜ屋久島の標本がホロタイプに指定されたのか研究者の方に聞いたところ、屋久島の標本は他地域から得られた標本と比べて、形態的に種の特徴が容易に分かる大型のオスであったからだそうだ。

つまり、屋久島の標本だけが極端に大きかったのだそうだ。

黒潮流域の生き物の多くはその上流に行けばいくほど、体が大きくなる傾向がある。

スミレヒメホンヤドカリの屋久島の標本は、こちらでは特別に大きな個体ではなかった事からも、スミレヒメホンヤドカリでもその傾向があるのかもしれない。

屋久島ならではのヤドカリ

【ヒメホンヤドカリ属の一種】

伊豆大島ダイビングセンターの有馬くんが立ち上げた全国のダイビングガイドでつくる「INVESTIGATE HERMIT CLUB」なるヤドカリの情報交換組織があるのだが、ここで集まった情報の集大成として、今年5月に誠文堂書店からヤドカリの図鑑が出版される。

僕もここに所属しているので何枚か写真を提供しているのだが、その準備でここ数日は昔撮ったヤドカリの画像をひっくり返して、有馬くんからリクエストのあった種類を探しまくっていた。

図鑑の出版で、もしかしたら来る(かもしれない)ヤドカリブームに先駆けて(笑)、しばらくヤドカリを通して屋久島の海を語ってみようかと思う。

ヒメホンヤドカリ属の一種
ヒメホンヤドカリ属の一種

有馬くんからリクエストをもらっていた種類のうち、今のところ屋久島からの記録しかないヤドカリが一種いる。

綺麗なピンク色のヤドカリで未記載種(=新種)である可能性があるヤドカリだ。

ちょっと研究者が調べた感じではヒメホンヤドカリ属に属する種類のようで、屋久島では-25m付近の砂地に落ちているゼロ戦ではないかとされる飛行機のフレーム内部でのみ見られている。

局所的に見られるヤドカリではあるんだけど、その数はかなり多く、このゼロ戦では決して珍しい種類ではない。

同所には黒潮を通して流れ着いたと思われる屋久島の他の場所ではあまり見かけないような魚や甲殻類がよく着く。

多分、このヤドカリもそういう種類のもので、たまたまこのゼロ戦のフレーム内が彼らの好む生息環境にマッチしていたのかもしれない。

もう何年もこのヤドカリがいなくなる事はないので、多分、定期的に流れてきてはここに着くのだろう。

晩秋から春にかけてよく見られる抱卵中のメス
晩秋から春にかけてよく見られる抱卵中のメス

このヤドカリはゼロ戦フレーム内の奥深くに生息している。

上から見れば目で見る事はできるのだが、写真を撮るには一度フレームの外に貝殻ごと移動しなければ撮れない。

手を伸ばせば届くところにはいるんだけど、これがなかなか難しい。。。というか怖い!

というのも、ここには常に1-2匹のドクウツボが棲んでいて、しかもかなり獰猛でダイバーに噛みついてくるのだ!

実際、過去に何人かのダイバーが犠牲になっている。。。(・・;)

というわけで、このヤドカリをリクエストされないように、いつもブリーフィングではこのヤドカリには一切触れないのだった。(笑)

ヘビギンポ偏愛 – 外伝(1)

非常にご無沙汰しております!

記事を書くのは昨年の6月以来ですから、1年以上サボってしまった。。。(・・;

あれから日本初記録として標準和名がついたヘビギンポがいるのでご紹介。

ただこの「ヘビギンポ偏愛」シリーズは、1種につき1記事と決めており、現在vol.37まで進んでいるので37種を紹介した事になる。

その標準和名がついたヘビギンポは前に”赤ヒレ(クロマスク属未同定種)”として紹介したヘビギンポなので、今回は「ヘビギンポ偏愛 – 外伝(1)」という事で紹介する。

【モミジヘビギンポ】

前にヘビギンポ偏愛(37)で“赤ヒレ(クロマスク属未同定種)”として紹介したヘビギンポに今年5月、新しい標準和名がついた。

その名も「モミジヘビギンポ」だ。

モミジヘビギンポの産卵(手前がオス、奥はメス)
モミジヘビギンポの産卵(手前がオス、奥はメス)

このヘビギンポはずいぶん前から一部のダイバーの間ではよく知られていて、「赤ヒレ」というニックネームで呼んでいたヘビギンポ。

僕が把握する限りでは石垣島、沖縄本島などで割と普通に見られているようで、もしかしたら良く似ているヨゴレヘビギンポなどと混同しているダイバーも多いのではないかと思う。

今回、沖永良部島と沖縄本島の水深0.5〜1 mから8個体が採集され、それを元に標準和名が提唱された。

ちなみに新種ではなく、これまでフィリピンとマリアナ諸島のみに分布すると考えられていたHelcogramma aquilaだと同定されたので日本初記録ということになる。

これはこれまでの北限を1000 km以上更新したことになるみたい。

このヘビギンポはこれまで色の抜けたアルコール浸けの標本しか知られておらず、生時の体色が不明だった。しかしダイバーの写真などから、オスの婚姻色やメスの体色も明らかになった。

ダイバーの撮る写真はしっかり魚類分類学の役に立っているのだ。(^^)

写真提供:
沖縄ダイビングセンター 片野猛氏

参考:
ヘビギンポノデータベース ヘビベース

ヘビギンポ偏愛(37)

[幻のヘビギンポ]

僕がヘビギンポに興味を持つきっかけとなったヘビギンポがいる。

12〜13年くらい前になるだろうか。。。沖縄本島や久米島で見つかった第1背ビレが異常に突き出たカッコいいヘビギンポの存在を知ってからだ。
そのヘビギンポはホムラハゼ属の一種を彷彿させるイケてるヘビギンポで、これに惚れ込んでしまったのだ。

しかも、見つかっている個体数も極端に少なく、僕の知る限り、沖縄本島で高田さん(Trypterygiidae gen. & sp.1)や足立さん(ヘビギンポ科の未記載属未記載種ヘビギンポ科の未記載属未記載種)が撮った写真と久米島の川本さんが撮った写真くらいしか知らない。

まさに「幻のヘビギンポ」状態である事がさらにその魅力を僕の中で増していった。。。

-40m前後から見られるというヘビギンポにしてはこれまた異常に深い水深に生息している事がさらにその魅力度を増している事は言うまでもない。。。(笑)

【リーゼントヘビ】

今年のGWを過ぎた頃、僕が管理する「ヘビベース」にその「幻のヘビギンポ」の写真が突然送られてきた!

