南国通信 楽園からのらくがき 豪海倶楽部  

TIDAより

今、僕はTIDAの上にいる。

昨年末からこの3月までの期間限定で宮古島24°NORTHのカタマランヨット「TIDA-again号」でデイドリームがプロデュースしてパラオクルーズを行っている。僕がガイドとして乗船するのは今回が2回目。1回目の乗船に比べて、少しは慣れてきたと思う。

お客さんは昨夜のうちに到着している。出港は朝8時。間に合うように船に乗り込んでクルー、お客さんたちと挨拶を交わす。今回はお客さんが3名、クルー、スタッフ合わせて5名。面白いクルーズになりそうだ。天気は快晴、風は7ノット、コンディションは良しとくれば、もう何も言う事がない。いよいよ出発。

ゆっくりと離岸して、船が動き出す頃、お客さんたちとコースの相談。今回のメンバーは皆パラオを何度も潜っている人たちばかり。僕的には北(カヤンゲルエリア)へと考えていたのだが、うねりがある方面は避けたいということだったので、比較的穏やかなゲメリス&ペリリューエリアで決まった。

最初の目的地であるゲドブス島へと進路を取る。パラオのスピードボートで慣れている僕らにはTIDAのゆっくりと流れる景色がとても新鮮に見える。港を出るとジグセールが上がる。オーナースキッパーである24°NORTHの渡真利さんは、セールを上げることを「風を捕まえる」と言う。なんともいい表現になんだかワクワクしてくる。思わず達郎の「Brow」を口ずさむ。テンションも上がるって。

風を捕まえたTIDAは船足静かに、でも快適な速度で進む。この移動時間がヨットクルーズの醍醐味。お客さんたちは朝食を取ったり、本を読んだり、音楽を聴いたり、日焼けをしたりと各々の時間を楽しんでいた。気持ち良い風が流れる中、僕はせっせとこの原稿を書くが、なんかそんなのも絵になってしまう。

11時前にジャーマンチャネルを越えたところで一度停船する予定。ダイビングメンバーは小型ボートに乗り換えてダイビングへと向かうのだ。今日は一応2ダイブを予定しているが未定。どうして未定なのかというと、TIDAではスケジュールを決めるという事はしないからだ。誰かが潜りたければ3本でも4本もOKだけど、だからと言ってガンガン潜るパターンばかりじゃない。スケジュールは乗船したゲストが決める。そしてその決め方はいたって自由で、スロー&メロー。午後からはビール飲んでデッキでゴロゴロするのもありなのだ。渡真利さんの話では、宮古島でのクルーズでは、ダイバーなのに全く潜らない人というのもいるらしい。このヨットではそういう遊び方も一つの方法なのだろうと深く納得する。きっと僕がゲストでもそうする気がする。

ランチをはさんでの2本はきっとゆったりペースで進むし、夕食までの時間はまた各々好きなことをして過ごすのだろう。僕はなにをしようか考える。そんなことに思いを馳せるのが楽しいし幸せな時間なのだと思う。TIDAにはTIDAに乗った人でないと分らない面白さがある。得てして遊びなんてそんなものかも知れない。おっと、渡真利さんが呼んでいる。そろそろジャーマンチャネルが近づいてきているし、ダイビングの準備を始めよう。さあ今日も思いっきり本気で遊んでやろうと思う。


秋野
秋野 大

1970年10月22日生まれ
伊豆大島出身

カメラ好きで写真を撮るのはもっと好き。でもその写真を整理するのは大キライ。「データ」が大好物でいろんなコトをすぐに分析したがる「分析フェチ」。ブダイ以外の魚はだいたいイケルが、とりわけ3cm以下の魚には激しい興奮を示し、外洋性一発系の魚に果てしないロマンを感じるらしい。日本酒より焼酎。肉より魚。果物は嫌い。苦手なのは甘い物。

ミクロネシア・パラオ

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