第一話 イッテンアカタチ 中段
このイッテンアカタチは、忘れもしない「脇毛の左」ぢゃなかった「若気のいたり」で、豪海倶楽部の親分に僕がツッカかった問題の魚でもあるのでした。
普段は、あまり人と争う事を嫌う典型的な静岡人間の僕ですが、この時だけは違っていました。確固たる信念と断固たる抗議を持ってその飲み会に参加しました。宴酣(えんたけなわ)で、まぁみなさん(地球魚類楽会会員諸氏)が、グダけて話しが盛り上がっているところで、我慢ができなくなって、僕がゆうすけ親分に言いました。
「何で僕のイッテンアカタチのカットを使ってくれなかったんですか!?」
これは、山と渓谷社の「海水魚」の出版に絡んだ裏話しなのです。あの図鑑には、当時20代の三保で撮影した自分の写真を全力投球で投稿させていただきました。ゆうすけさんが、いわゆる胴元(元締め)だったのですが、あまりに西表の矢野さんのカットが多い事から、一部のダイバーから「矢野図鑑」とも言われていました。(笑)
その初版のイッテンアカタチのところには、僕の送付した写真ではなく、インドアカタチの写真が鎮座しておりました。当時、アカタチ科の魚を、世界で一番フィールド観察していると自負していた自分にとって、それはそれは屈辱以外の何ものでもありませんでした。今となっては、それを屈辱ととってしまうほどの器量・裁量しか無かった訳ですが、献本で送られて来た図鑑を見て...怒り心頭だったわけです。
大人なゆうすけ親分は、歯に衣を着せて、やんわりじんわりと話しをするのですが、自分が正しいと思っている僕にとっては、それがどぉにも許せず、挙げ句の果てには写真を換えなければ図鑑として如何なものか!?くらいの事を言い出していました。そのやり取りは、当時の地楽会(地球魚類楽会の略称)のメンバーが訝し気に取り巻いて窺っていました。
見るに見兼ねた西表の矢野さんが一喝しました。
「魚類学者でもないおまえが、決める事じゃないだろ!」、「ガイドやカメラマンは、少なからず学者や研究者の恩恵にあずかって仕事をしている事もあるんだから、そこを蔑ろにして成り立つ話しじゃないだろぉ?」
それでも、食い下がる僕にバッサリ「そこまで言うなら、お前が学者になってからモノを言え!」と、あの温厚な矢野さんが切り捨てました。
それでその話しは、そこで幕を引いたのですが、良い意味で執念深い僕は、その時「モノの言える立場に、必ずなってやる!」と心に誓ったのでした。(笑)
鉄 多加志
1965年生まれ
清水出身
ガイド会所属
生まれ育った環境が、都市部?の港湾地域に近く、マッドな環境には滅法強く、泥地に生息する生物を中心に指標軸が組み立てられている(笑)この業界では、数少ない芸術系の大学出身で写真やビデオによって、生物の同定や生態観察を行う。
通称「視界不良の魔術師」
静岡・三保
ダイバーズ・プロ アイアン
〒424-0902
静岡市清水区折戸2-12-18
Tel:0543-34-0988
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