デジタル談義 その3 | 豪海倶楽部 |
【ゆ】 | 先月号も今月号も、いきなり難しいかもな〜と心配ですが、ま〜1番肝心なとこですから。 |
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【こ】 | 「難しい」という反響が多かったですね。 少し言い訳すると、先月の原稿は、あくまでも「プロの水中カメラマンが、デジタルカメラを導入するにあたって」という観点で往復したたくさんのメールを再構築したものでした。 |
【ゆ】 | でも、モニターというものが、どういう状態なのか知ってるだけでいいんじゃない。現段階では。 デジカメの人が増えてきて、正しいモニターが安くなってきたとき、あるいは、かなり気を使った商品が出てきたとき、買い換えタイミングであれば、買えるかもしんないし。 |
【こ】 | そうですね。自分としては、非力な未調整のモニターで見たweb上などの縮小画像に対して、階調がどうのとか、色合いがどうのとか言うことのナンセンスさに気づいていただければ幸いです。 ところで出直しの屋久島はどうでした? |
【ゆ】 | ま〜あいかわらずですが、今回も何種かの幼魚の解決の糸口というか、ひらめきがあった。 新しい幼魚も1種ふえたな。ハナフエフキというおそらくみんなの関心がない種ですが。写真もみたことない。2週間いて30本ほどしか撮影しなかったけど。 |
【こ】 | ハマフエフキ、のミスタイプではないですよね(笑)? |
【ゆ】 | ちがうよ〜〜。でも、2週間いて1種、歩留まりがわるくなってきたな〜。 |
【こ】 | 残ったものはそれなりに出会いが少ないものでしょうから仕方ないですよね。 さて、ゆーすけさんが滞在中に、しげる君の日記?にこんなことが書かれていますね。 ゆーすけさんは隣で見ていたようですが(笑)。 「デジタルでの撮り方」に関しては先月も自分が書いたように、彼も「絞り、シャッタースピードはとりあえず固定、ストロボの発光量で露出を調整」でとりあえず初心者には教えているようですね。 ここに掲載されている写真は、まぁ、しげる君が多少いじっているでしょうけど、きれいなもんですよね。 |
【ゆ】 | しげるは簡単だあ〜デジタルっていうけど、銀塩でもちゃんと教えたら、この程度は1日で撮れるよ〜。僕の生徒さんに聞いてください。 ストロボの発光量で露出を調整は、絞りすぎると、きれいでなくなるからというのが、しげるの理由だそうです。f11を限度にしてたね。より絵っぽくなっちゃうみたいだね。ま〜銀塩も、ちゃんと教えれば簡単なのは一緒なんだよ。ただ、ストロボは2コいじらなきゃだから、ちょっと面倒だね。前にSEA&SEAから、2コのストロボを1カ所でコントロールできるコードが出てたけどな〜〜 |
【こ】 | 自分も弟子入りしなくては・・・。実際、撮影に関してはほとんど自己流ですから、一度撮影現場を見せてもらえるだけでもすごく得ることがあると思うんですよ。カメラ持ちくらいしますんで、是非一度お願いします。 「絞ると、きれいでなくなる」というのはCCD(C-MOS)のサイズからフルサイズ、同じ絞りでも被写界深度が深いという理由でしょうかね。確かにコンパクトデジカメはもっともっと被写界深度が深くて、さらに絵っぽくなっちゃいますし。それとも回折現象(小絞りボケ)回避かな? |
【ゆ】 | それも絵の印象に関係するけど、それだけじゃ〜ないような。硬すぎ、コントラストですぎ、みたいな感じだね。 |
【こ】 | パッと見はきれいに見えるんですよね、そういう絵は。わかる人が見ればダメダメなんですけど。 SEA&SEAのそのコントローラーはYS350専用ですね。 イノンの新しいの、こういう機能をハウジングに内蔵してくれれば良かったんですが・・・当初の10D用では装備していたようなんですが。左右の光量をいじるのがわずらわしい、ということであれば片方はスレーブにしちゃうという逃げもありますね。 |
【ゆ】 | 完全フルオートなら最初から問題ないよね。 |