「ヘビベース」ではこのヘビギンポの写真が欲しくて欲しくてたまらなかったのだが、この12年間、なかなか投稿されてこなかった。。。

それが突然、送られてきたのだ。

通称・リーゼントヘビ
通称・リーゼントヘビ

その後、Facebookで同じく沖縄本島の広部さんがメチャクチャ浅い水深(-28m)で撮ったこのヘビギンポの写真をアップし、どうも恩納村周辺では実はよく見られるのでは?という疑いが。。。(^_^;)

これを踏まえて、沖縄本島でダイビングサービスを営む友人のてつ!さんが生息状況を調べてくれた。(^^)

注意してみていくと-30m〜-40mではかなり個体数はいるようで、20m台でもちらほら見られるようだ。

恐るべし。。。ヘビギンポ王国・恩納村。。。

通称・リーゼントヘビ
通称・リーゼントヘビ
幼魚だと思われる子
幼魚だと思われる子

これまで「幻のヘビギンポ」だと思っていたものが、ここ数日でどんどん解明されていく。。。ありがたい!

今まで気づいていなかっただけで、実は普通に沢山いた!という例はヘビギンポに限らず魚には多い。まだまだ面白いヘビギンポが見つかりそうでワクワクする。。。(^^)

でも、できれば僕が屋久島で解明したかったな。。。(-。-) ボソッ

写真提供:
1枚目 YUSUKE氏
2-3枚目 沖縄ダイビングセンター 片野猛氏

参考:
ヘビギンポノデータベース ヘビベース

「環境」と「サイズ」の大切さ

生き物の写真を撮って名前を調べる時、普通は図鑑やwebなどで形や色、そして模様などで種を判断する。

でも、実は意外に大切なのが「環境」と「サイズ」だ。

前から温帯域のダイバーさんたちが撮っていた「オオタマウミヒドラ」と呼んでいる可愛いヒドロ虫の写真を見て、これが撮りたいと思っていたのだが、今年に入ってようやく屋久島でも同じようなヒドロ虫の仲間を見つけた。

ヒドロ虫の仲間
ようやく見つけた!

ハンディサイズの図鑑やwebにある写真などで調べてみると、形などから一見「オオタマウミヒドラ」で間違いないような気がする。。。

しかし、もう少し詳しく「オオタマウミヒドラ」について調べてみると、何と波当たりの強い潮間帯の岩に付着し、高さは2-3cmあり、伸長すると7cmに達するのだそうだ。。。

だとすると、屋久島の子は確実に「オオタマウミヒドラ」じゃない!!

だって、水深-30mにあるクダヤギ類に付着しているし、高さも5-8mm程度のメチャ極小な生き物なのだ。(笑)

さらに調べると「オオタマウミヒドラ」は無数の群体は作らず、10個体以下の小さな群体を作るのだそうだ。

ということは、屋久島の子どころか、温帯域のダイバーさんたちが撮っている写真の多くも、「オオタマウミヒドラ」ではないという事になる。。。

結局、温帯域のヒドロ虫たちの多くは、よくよく聞いてみると必ずエナガトサカに付着するらしく、「ハナヤギウミヒドラ」という種類になるようだ。

大きさも、オオタマウミヒドラよりももっともっと小さいようだ。

ハナヤギウミヒドラ
細いクダヤギの仲間に付着する

写真では「環境」や「大きさ」は分からない。

撮った本人は分かっていても、その写真を見る人には「環境」や「大きさ」の情報は一切分からないので、形や色、そして模様だけで判断するしかない。

実際に見ればスグに分かる事なのだけど、写真ではなかなか難しい。。。

「環境」や「大きさ」といった情報は生き物を観察する上では、ものすごく大切な要素なのだ。

ところで、屋久島のヒドロ虫は結局、何者なのかよく分からない。。。

同じ「ハナヤギウミヒドラ」なのかもしれないけど、上記の事を踏まえると宿主(環境)の違いから別の種類になってしまうかもしれない。

さらに、僕は温帯域のダイバーが撮る「ハナヤギウミヒドラ」の実寸サイズをよく知らない。(笑)

あけまして、おめでとうございます

あけまして、おめでとうございます。

屋久島に店を構えて9年目。。。

今年はようやく念願だった新店舗をOPENさせ、心機一転、新たな気持でスタートし直そうと思っています。

本年もよろしくお願いいたします。

ピグミー(Hippocampus bargabanti)

辰年の今年、ようやくピグミー(Hippocampus bargabanti)にも標準和名がつく動きがあるようです。。。

ヘビギンポ偏愛(36)

[結局は採取しないと分からないのか?]

ダイバーの間ではどういうわけか魚の「採取」はあまり良い印象は持たれていない。

ヘビギンポのように水中では識別が難しい種類は、婚姻色のオスや産卵中のメスを産卵後も追って観察するしかないのだが、それが叶わないとなると採取するしかない。

ただ採取したとしても、その1個体だけの種類(正確には”名前”)が確定されるだけなので、今後水中で識別できるようするのが目的の僕らダイバーにとっては現実的ではない。

では、同一個体の生態写真と標本をセットで取れば良いかというと、そう簡単な話でもなくて、1匹くらいだと依然として水中識別の際に役立つ大きなヒントにはなり難いと思う。

個体によって斑紋や形状などに変異幅があったり、環境によって色彩や模様に違いがあったりするので、水中観察で識別できるようにするという目的のためだったら、何個体も何個体も撮影&採取を繰り返して比較しなければならなくなってくる。。。

結局のところ、行動や生態の水中観察が必須なのだ。

まずは個体識別できるくらいまで徹底的にその種類の社会全体を水中観察して、最低でも「名前は分からないけど、これとこれは別種、これとこれは同種」というレベルまでは持っていく。

その後に1-2匹採取して種類を特定する。

むやみに採取したところで、ほんと僕らダイバーには得るものはない。。。

【ゴマフヘビギンポ】

今年の7月にこんなヘビギンポを見つけた。

誰こいつ?
誰こいつ?

