今月の一枚The Diving Junky Magazine

おおいに反省した話

タイガーシャーク

バハマでの話だが、船長がこのへんタイガーシャークがよく釣れるという。確かに、僕自身も何回か見かけることがあった。なかなか写真が写る距離まで近づけないんだけど。

というわけで、釣れるものなら釣ってくれ、撮影したいからさ〜なんておちゃらけたわけだ。朝目を覚まして、船尾にいくと、船からの釣りのラインをひきながら、大きな鮫が左右に回遊しているではないか!

で、でかい!

こりゃーやばいぞと思ってメガネをつけて覗いてみると間違いなくでかい、、おまけにタイガー、、、手負いの、、、

いやーまいったね。どうごまかそうか考えていると、なんだか泳ぐ勢いが落ちてきて、しまいにダラーンとなってしまった。死んだか、ほぼ死にかけた。

そうなると、人間達は強気になり、ラインを引っ張って、サメをたぐりよせ尻尾にロープを結び、口から道具を使ってラインを外し、どうせすでに釣ってしまったのだから、記念撮影をしようということに、、

船長いわくサメはタフだから、その後放せば死なないよ〜記念写真撮ろう!ということで、飛び込んだ。サメは口で水をすいこんで呼吸しているが、まー暴れることもなさそうな感じ。こんな写真を撮りながら、口を開いた時に、口正面の写真も撮影した。でかい、、縦になら人間を飲み込めるぐらいの大きさだ。サメってアゴ外れる感じで開くし、、、

無事撮影終了、では逃がそうと尾に結んだロープをはずしたとたん、ばひゃーーーって、とんでもないスピードですっ飛んで行った。

まな板の上のコイじゃないけど、多分酸素とエネルギーのセーブのために、静かにしていたのだろう。自分を守る本能の方が、食欲とか怒りなんかより強い、正しい生き物でよかった。

その晩は、みんなで反省したのである。生きててよかった。

吉野
吉野 雄輔

1954年生まれ
東京出身

海と海の生物すべてを愛する写真家。

大学卒業後、アジア、南太平洋、南北アメリカ、カリブ海、インド洋など世界の海を放浪、1982年にフリーの海洋写真家として活動を開始。世界80か国ほどの海を取材、《吉野雄輔フォトオフィス》を主宰。

2009年から日本全国をキャンピングカーの旅をスタート、1年の半分以上は海に潜って撮影している。

吉野 雄輔/photojournalist:
happypai.wix.com/kaitei

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