【こ】 | オートに関しては、D-2000を実際使ったことないんで、それに関してはなんとも言えないですけど、陸上での純正ストロボ自体、まだまだ100%の信頼を置くには程遠い、というのが実感ですね。あとD-2000は原理的に内蔵ストロボが付いている機種でしか使えないです。 |
【ゆ】 | あそうか〜、でもD-2000Wとかも出たよね。ころころ変わってわからんな。その内ちゃんとテストします。 |
【こ】 | D-2000Wもシンクロコードで使っている限りでは、今までのマニュアル+外部オートストロボの動きしかしないですよ。いわゆるTTLが作動するのは、内臓ストロボの発光に光ケーブル経由でスレーブさせた時だけです。 |
【ゆ】 | で、同じ100mmを使うと、2/3CCD(注)だと、160mm相当、60mmをつければ100mm相当、その場合、銀塩100mmとデジ60mmで、同じ距離から同じ大きさのものを撮ると、60mmのデジのがピントが楽、被写界深度が深い、ピントが合いやすいのが有利だけど。 (こーすけ注:ここでゆーすけさんが言う「2/3CCD」は、エントリー〜中級クラスの各社のデジタル一眼が採用しているいわゆる「APS-Cサイズ」のことです。少し前まで高級コンパクトデジカメに使われていた「2/3インチCCD」と混同しないでください) でも銀塩ならデータ量が多いから、トリミングするつもりで撮れば、一緒だよ。100mmつけて、160mmとして使ってる人が多い。要約すると遠くからUPが撮りやすいからしげるなんかも、簡単だといってるんだろうね。 |
【こ】 | 自分もその恩恵を受けているのは感じています。クリアな写真、という意味では寄ってナンボなんでしょうけど。 |
【ゆ】 | でもさ、モニターでみると、十分じゃん。印刷まですると、どこまで遠くでも大丈夫なのか、超〜〜興味あり。 で、さらにフルサイズのEOS 5Dで100mmつけて、2/3と比較すると同距離から撮ったら、5Dのほうが相手が小さく撮れてしまう。ヘタ? デジタルはトリミング簡単…。2/3と同じ大きさに被写体がなるように、トリミングすればいいんだ。同じデータ量がのこればいいわけでしょ? そしたらピントの厚さも同じ。 |
【こ】 | 1280万画素の5Dのデータを、2/3の面積にトリミングすれば800万画素のデータが残る・・・つまり20Dと同じデータ量になるわけです。うまいことなってます(笑)。 |
【ゆ】 | ほんとだんね〜〜。 だから近づける被写体、または近づく技術があれば、短いレンズとかフルサイズのがきれいな画像をあげられるというわけだと思うんだけど。ま、値段の問題と遊びということ考えると2/3でもいいけど。 ところで、シゲルのデジカメをちょっと借りてみました。D100です。デジはピントをあわせ辛いときいていたので、テストです。ま〜どうせ使うつもりもなかったので、いいかげんに撮ってみましたが、遅い被写体に関しては、なんも問題なかったです。6枚ぐらい撮って、シゲルいわく全部、ジャストピントでした。ただファインダーそのものが小さいので速い被写体では多少ストレスがあるかも。 で、今のとこEOS 5Dが候補なんだけど俺は。 |
【こ】 | ファインダーが小さいのとピントの山がつかみやすいのとは、ちょっと別の問題ですからねぇ。後者はかなりスクリーンに依存しますし。そしてピントがつかみやすいスクリーンは暗くなる・・・オリンパスのE300なんかは明るいファインダーですけどMFでピントは・・・。 ゆーすけさんの機種選択に関しては、今までの体に染み付いた「画角」を考えると5Dは正解のひとつかと思います。ただ、スペック的には「ゆったりとした」スピードのやはり中級機なんで・・・普通は水中ではほとんど問題にはならないと思いますが、ゆーすけさんの場合はシャッターのレスポンスに関してはちょっと心配です。 |
【ゆ】 | それはありますがね。結局高い方がいいにきまってるんで。デジタルカメラマガジンで、元画像を確認すると1Ds Mk2のが自然できれいですね。EOS 5Dはまだ、買うの早いし、いっそ20Dにするか〜〜って、ホントなやみますね。 レスポンスは、D100では多少不満でしたが、アナログのF90はもっと感じました。 |