見た目は以前紹介した「ゴマフヘビギンポ近似種」と何ら変わりはないのだけど、体の後半から尾ビレにかけて真っ黒なのだ。

本家・ゴマフヘビギンポの婚姻色は体の後半が黒くなる事を知っていたので、スグにこれがゴマフヘビギンポの婚姻色褪めかけのオスに違いない!!と思い、興奮して鹿児島大学の研究者に電話をした。

ところがちょうど最近、お隣・種子島でもゴマフヘビギンポを見つけて採取し、同じ個体の生態写真も撮ったとの事。。。

ちょっとガッカリしつつも、その生態写真を見せてもらったところ、僕が屋久島で見つけた体の後半が黒いヘビギンポとは似ても似つかない!!

オマケに僕が見つけたヘビギンポについて聞いてみると、「あ〜これはソメワケヘビギンポじゃないですかねぇ。。。」と冷たい一言。(^^;)

種子島で採取されたゴマフヘビギンポ
種子島で採取されたゴマフヘビギンポ

ま〜採取されているわけだから、間違いなく上の写真は本家・ゴマフヘビギンポなのだろうけど、じゃ〜僕の撮った子は誰?(ーー;)

やっぱり採取してみないと、納得できないのであった。

そして依然として本家「ゴマフヘビギンポ」がどんな魚なのか、分からないままだ。。。

ヘビギンポ偏愛(35)

[ヘビギンポ偏愛、一時復活]

2年前まで、この場を借りて図鑑にものっていないような国産のヘビギンポを毎月紹介させてもらっていた。

33種紹介したところでネタが尽き、一旦、連載を打ち切ったのだが、その後いくつか解明したヘビギンポがいるので、また紹介したい。

「ヘビギンポ偏愛」一時復活!(^^)

【ソメワケヘビギンポ】

ヘビギンポにはお互いがよく似ているため、混同されている種類があまりにも多い。

オスが求愛時に見せる”婚姻色”にならないと、種類が分からなかったりするから厄介だ。

代表的なのがゴマフヘビギンポ、ソメワケヘビギンポ、ゴマフヘビギンポ近似種の3種だ。

この3種は通常時の体色からはどこからどう見ても同じ種類にしか見えず、識別はかなり難しい。

ゴマフヘビギンポ近似種だけは未記載種なのにも関わらず、南日本の太平洋沿岸で普通に見られるためヘビベースには写真も沢山集まってくる。
しかし、あとの2種がどうしても分からない。。。

沖縄諸島から送られてくるこの手の仲間の写真の中に、胴体の真ん中から微妙に2色(赤と緑)に染め分けられている子がたまに見られ、これがソメワケヘビギンポなのかな。。。?と昔から感じてはいた。

しかし、その後、沖縄本島で撮られた以下の写真を見て確信した。

これがソメワケヘビギンポだ!!

ソメワケヘビギンポの婚姻色褪めかけ
ソメワケヘビギンポの婚姻色褪めかけ

その写真は明確に体の前と後で染分けていて、顎のあたりも黒く染まっていた。

もしかしたら、バリバリの婚姻色では体の後半の緑色が真っ黒くなり、顔の下ももっと黒くなるのだとは思うけど、ここまでクッキリ染め分けていれば、ゴマフヘビギンポ近似種との違いは一目瞭然だ。

で、多分、通常時の体色はこんな感じなのだろう。。。

ソメワケヘビギンポの通常体色
ソメワケヘビギンポの通常体色

この状態だとゴマフヘビギンポ近似種の通常体色のオスとかなり似ている。。。(・_・;

早く屋久島でもソメワケヘビギンポらしいソメワケヘビギンポを見てみたい。。。

ヘビギンポ偏愛はまだまだ続く。(笑)

写真提供:沖縄ダイビングセンター 片野 猛(てつ!)氏
写真提供:潜水案内 津波古健氏
参考:ヘビギンポのデータベース ヘビベース!

環境倫理シンポジウム「自然を愛する」とはどういうことか”のご案内

屋久島は北太平洋最大のアカウミガメの産卵地だと言われている。

毎年5月上旬から7月下旬にかけて屋久島の各砂浜でのべ1000頭を超えるアカウミガメの産卵が観察される。

屋久島ではこのアカウミガメ(及びアオウミガメ)の産卵行動とその卵は人間の手によって”特別に”手厚く保護され、守られている。

今年は7月下旬に近海を通過した台風6号により、島内各所の砂浜が浸食され、一緒にウミガメの卵が大流出した。

この時も即座に流失情報が流され、うみがめ館、永田ウミガメ連絡協議会、環境省、屋久島町役場、屋久島観光協会から30名の人が集まり、その流出した卵の人工的な回収作業が行われた。

そう、ウミガメだけは特別なのだ。

他の海の生き物はともかく、ウミガメだけは多くの人間、多くの機関が関心を持ち、”特別に”手厚く保護されている。

山への関心が圧倒的に高く、海への関心が比較的薄い屋久島にあっても、ウミガメだけは特別な存在らしい。。。(^^;)

環境倫理シンポジウム「自然を愛する」とはどういうことか<

【日時】 2011年9月17日(土) 13:00〜18:00
【場所】 大阪府立大学・学術交流会館 定員200名 入場無料
【講師】 森岡正博 瀬戸口明久 福永真弓

【概要】
自然や生命に関する議論は、感情論に流されやすく、意見対立の原因となります。
冷静な視点で、「自然を愛する」ということを考えてみませんか。

このような話題が出たらどう答えますか。
・シカ、サルは害獣として駆除すべきか、保護されるべきか。
・人も動物もいのちの価値は同じではないか。
・クジラは食べよう、希少なジュゴンは守ろう!
・人の役に立たないゴキブリやカは根絶させよう!

