ガイドのつぶやき 海辺のエッセイ 豪海倶楽部  

恋する夏なのだ!

6月20日。

あら、今日はもう原稿の締切日だ!!と慌ててパソコンを開いている時、テレビが「沖縄・奄美は梅雨明けです」と伝えていました。八丈島は東京都ですから天気予報の時には関東地方の中に入るのですが、実際の入梅・梅雨明けのタイミングは沖縄の方が近い感じです。八丈の熱い夏は、もうすぐだっ! ってことですね。

海の透明度もぐんぐん上がって、陸も海もベストシーズンに突入です。水温の上がり方は例年より若干遅めですが、魚たちは熱気ムンムン。あっちでも、こっちでも、オスが目の色を変えて興奮している様子が見られます。

このコウライトラギスを見つけたのは、実はゲストのリクエストでコンシボリを探している時。ちょっと時期はずれだったので、時間をかけて水底を舐め回すように探していて、ふと彼女と目が合ったのです。

「あの…、もしやコウライトラギスさんでは?」
「そうだけど。何か?」
「いえ、あまり八丈にはいらっしゃらない方だと思っていたので珍しいなと。それに、妊娠していらっしゃるようですね。」
「珍しいだなんて、あなたが知らなかっただけでしょ。私、今大事な体なんだから余計なストレス与えないでよね。」
「はい。今日の用事は別件ですので…さようなら。」

結局コンシボリは1個体が見つかり、とりあえずゲストには喜んで頂けました。私は早速図鑑でコウライトラギスを確認。驚いたことに、コウライトラギスに関しては、ずいぶん詳しく産卵について記載されているのです。こりゃあ、産卵の瞬間が見られるかも♪と、数日後の夕方同じ場所へ。これがまた、ずいぶんと簡単に見られました。彼女は全く同じ場所で、ぽっこり膨らんだお腹を抱えてたたずんでいたのです。

彼女が言っていた通り、少ないと思っていたコウライトラギスは産卵の時間になると次々と現れ、順番に産卵をしていきました。産卵の仕方は想像していたのとは違い、ものすごーくあっさり短時間。オスがメスの所へやってきて

「さ、やろ。」
「はい。」

ぴゅっ。終わり。さ、次のメス…。

産卵の瞬間はとてもじゃないけど撮れません。2匹でどうやってタイミングを計っているのか不思議な程の瞬間芸です。

唯一、私たちが写真を撮りまくったペアだけはメスが嫌がり、ぶち切れたオスがメスを岩の隙間に追い詰めて乗っかってしまうという愛憎劇を見せてくれました。カエルじゃあるまいし、乗っかられちゃあ産めませんがな。

トラギスの仲間は皆こんな感じなんでしょうか? これに比べるとベラの仲間は大変です。何度も何度もメスに自分の男っぷりをアピールして、それだけで体力を消耗しそうです。メスにじらされたからって、いちいち切れてるわけにはいきません。

ちょっと深場のクロフチススキベラ。

色を変えてメスを誘っていますが、メスは全く関心の無さそうな顔。どちらかと言うと迷惑がっているかも。毎日、毎日、彼はこうして頑張ってるんだろうねぇ。ご苦労さん。

他にも、八丈の海は恋する魚たちでいっぱい!
そして、既に可愛いベイビー達があふれ始めているんだよ♪


水谷
水谷 知世

昭和40年代生まれ
兵庫県出身

一見、負けず嫌いで男勝りというイメージだが、実は繊細な女性らしい一面を持つ、頭の回転はレグルス一番!!の頼もしい存在である。(レグルス親方・談)

伊豆諸島・八丈島

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