【こ】 | 特にシャッターやミラー、ファインダーなどはハイエンドと初・中級機でかなりお金のかけ方が違うところですから、しょうがないですよね。 シャッターのレスポンスに関してはスペックを探しましたけど、ちょっと見当たりません。まあ、数字の上だけではなく、フィーリングも重要なところですから、実際にいろいろと押してみて比較されたほうがいいでしょうね。ただD100で多少不満程度でしたら、20Dにしろ5Dにしろかなり改善されているかと思います・・・発売時期がかなり違いますから。 さて、この1ヶ月で、 などがありました。 |
【ゆ】 | 高い防滴性能と防塵性能・・・こういうところは意外と大事だな〜〜。ほこりはめんどいしな〜〜。スペック上、あんまり、目立たないところかもだけど。 |
【こ】 | そうですよね。この部分に関しては本当に賞賛の声が大です。ニコンの良心、でしょうか。ただ、防塵・防滴はレンズのほうも対応したものを使わないと完全ではないですけどね。 あとゴミ・ほこりに関してはフィルムではなかった大きな問題があります。フィルムの場合、上にゴミが乗っかってもその1枚しか被害にあわないですが、デジタルの場合、すべての写真に同じところにゴミが乗った写真ができあがります。このゴミの写りこみは「画素数が増えるほど」「絞るほど」目だってきます。 この問題に今のところちゃんと取り組んでいるのはオリンパスだけですね。 |
【ゆ】 | オリンパスのダストなんとかですね。スキャナーのゴミ防止とおんなじようかな? |
【こ】 | いや、ソフト上でのごみ取りではなくて、CCDをブルブル震わせてゴミを落とすという物理的な、まぁ原始的な方法です。効果は結構あるようですが、メインスイッチオンのたびにこれが作動するので、すぐに撮影に入れないんじゃないかな? ソフト上でのごみ取りは、ニコンの現像ソフト「ニコンキャプチャー」が機能としてもっていますね。 |
【ゆ】 | PCと写真を簡単に整理できる、ソフトの進化は絶対必要だね。あとがめんどうなのは、困る。アップルはデジカメユーザを取り込みたいんだろうね。いずれWinにも出るだろうから、値段によっては欲しいよね、こういうの。 |
【こ】 | 参考までに、RAWデータまで対応している高速の写真ビューワーソフトとしては、DPEx、フォトのつばさなどが有名です。あと、キヤノンのカメラだけですが、MuseViewer Proなんかもあります。あと、WinCCD。これはフリーのソフトです。 ただ、このアップルのソフトはそこにとどまらない機能を備えているようですね。 |
【ゆ】 | シゲルのお客さんのデータをいじったりしてたんだけど、やっぱJPEGからちょっといじるだけで、webにだすのも、汚くなりますね〜〜っていってた。顔に似合わず、ま〜たくわかってないな〜〜!ってところがあるのにわかってる、しげるはおもしろい奴だ。 だから、データが大きくなると、あとですべての作業が、時間がかかるけどRAWで撮らないと、もったいないよな〜〜!! |
【こ】 | 顔はともかく(笑)、webデザインなんかもセンスいいですよね。 あと、RAWで撮っておくと、現像ソフトの進化で昔の写真がさらに綺麗になる、ということもすでに起こっています。キヤノンの現像ソフトが「ピクチャースタイル」というフィルムシミュレーションみたいな機能を新たに搭載してきたのですが、3世代前の「D30」のRAWデータが、当時のソフトを使って現像したものよりはるかに良くなるらしいです。(デジタルカメラマガジン12月号参照) ほとんどのカメラで「RAWとJPEGの同時記録」もできます。とりあえず容量・動作が軽いJPEGでセレクトして、いらないカットはRAWもJPEGも削除、重要なものだけRAWから現像する、ということもできますしね。 |
【ゆ】 | この、やり方だろうね。プロの場合撮影量が多いので、現像は使うときやるという方が多いみたい。売れんのは、たまだからね〜。うちなんて多分もう18万点あるぐらいだからね。 で、今回は写真さえ初めてのしげるのお客さんで、JPEGでいいんじゃないとかいってたんだけど・・・ま、基本はRAWですから、難しくても話してちょうだいな。 |