【申込み・問合せ】
当日に会場に来ていただければ自由に参加できます。
座席や当日に無料配布する資料は数に限りがありますので、座席と資料を確実に確保したい方は、事前に下記Eメール宛で参加者の名前をお知らせください。
先着200名まで確保します。問い合わせは、Eメールまたは電話でどうぞ。
Eメール karin@nature.or.jp
電話 大阪自然環境保全協会 06-6242-8720

【詳細情報:PDF

なお、参加できないという方も含め、事前アンケートにお答えいただくとこの企画に参加することができ、アンケートの回答をまとめた冊子を無料で郵送させていただきますので、本文末のアンケートにもぜひお答えください、(回答期限9月5日)との事。

この事前アンケートがとても考えさせられるものだったので、ここで紹介したい。

(質問1)
「貴重な自然」を守ろう、という言い方がありますが、このような場合あなたはどのような自然をイメージしますか。その理由も含めてお答えください。

(質問2)
「貴重な自然」ではなく「ありふれた自然」であったとしても人は自然を愛する場合があります。あなたにとって愛する自然、もしくは大切に思う自然とはどのようなものでしょうか。これは質問1で答える「貴重な自然」と同じものでもかまいません。その理由(体験談など)も含めてお答えください。

(質問3)
自然保護の現場では、外来種の駆除など動物の殺処分がしばしば求められています。しかし、実験動物などと異なって、どのような生物・方法・状況なら殺してよいのかに関する統一的な倫理規定がありません。自然保護という理由が掲げられる場合、私たちはどのような生物・方法・状況に対して殺処分を認めるべきでしょうか。

(質問4)
自然の中には、人にとって不要であると一般に考えられている生物がいます。例えば、ゴキブリ、カ、ハエ、強害雑草、病原菌などがそうです。もしもこれら生物が絶滅の危機に瀕している場合、我々はこれを保護すべきでしょうか。それとも絶滅にまかせるべきでしょうか。

アンケートのダウンロードはこちら

屋久島のアカウミガメ
屋久島のアカウミガメ

Midsummer greetings.

Midsummer greetings. – 暑中お見舞い申し上げます。

Midsummer greetings. - 暑中お見舞い申し上げます。

繁殖行動の違い

現在、屋久島ではジョーフィッシュの繁殖行動(産卵&孵化)がピークを迎えている。

毎年5-7月が彼らの繁殖期で、産卵は日中に行われるが、孵化は決まって早朝(日の出前)だ。

しかし聞くところによると、石垣のリングアイやバリのブルージョーは夜、ハッチアウトするらしい。。。(ちなみにブルージョーは産卵も夜)
また、ゴールドスペックは屋久島のジョー(種は未同定)と同様に早朝のハッチアウトだという。

考えてみると、ジョーフィッシュに限らず、例えばスズメダイの仲間でも産卵や孵化の時間には種類によってバラつきがあって、例えば早朝に産卵する種類もあれば、日中に産卵する種類も当然いる。

スグには思い浮かばないのだが日没前後の時間に産卵するスズメダイもいるかもしれない。

孵化も同様に時間にバラつきがある。

また、環境によっても産卵や孵化の時間は変わる可能性がある。。

つまり同じ種類でも地域によって産卵&孵化の時間はずれてくるかもしれない。

ダイビングを始めたばかりの頃、ある本で日没直前に産卵する魚や夜ハッチアウトする魚について、「捕食者が少なく、目立たない時間帯に産卵や孵化を行う事によって成功率を高める。。。」云々との解説を読んだことがあるのだが、それならばすべての魚が同じ時間帯に産卵や孵化を行なうはず。

魚類の繁殖行動にも多様性と進化がある。

それなりに理由があるのだろうな。。。とは思うのだけど、その理由を自分なりに考えてみてもさっぱり分からない。

なぜなら僕は魚ではないから。

主に日中、産卵を行っている屋久島のコガネスズメダイ
主に日中、産卵を行っている屋久島のコガネスズメダイ
主に早朝、産卵を行っている屋久島のヒレナガスズメダイ
主に早朝、産卵を行っている屋久島のヒレナガスズメダイ

野生動物の写真は「運」がすべて?

写真にもいろいろな分野があるけど、どれも基本的にはセンス(感性)や技術が作品の質を大きく左右する。

しかし野生動物の写真はセンスや技術ではなく、日頃の観察力とフィールドに通い続ける努力だ!。。。と今でも信じているのだけど(笑)、ぶっちゃけ運と環境なのかなぁ。。。と思わなくもない。

さらに最近はこう思い始めている。。。

「もしかして、運だけなのでは。。。?(・・;)」

確かに仕事が現地ガイドで毎日のように潜っていると、とっておきのシーンにはよく出会う。しかしガイド中は当然、カメラなど持っていないわけで、ただただゲストが何枚もシャッターを切る横で指を咥えて見ている他ない。。。

また現地に住んでいると毎日のように同じポイントに潜れるので、継続観察もしやすく個体識別も容易だ。こうなるとその生き物の生態や社会行動も掴みやすい。しかし、ある生き物の、ある行動が、まさにこの日、この時間がベスト!と知っていても、必ずしもその時に海に入れるとは限らない。大きく時化る事もあるし、急なガイドの予約が入るかもしれない。

ある生き物の行動を狙って1人で潜って一応満足する写真が撮れたとしても、次にゲストを連れてエントリーするともっと凄いことになっているなんて事はざらにある。そして次の日にまた1人で潜ってみると、すっかりその行動が静まり返っちゃっていたり、大きく海が時化てそもそも海に入れなかったりする事も多い。

意外に現地にても、ゲストはバンバン撮っているのに、自分自身はいつまでたっても撮れないものも多いのだ。特に夏の繁忙期はそうだ。。。

不確実な要素の多い自然、そしてそこに棲む野生動物という被写体はほんと難しい。だからこそやりがいがあって面白いのだけど。。。

これからも毎日のようにフィールドに通い、粘り強く観察を続けることで、いつの日か「運」を味方にしたいなぁ。。。

オス同士の激しい喧嘩!
オス同士の激しい喧嘩!