【こ】 | 写真さえ初めてで、水中でデジタル一眼ですか・・・「時代」でしょうか(苦笑)。 |
【ゆ】 | 時代時代! でもさ、いい機械だと、もうそれだけで写りいいじゃないですか! ジリオンのKissのハウジングもってきてた人いたけど、小さい! ジジ、ババ、女の人にはぴったり! D100の半分ぐらいの負担だよ。これだけで、正しい!感じもあるな。がたがた言わないで。 俺もジジだから、おもわずあれに変えたいとおもってしまった。 |
【こ】 | 自分も今の10D用ハウジングの大きさ・重さには少々うんざりきています。同じSEA&SEAだと、今度のKiss-DN用はかなり小さいようなんで期待はしていますが。 さて、コンパクトデジカメには事実上なかった「RAW」(=生)という画像の形式ですね。いろんな人と話しをしていると、「RAWは『現像』という工程が入るから難しそう」とか「めんどくさい」という声を良く聞きます。まず一般的なJPEGいう画像形式との違いを知るためにこちらをご覧になってみてください。「DNG」のところは今のところ不要ですし、ちょっとオーバーな表現もありますが。 平たく言うと、 JPEG──カメラ内で作られる「絵」に、カメラ内部で自分で設定できること(色温度、コントラスト、色味、シャープなど)を味付けとして加えて出てくるもの。 RAW──カメラ内で生成されたデータをそのままパソコンに渡して、専用ソフトで「絵」を自分でつくるもの。という感じですね。 誤解を恐れずに更に言うと、「JPEGはカメラメーカーが作った『フィルム』を使う写真」、「RAWは自分で『フィルム』を作る写真」でしょうか。「作る」と言うと難しいかもしれないですが、「調整・救済の余地・方法が大きく残る」という点ではむしろ初心者、アマチュア向けとも言えるんですよ。 |
【ゆ】 | RAWでもキャノンの今度の現像ソフト(ピクチャースタイル)みたいに、いくつかのパターンができたし、このパターンもずいぶん、楽でいいじゃないですか? あらゆるキャノンの機種で使えるんでしょ。これこそ、キャノンの基本フィルムって感じ。で、自分でやれば、自分フィルムだ。 |
【こ】 | そうですね、最初の量産機であるD30から対応していますし、別機種を平行して使っていても統一した絵作りが簡単にできますね。これ、意外と難しいんですよ、自分でやろうとすると。同時期のカメラはだいたい同じ色作りになっていますけど、世代の違うカメラでは色作りが結構違います。 そして「パターン」の細部をさらに自分好みにアレンジすることもできます。また上にも書いたように、メーカーがケアすれば、古いデータをより綺麗に仕上げることも可能になってきます。 で、先月話題に出た「レタッチ素材としては、彩度・コントラスト・シャープは比較的抑えなくてはいけません」というのも実はRAWで撮れば後からのパソコン上での決定事項なんで、撮影の時にはまったく気にすることはないわけです。 |
【ゆ】 | フィルム以上にいろんな撮影パターンに、いろんな種類のフィルムをもってかなくていいという利点はありますね。ま〜そんなアマチュアもいないだろうけど、感度の設定の自由度も考えれば、イージーにはなります。 |
【こ】 | 感度を1枚ずつでも自由に設定できるのはデジカメの大きな利点なんですけど、これだけは撮影時に決定しなくてはいけない、RAW現像時に変更できないんですよ。 あと、露出はRAW現像時にあまり大きくはいじれないですが(→画質の劣化が大きいです)。 で、デジタルでの「RAW現像」ですけど、JPEGの場合カメラメーカーが最大公約数的にカメラ内で行っている工程を、自分でやるというだけですから、いわゆる「レタッチ」とは似て非なるものですね・・・現像ソフト上でレタッチの分野もできてしまったりする機能もついていることもありますけど、それは別問題として。 |
【ゆ】 | 最大公約数はフィルムも一諸ですね。 |
【こ】 | そうですね。ただフィルムの何十年という歴史と比較するとまだまだかなりレベルが低い「最大公約数」かと思います。 水中写真の場合、RAWだと特に水深によって刻々と変わる色温度の変化と色被りに、あとからかなり対処できるということが大きな利点になっています。オートホワイトバランスはこのところものすごく優秀になっていますけど、所詮は陸上基準ですから。 結局水中写真(特にマクロ)でストロボを焚くというのは、明るくするよりも色を出す(色温度を陸上並みにする、青被りを取る)ということじゃないですか。だから、突き詰めると、ストロボなしでもきちんと色が出る、とも言えます。実際には「赤」が残っている(地上光がそれなりに届いている)水深でのお話しですけどね。 |
【ゆ】 | そうでもないかな。色かぶりが、青の世界で海だから当然だし。色を出す、+やわらかすぎて散漫な光の調整、被写体にかっこよく影をつける。 難しく書いたけど、簡単にいうと、沢山役割がある。たとえ浅い水深でも。で、わざと、ストロボを強く使ったり、弱くしたり、左右のバランスを変えたりって、1番おもしろいとこなんだけど、なかなかガイドの人で教えられる人いないけど。 パシ!きれいに写った!までだもんな〜〜これにはね、デジタルのが易しいだろうね。少しだけど。 |
【こ】 | すみません、ちょっと耳が痛いですね。自分も陸上で人物撮影なんかするときには複数のストロボをあっち向けたりこっち向けたりと、いろいろと工夫するんですけど、レフ板すら使えない(やってやれなくはないでしょうけど)水中では、どうしても補助光に対する考え方が甘くなってしまいますね。本来は逆にシビアになってしかるべきなんでしょうけど。 ただアマチュアの水中(マクロ)写真の最初の目標は「いやな影のない、バシッと色が出た写真」なんですよね。自分もまだそのレベルということです、はい。 さて、「現像の実際」ですが、文字だけではどうしても伝わらないですよね。だから今回はちょっとスペースをとりますけど、実演を画像で追ってみたいと思います。わかりやすいように極端な例を出しますが。ここまで行くともう「補正」ではなく「救済」ですけど、実際には。 使う現像ソフトはフォトショップについている「CAMERA RAW」というソフトです。自分のフォトショップはCS2ですけど、ずっと安い「エレメンツ」にも機能制限はありますが備わっているものです。今回は機能制限部分は使いませんし。 また、各段階でのヒストグラムの変化と実際の写真の変化の関係にも注目してください。(ヒストグラムに関してはこのあたりを参考にしてください。ただ今回はさらにRGB別のヒストグラムになっていますが・・・。) |
【ゆ】 | うん、多少の救済は、いいよね。 |
【こ】 | この例は「救済」すらはるかに超えていますけど(笑)、すごく貴重な被写体が撮れたけど、かなり不完全なものだった場合、なんとか見れるものにできる、というのは大きいと思います。 さて、まずこれが、CAMERA RAWで開いたところです。 状況的には春濁りがまだ取れない緑がかった濁った海、透視度は5m程度、水深は10mくらいでしょうか。寄りが足りなく、かつストロボの発光量が足りない「使えない」写真です。 |
【ゆ】 | うんうん。で一言付け加えると、春濁りだな〜〜という、感じは撮れてるのね。だからこの中に、写真の大切な部分があることを、わすれないでね。 コースケさんのいうとおり、このままでは、ダメっぽいけど、感じは撮れてるのね。いい写真を作る上での参考になるのね。 |
【こ】 | またまた耳が痛いです。「長所は短所」ではないですけど、「綺麗にしすぎちゃう」危険は大いに孕んでいますよね。 ただ今回は効果がわかりやすいように、色かぶりを極力取って「水深1mのクリアな海の写真」を目指しますけど、もちろん意図的に色かぶりを残すこともできます。 で、これなんですが、あくまでもこれは撮った時のカメラの設定で出てくる絵・・・つまりJPEGでオートホワイトバランスで撮ったらこういう感じでカメラ内部で処理しますよ、ということですね。撮った後にカメラの液晶に出てくるものと基本的には同じです。これこそが「撮ったままの絵」であって、これをいじることは・・・、と言う人もいますけど・・・(苦笑)。 |
【ゆ】 | なるほど、なるほど・・・いじったっていいよ。いじらないでいいように撮るってほうが楽だけどね。 |