屋久島が温帯化?(・_・;

今年はなかなか水温が上がらず、焦りを感じている。

GWも目前に迫っているというのに、水温は連日の19℃台!

屋久島に来て約10年になるが、4-5月でここまで低い水温は初めてだ。(例年、この時期の屋久島の海は22-24℃くらい)

それが関係しているのかどうか分からないが、今年は温帯種のキタマクラの幼魚(通称・豆マクラ)が爆発的によく見られている。

もともと、屋久島ではキタマクラ自体が珍しい魚だったので、かなり驚いている。。。(・_・;

今年の夏〜秋はキタマクラだらけになりそうで怖い。。。(笑)

増えつつある豆マクラ
増えつつある豆マクラ

今年に限らず、この時期特有の生き物としてあげたいのが、寄生性カイアシ類やアミなどの微小な甲殻類。この時期の「風物詩」といえるものは沢山あるのだけど、これらはまさに4-5月の風物詩だ。

この時期の水底は無数のアミ類で覆われ、透明度を悪くするくらいになる。
しかしこの時期を経ないと、夏の魚影の濃い時期は訪れないわけで(アミ類は魚たちの重要な栄養源)、本当は歓迎しなければならない事。。。

そんな中にちょっと綺麗で可愛い子も混じっていたりする。

それがヒメオオメアミだ。

屋久島には黄色い子や茶色い子、虹色の子などが見られるのだが、これらも数十匹の群れをつくり、水底付近でホバーリングしている。

ヒメオオメアミが爆発中。。。
ヒメオオメアミが爆発中。。。

また、この時期は多くの魚に寄生虫が着いているのをみかけるのだが、これも風物詩。

特に目立つのがトラギス類の目玉につくメダマイカリムシという寄生性カイアシ類だ。

一見、綺麗な飾りのようにも見え、卵(電話のコードみたいなやつ)の色合いもお洒落なものがあったりする。。。(笑)

サンゴトラギスの目玉に寄生するメダマイカリムシ
サンゴトラギスの目玉に寄生するメダマイカリムシ

これらの生き物は気持ち悪い感じがして、どちらかというと避けられてしまう生き物たちなのだが、高水温期(つまりシーズン)が確実に近づいている事を感じさせる重要な指標でもあるのだ。

春の風物詩 – 季節を感じることができる海

僕は季節を感じられる海が好きだ。

1年中、繁殖行動を行っているような魚が多く見られる南の島もそれはそれで面白いとは思うのだが、季節を通して潜り込むホームグラウンドの海はやはり季節感が欲しい。

自分のお店を構えるフィールドを選ぶ際に、一番に考えたのがこの「季節感のある海」だった。

1年のうちで最もこの「季節感」を感じることができる季節は、やはり春から初夏にかけての海だと思う。この時期の海に「季節感」を感じやすいのは、その季節の指標となるような生き物の出現や行動が多いからだ。個人的には、この時期の海こそ1年のうちで最も面白いと感じる。

また、それまでの冷たく、辛い海から水温が徐々に上がり始めるこの季節は、温かく、気持ちのいい海の訪れを予感させ、自然に胸が躍る。

こうした季節の指標となる生き物の出現や行動、そしてその時期は、地域によってかなり違いがあるのだが、日本の太平洋側の様々な海域で春の指標となっているもののひとつに「アマミスズメダイの幼魚」がある。

屋久島でも例外にもれず、3月くらいになるとアマミスズメダイの幼魚があちらこちらで見られ始める。

春の風物詩の代表格・アマミスズメダイ(yg)
春の風物詩の代表格・アマミスズメダイ(yg)

アマミスズメダイの繁殖行動は年末ぐらいから見られ、屋久島では冬季に産卵を行う数少ないスズメダイのひとつだ。

多くのスズメダイでは産卵が観察され始めると、あまり時を置かずにスグにその幼魚が見られ始めるのだが、アマミスズメダイの場合はいつもワンテンポ遅れて幼魚が見られ始める傾向がある。それがちょうど春の今の時期になるわけだ。屋久島ではそれは桜の季節と重なる。

と、言いながら。。。

今年は3月25日現在、ホームグラウンドの一湊タンク下では1匹しかアマミスズメダイの幼魚は見かけていない。

里ではすでに満開の桜が山々を彩っているというのに。。。

宇宙を漂う有機生命体型宇宙船たちの多様性

屋久島を含む薩南・トカラの海は国内でも指折りの透明度が良い海域だと思う。

それは黒潮のおかげであり、屋久島の場合、黒潮が接岸している毎年7月から11月くらいまでの間は湾内でも30m以上の透明の良い日が続く。

しかし真水のような素晴らしい透明度を誇る黒潮もその両縁には浮遊物がたまるようで、この黒潮の「縁」が寄ったり離れたりを繰り返す黒潮接岸前の3月から6月くらいの間は、一晩にして急に海の中がプランクトンや浮遊物だらけになり、ありえないくらい濁る事がある。

短いときで2-3日、長いときで1週間以上、この透明度が悪く、浮遊物だらけの海になってしまう事が度々あるのだが、これまではこうした期間中はまとわり着くプランクトン類を払い除けながらひたすら我慢の日々で、早くこの「黒潮の縁」状態から脱することを祈り続けているだけだった。

ところが昨年あたりから急にこのプランクトン類に興味が湧いてきた。。。

それは昨年が国際生物多様性年であった事が大きく影響している。(笑)

そのほとんどが食物ピラミッドの下位に位置するプランクトン類は最も種の多様性に満ちており、生物多様性を実感し、その重要性を知るには最も良い生き物たちなのでは?と思ったのだ。

季節や風向き、黒潮の経路などによって流れてくるプランクトン組成はがらりと変わり、これに合わせてその年の捕食者である魚の増減や種組成にも影響しているのでは?などと考え始めるとさらに興味は膨らむ。

まぁ、そのような小難しい興味はさておき(^^;)、実際に意識してこの浮遊物群を見ていくと意外にもかなり面白いので驚いた。

様々なプランクトンたちの変わった形体や生活史はメチャ新鮮で、種類も多いのでコレクター的な欲求も満たしてくれる上に、それが何者なのかまったく分からない事が逆に面白かったりする。

写真の被写体としても最高で、人間よりも遥かに文明の進んだ星から来た宇宙船みたいで何しろカッコいい。

バックを黒抜きにすると本当に宇宙を漂う飛行物体みたいだし、浮遊物の多い時にありがちなハレーションの粒々も星や惑星のようでいい感じ。(笑)

おかしなもので、このプランクトン類に興味を持った途端に、これまではひたすら過ぎ去るのをじっと我慢していただけの浮遊物期間が今や楽しみに変わり、「黒潮の縁」状態の海が待ち遠しかったりする。

今年もそろそろ浮遊物が流れてくる季節が到来しようとしている。

カメガイ型宇宙船タイプA
カメガイ型宇宙船タイプA
カメガイ型宇宙船タイプB
カメガイ型宇宙船タイプB
イカ型宇宙船
イカ型宇宙船
宇宙船に乗り込む宇宙人たち
宇宙船に乗り込む宇宙人たち
触手を持つ宇宙船・もはや有機生命体
触手を持つ宇宙船・もはや有機生命体

僕の好きな生き物。。。?

「しげるさんはどんな生き物が好きなんですか?」

ガイドをしているとよくゲストから聞かれる質問だ。

僕は基本的には特にこれが好きというのがないので、「屋久島で見られる生き物なら何でも好き」ととりあえず答える。

「ヘビベース」というヘビギンポのデータベース・サイトを運営しているのでヘビギンポが好きだと思われがちなのだが特にそういうわけでもないし、毎日のブログが魚に関する話題ばかりでウミウシに関する話題が少ないからといって、お魚好き&ウミウシ嫌いというわけでもない。

好きな生き物はコロコロと変わっていき、さらにその傾向も一貫したものはまったくないため、その時々で興味の対象は極端に違う。

水温の下がる冬季の屋久島は来島するダイバーも少なく、毎日1人で潜る日々が続く。

冬の屋久島の海は黒潮から外れるため、目新しい生き物が流れてくることはあまりなく、この時期ならではの”一般的なダイバーが興味を持ちそうな”生き物や現象は特にない。。。

主に冬季の海でだけ見られる”一般的なダイバーが興味を持つかどうかは怪しい”生き物や現象ならもちろんある。(笑)

例えばワレカラの仲間なんかがそうだ。

ワレカラ類はどちらかというと冷温帯域で見られる生物で屋久島などではとても少ない。しかし水温が最も下がる1-2月になるとクロガヤの上などでうごめく彼らが見られるようになる。

昔からワレカラの存在は知っていても、多くのダイバー同様に僕も特に興味を持つことはなかったのだが、ある日たまたまファインダーを通して見たワレカラのメスがお腹の保育囊で卵を抱いていた!

その途端、突然ワレカラに興味が湧いてきた。繁殖方法を調べてみるとなんと一部の種類では孵化後も母親が子育てをするらしい。。。!

次の日もファインダーを通して覗いてみると、ラッキーなことに今度はその子育て中のメスに出会った。実際に胸元に幼体をたくさん着けて子育てする母親を見たら、さらに興味が増したことはいうまでもない。

メスの胸部にしがみつく子供たち
メスの胸部にしがみつく子供たち

ワレカラの子供は多くの甲殻類のような幼生期を経ずに、孵化後、成体と同じ形のまま保育囊から這いずり出てくるらしい。。。

そして母親の胸部付近にしがみつき、しばらくは母親の保護下で過ごす。さらに母親の体から離れた後も1週間くらいは母親の周囲に留まって、他の生物が近づくとまた母親の体の上に戻るなんて事を繰り返すという。

これではパパにはまったくなつかず、ママ〜ママ〜とうるさいうちの息子と同じではないか!(・_・;

でも、可愛すぎるっ!

こうなると興味はどんどん湧いてくる。。。これまでは気持ち悪いとしか思えなかった数mmサイズのワレカラの子供たちさえも、愛おしく感じたりするくらいに。。。(笑)

母親の元を離れた子供たち
母親の元を離れた子供たち

今までは強い興味を持つこともないだろう。。。と思っていた生き物に突然興味を持つ。

きっかけはこんなものだろう。

その生き物に興味を持つ”ツボ”というか”傾向”みたいなものが僕にあるとしたら、その対象というのは魚やウミウシ、甲殻類といった「種類」にあるのではなくて、「行動」や「生態」といったものが興味の基準になっているような気がする。

まったく動かないウミウシが1匹佇んでいるのを見つけてもそれほど強い興味は湧かないのだが、そのウミウシが産卵していたり、交接していたり、捕食していたり、いつもと違う場所で見つけたりすれば途端に興味が湧く。

多分、「○○が好き」というのはなくて、○○が「○○をしているのが好き」なのだと思う。

謹賀新年

あけましておめでとうございます!