【こ】 | そうですね。実際のところ撮影環境をきちっと整えられて時間をかけられるような場面、例えばスタジオでのブツ撮りなんかだとカメラの設定も、光のコントロールも追い込めますからJPEGで撮ったままで十分だったりするんですよ。 ただネイチャー写真、特に水中ではそれとは対極の環境のひとつですしね。 |
【ゆ】 | 撮ったままの絵なんてのは、ないんで、撮った心が大事なんですね。(おやじくさい・・・っておやじだもん) 心というか、自然を撮ってるのだから、それなら、やらせの方が、考えるべき問題だね。一概に、綺麗な絵を否定しないけど。背景を変えた、環境をかえたような、撮影場所をかえたような・・・でも、ありえない環境で撮った写真は注意して使うね。 俺は、ま〜図鑑でつかえば、無意味な写真になっちゃうわけだよね。見る人の中には、環境を参考にして捜す人もいるからね。 |
【こ】 | ネイチャー写真という限り、どこかで線引きが必要ですし、自制も必要ですね。 さらにデジタル化して加工が容易になって・・・どこまでが許されるか、というコンセンサスはだんだんとできてくるかと思いますが。 先日、産経新聞が、鳥と月の両方にピントの合った写真を出して問題になりましたけど、「合成です」と一言書き添えておけばなんの問題にもならなかったと思うんですよ、写真の一つの技法としては・・・フィルムの二重露光と同じ結果のものができているわけですし、今度のD200なんかも多重露光の機能を備えていたりします。 |
【ゆ】 | そうですよ、合成あるいは、イメージ。 でもさ、本人はあのイメージを求めてたわけじゃない。ただ、物理的に撮れなかっただけじゃない。ま〜新聞という媒体に期待されてるものでないと、いうことでしょう。 |
【こ】 | さて、右上のヒストグラム(赤の囲み)を見て欲しいんですが・・・本来、R(赤)G(緑)B(青)の3つの山があって、3つがうまく重なっていると「色かぶりのない写真」なんですけど、この場合、左の山はRとBが重なっているんですが、Gだけが右にずれている=明るくなっているんで「緑かぶり」になっちゃっているわけです。 そこで、まず「色温度」と「色かぶり補正」をいじります。ごく簡単に言うと「色温度」は「赤⇔青」、「色かぶり補正」は「マゼンダ⇔緑」に対応しています。 フォトショップ関係の場合、だいたいですけど上からいじっていけば劣化や破綻が最も少ない順になっていますが、今回の画像は明らかな緑かぶりなんで、「色かぶり補正」からいじります。これはRGBのバランスを変えるもので、他の現像ソフトには(たぶん)ついていない、かなり手軽で便利な機能です。 この機能はデジタル水中撮影で多い緑かぶりを簡単かつ綺麗に取れるので、初心者にこの現像ソフトを勧める大きなポイントです。あとスピードが速い点はゆーすけさん向きですね。 |
【ゆ】 | うんうん、かわりましたね。 |
【こ】 | 次にちょっと青かぶりした感じなんで「色温度」をいじります。(赤の囲み) |
【ゆ】 | 透明度が悪い感じですね。 |
【こ】 | もうこれだけで、まったく違うものになりましたよね。実際には、この2つの数値を少しずついじりながら最適なバランスを探します。この例の場合、ちょっとニュートラルすぎる(不自然に色かぶりがない)かもしれません。 まぁ、ここでも「どれくらいモニターの色などが信頼できるか」というところに戻ってしまいますけど(笑)。 |
【ゆ】 | ま、それはしょうがない。 |
【こ】 | さて、このままでは「ねむい」ですよね。ヒストグラムを見ると左右ともに山のすそが左右まで広がっていません。これが典型的な低コントラストのヒストグラムの山です。(写真3の青の囲み) |
【ゆ】 | 丁寧な説明でわかりやすいですね。 |
【こ】 | 「難しすぎる」の声が大きかったですから(笑)。 で、コントラストを上げるんですが、簡単には「コントラスト」のスライダーでもできますけど、機能紹介のため、今回はまず「山の右すそ」を右端近くまで持っていくために「露光量」のスライダーを動かします。 さらに「山の左すそ」を左端近くまで持っていくために「シャドウ」のスライダーを動かします。 これで、ヒストグラムの山のすそはだいぶ左右に広がりました。ま、これじゃあちょっとハイキー(全体的に明るい)かな、と思ったんで、「明るさ」のスライダーを少し動かして、ちょっとアンダー目に振りました。 ヒストグラムの山全体が少し左にずれました。 |