かなりサボってしまいました。。。(^^;)
久し振りの更新です。

今年はできる限り、継続して書けるように頑張ってみます!
(毎年、1月はそう思うのですが。。。)

今年もよろしくお願いします。

謹賀新年

生物多様性 ─ 多ければ多いほどいい!ってワケじゃない(その2)

引っ張ります。。。「生物多様性」ネタ。(笑)

だって、考えれば考えるほど変な言葉なんだもん。。。「生物多様性」という言葉。。。

前回は「生物多様性」というけど、「多ければ多いほど良いというものなのだろうか?」として、空間的なスケールや時間的なスケールが違えば生物が多様であることが必ずしも良くない場合もありうるから注意!という話をした。今回は空間的なスケールや時間的なスケールなどはまったく関係なく、多様では絶対に困る例を挙げてみたい。

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少し前に屋久島のアユの話をしたのを覚えているだろうか?
これ⇒アユが教えてくれた「遺伝的多様性」の重要性

産卵中の屋久島産アユ

島嶼の生き物は閉鎖された空間で独自の進化を遂げる一方で、遺伝的多様性が低くなっていく例が多い。

屋久島のアユもまさにその好例だ。

アユは孵化後、しばらくはその川の河口周辺に留まり、春には同じ川を遡上する。さらに屋久島は過去に内地の河川のように琵琶湖産のアユが放流されることなく今日まできた。

そのため、種類としては内地のアユと同種とされているけど、遺伝子レベルで細かく見ていくと特異な地域集団になりつつあるようだ。それはまさにリュウキュウアユのように、新たな種が誕生する長い進化の過程の途中なのかもしれない。

また同時に、分化が進むとその血はどんどん濃くなっていく。血が濃くなっていくという事は、個体ごとの個性が失われていく事を意味する。その地域集団がみんな同じ顔を持ち、みんな同じ性質を持つのだ。

実際、屋久島のアユはこの個性を形作る遺伝子の多様性が内地のアユに比べて乏しいようだ。遺伝的多様性が低いと、ちょっとした事が原因で絶滅する危険性があったりする。

屋久島のアユは遺伝的多様性が低い

だからと言って、この地域個体群の絶滅を防ぐために内地の遺伝子的多様性の高いアユたちを頻繁に放流し、遺伝的多様性を常に高めるという施策はありえない。

というか、そもそも、それでは「屋久島のアユ」を守った事にはならないのは明白だ。

隔離された島だからどうしても遺伝的多様性は低くなる。

でも、だからこそ価値があるのであって、遺伝的多様性が低いまま何とか保全したいものだし、そうしなければならないのだ。言い方を変えると多様化を阻止する必要があるのだ。

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また、これと関連してもうひとつ。。。

屋久島の河川は魚の種類が少ない。これは屋久島の川が短い距離を一気に下る急流であるため、魚のエサとなるプランクトンの量が少なく、川が綺麗過ぎるからだと言われている。
つまり種の多様性も乏しい川なのだ。

これも多様性を増すために、本来はいなかったヤマメやイワナの類(国内外来種)を一斉放流して、多様性を増す事が良いことだとは誰も思わないだろう。

魚の種類が少ない状態が本来の屋久島の河川の自然の状態であり、これを維持することがこの島の生態系の維持にも繋がる。

屋久島の川は種の多様性も低い

やはり多様性が豊かである事が必ずしも良いとは限らない。考えれば考えるほど変な言葉なのだ。。。「生物多様性」という言葉は。。。国連や環境省はこの言葉を市民に周知させる事でいったい、何を目指し、何をしたいのだろうか?

よく分からない。。。

確実に言葉の運用とその周知のさせ方(啓蒙の仕方)に問題があるような気がしてならない。

生物多様性 ─ 多ければ多いほどいい!ってワケじゃない

国際生物多様性年に入って、様々な環境NGOや環境教育団体、各企業などで一般市民向けに「生物多様性とはなんぞや?」という事で、この「生物多様性」という言葉を分かりやすく説明しようという試みが行われている。

1992年の「生物の多様性に関する条約」で採用された定義「すべての生物の間の変異性をいうものとし、種内の多様性、種間の多様性及び生態系の多様性を含む」を踏まえて、概ね次のような感じで生物多様性が説明される事が多いのではないだろうか?

「様々な“環境(生態系)”で、様々な“種類(種)”の生き物が、様々な“個性(遺伝子)”を持ち生きていて、みんなつながりあって地球という生命を維持している状態」

だけど、ちょっと待て。。。

果たして“種”や“遺伝子”や“生態系”は多ければ多いほど良いというものなのだろうか?

砂泥環境を好むヤツシハゼの仲間が激増(撮影地/屋久島)

僕のホームグラウンドとも言える「一湊タンク下」というポイントは-12mくらいまで下りると真っ白い砂地となる。

そこは僕が屋久島に来た当時(たった7年前)、さらさらの綺麗な砂地だった。

夏の明るい陽を浴びた白い砂地は美しいのだが、そこで見られる生き物はダテハゼ、ミナミダテハゼ、ホシテンスの幼魚、トゲダルマガレイぐらいのもので、全体的に魚影は濃くは無かった。

ところが、この砂地は年々、埃っぽくなっていく。

泥化が進んでいたのだ。

今ではちょっと手を着くとボワァと砂泥が舞い上がり、治まるまではしばらく何も見えなくなる。

しかし、この砂地が砂泥底になってからというもの、ここで見られる魚の種数が極端に増えた。泥地を好む魚が沢山見られるようになってきたのだ。

これまでこの砂地では見られなかったシマオリハゼやクサハゼ、そして様々なヤツシハゼの仲間、カスリハゼなど泥地でしか見られなかったハゼが普通に見られるようになってきたのだ。

新たな生態系が生まれ、一気に種の多様性が増したのだ。

環境が砂地なので、どうしてもハゼばかりになってしまうが、他にも貝類など軟体動物の仲間なども泥地に適した種類に変わりつつあり、その種数も増えているような気がする。最近になってインドアカタチまでもが出現した時にはちょっとビックリした。

この砂地が泥化していく理由は明確には分かっていないのだが、多分、港とこのポイント(外海)を隔てる隣接する防波堤が原因ではないかと考えている。

この堤防は30-40年ぐらい前から長い年月をかけて少しづつ延長されているものだ。

原因はともかくとして、計らずも生物の多様性が増しているわけなのだが、これで本当に良いのだろうか?

この泥は砂地の生物多様性には貢献したが、その砂地から少し上がったところにあるオオハナガタサンゴの群体には負の影響を与えている。

直接サンゴの上に乗っかった泥は、大きな時化が来ない限りそこに居座り、次々とサンゴを死滅させているのだ。

僕が屋久島に来た頃はとても綺麗だったオオハナガタサンゴ群体も今ではかなりの荒廃ぶりだ。

そのサンゴ周辺の魚に関しては今のところ、その魚類層や種の構成に大きな変化はないが、これもオオハナガタサンゴ群体がすべて死滅するような事になればどうなるか分からない。

とうとうアカタチの仲間までもが登場。。。(撮影地/屋久島)

泥環境というものはある意味、人工的な開発による海環境の成れの果て。

こうして考えていくとさすがにこれを良しと思った人はいないだろうが、生物多様性を説明するとき、こうした観点に触れられることなく、ただ「多いことは良いことだ」という流れだけで「生物多様性」を説明しようとすると、勘違いする人が必ず出てくる。

「生物多様性」という考えを周知させるのが目的であるならば、その言葉の字面を説明するのではなく、それが意味するところ、を理解させる事が重要なのではないだろうか?

一部の場所だけで見ると多様性が増しているように見えても、ポイント全体、屋久島全体、日本全体、地球全体というように見る範囲を広くすればするほど全体としては多様性が増しているとは限らない。

また一定の短い期間(今)だけで見ると多様性を増しているように見えても、時間軸をさらに長くして、将来的な状況も加味して見ていくと多様性は決して増しているとは限らないのだ。

当たり前のことのように思うかもしれないが、案外こうした視点が欠如している環境政策や施策は多い。

「生物多様性」の目指すところは、ずばり“バランスの取れた生態系”だ。

字面に引きずられて“多様”である事は良いことだ、多い事は良いことだ、とか思われがちだが、決してそういう意味ではない。

僕は「生物多様性」は結局のところ「“いい感じで”つながりのある生態系が保たれた状態」と同義になると思っている。

この「いい感じ」が重要だ。(笑)

遺伝的多様性の身近な具体例??

前回は屋久島の川で「遺伝的多様性」の意味を感じ取ることができた、という話をした。

今度は僕らダイバーのメイン・フィールドである海の中で「遺伝的多様性」の具体例を探してみた。

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イトヒキベラという魚がいる。腹ビレが長く伸びたベラの仲間だ。

国内では相模湾以南に分布しているとされているが沖縄などでは数は少ないようなので、もろに温帯種だ。

イトヒキベラの典型的なオス(撮影地/屋久島)

屋久島ではごくごく普通に見られるイトヒキベラなのだが、この群れの中に10匹に3-4匹の割合で下のような色彩のイトヒキベラが混じっているのが見られる。

イトヒキベラ属の一種”のオス(撮影地/屋久島)

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このイトヒキベラは屋久島では比較的よく見られる体色で、水中で見る限りでは別の種類にしか見えない。。。

特にメスに求愛するときの体色である”婚姻色”は、僕の知りうる普通のイトヒキベラのそれとはまったく違っていて、僕も屋久島に来た当初は「新種のイトヒキベラだ〜!!」と騒いでいたものだ。

研究者によるとこのイトヒキベラは、イトヒキベラと近縁のゴシキイトヒキベラが交雑してできた子が親と”戻し交雑”をして、これを何世代も繰り返す事でできたイトヒキベラなのでは?との事。

単なる雑種ではなくて何世代も繰り返す浸透性交雑となると、もうこいつはすでに別種なのでは?と思わなくもない。

実際、この魚は今のところ「イトヒキベラ属の一種」と呼ばれ、“イトヒキベラとは別の種類かも?”とされているようだ。

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しかしイトヒキベラに限らず、ベラの仲間は放卵放精の産卵形態をとる。

この産卵方法では簡単に交雑が起きるので、生殖隔離が不完全なまま、その後も引き続き浸透性交雑を繰り返す事になる。

生物学的には種とは「交配可能な個体の集団の集まり」とされている。そうなるとこの「イトヒキベラ属の一種」は、いつまで経ってもイトヒキベラと同種という事になるのではないだろうか?

現に屋久島では、この2パターンのイトヒキベラはまったく同じ場所に群れており、僕が見る限りでは日常的に交雑が行われている。生殖隔離はまったくされていないように見える。

メスの中にも典型的なイトヒキベラのメスとは明らかに体色の違う個体もたまに見られるのだが、こいつも交雑に参加しているし。。。(・・;)

イトヒキベラの典型的なメス(撮影地/屋久島)
“イトヒキベラ属の一種”のメス(撮影地/屋久島)

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屋久島のような北の魚と南の魚が交わる場所では交雑が起こりやすく、雑種が生まれやすいとも聞いている。そんな海域では遺伝子レベルの突然変異も他地域に比べたら容易に起こっている可能性が高い。

それが理由かどうかは分からないが、そもそも屋久島のイトヒキベラはこの個体ごとの体色や斑紋の多様性がかなり広いように感じる。
このような例はイトヒキベラ以外でも、いくつか挙げることができる。体色ひとつ取っても自然状態での多様性の幅が広いという事は、屋久島の海が豊かな証拠だ。

少し前までは屋久島の海で見られる魚の種数を増やすことに一生懸命になり、それは屋久島の海の豊かさを示す指標だとさえ思っていたりしたのだが、今はこれこそまさに「遺伝的多様性」の一例ではないだろうか?と思い始め、むしろその方が面白いかも?などと思ったりしている。

屋久島は種数の多さ(種の多様性)も誇れるが、所詮はここよりも南の海域にはかなわない。

「遺伝的多様性」の豊かさこそがここ屋久島の海の本当の特色なのかもしれない。

側面誇示行動をする普通のイトヒキベラ(後方)とイトヒキベラ属の一種(前方)

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追記:
ほぼノンダイバーの嫁さんにこの文章と写真を見せたところ、「言いたいことは分かるのだけど、そもそもこの”イトヒキベラ”と”イトヒキベラ属の一種”はどこがどう違うの?同じ種類にしか見えないのだけど。。。」と言われてしまった。。。

そう言われてしまうと、ま〜そうだよね。。。(^^;;

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