【ゆ】 | ハイキーとか、ロウキーとかは、あとから作れるものなので、適正が肝心なのは、デジタルになると、余計そうですね。 |
【こ】 | まだちょっとねむいかな、なんで、今度は「コントラスト」のスライダーで微調整です。 ヒストグラムのすそ野がさらに左右に広がりました。 最後に彩度(色の鮮やかさ)ですが・・・この作例だと顔の黄色以外はほとんど無彩色なんであまり意味はないですが、すこし上げておきます。 これでだいたい現像の完成ですね。ただこのままだとまだ少々フラットなんで、すこしフィルムチックにするには、もう少し暗部をつぶしてやります。 |
【ゆ】 | フィルムチックは別に必要ないですけど、きれいならいいんで。 |
【こ】 | ははは。どうしても「フィルム写真を見る目」になっていますから、暗部を少し落とさないとコントラストが足りない、と感じる場合が多いです。意図的にやわらかい写真を作る場合はもちろん別ですけど。 さて、あらためて現像前と現像作業後を並べてみましょう。 比較写真 |
【ゆ】 | あくまでわかりやすいための、極端な例です。 |
【こ】 | レタッチはいじればいじるほど、画質が劣化しますが、現像過程ではほとんど劣化はないです。「露光量」と「明るさ」に関しては限度は低いですが。 また上の「シャドウ」「ハイライト」のチェックボックスにチェックを入れておけば、「黒つぶれ」「白とび」の部分に色が出て警告してくれます。下の写真の例だと、ベタで赤くなっている部分が白とびしているところです。(これはわざと白飛びを作ったんですけど) |
【ゆ】 | 僕的にいわせてもらうと、こういう作業を撮るときにやるということですね。 RAW現像をすると、それがよくわかるかもですね。僕らモノクロ現像、紙焼きで勉強してきましたから・・・うまくイメージでないで、よく徹夜になっちゃったな〜〜。 |
【こ】 | 今はある程度、モニターとプリンターの整合性が取れてきましたけど、前は四苦八苦でいじってはプリントを繰り返していましたよ。 で、この「白飛び・黒つぶれ警告」は現像時にやり過ぎないように、とか「ここまではつぶしても(あるいは飛ばしても)いい」というのをわかるようにする機能でしょうね。 あと、単純な「白飛び」だけではなく「色の飽和」も警告してくれます。例えば赤が飽和すると(デジタルでは一般的に最も飽和しやすい色です)、そこから先はのっぺりした階調のない赤でしかなくなるわけです。色温度や彩度をいじる場合、これは重要な指針になります・・・まぁヒストグラムでも見れるんですが。 この通り、いろんな場面でヒストグラムはかなり重要なんで理解が必要ですね。カメラでも撮った直後から見れますし。 というわけで、ゆーすけさんも言っていた「デジタルでの自然光撮影」ってすごく可能性がありますでしょ? 結局この写真はほとんどストロボがあたっていない=自然光でのものですから。ただ、自然光だとキャッチライトが入らないですけど。 |
【ゆ】 | 今月のまとめ さらに、ストロボ撮影でも、昼間撮るかぎり、自然光の影響はあるわけです。そこで、水中写真を撮るうえで、1番肝心なのが、自然光を生かしたり、殺したり、生殺しにしたり、ストロボ光を生かしたり、ちょっとにしたりと、バランスをいじることなんです。 今回のコースケさんの緑かぶり、あんなにかぶると、ダメだけど使える範囲で緑をかぶらせたりするのが味というか、人それぞれの好み、作品になるわけですね。 ちょっと脱線しましたが、RAW現像はやっぱ、デジカメには必要だよね〜もったいない・・・でもJPEGで気楽にってのが素敵、という人を否定はしません。ただゴウカイでは、本当に知りたい人むけにやっていきますけど。 来月はもう少し、親しみやすいのにしたいな〜〜。 |
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