ガイドのつぶやき 海辺のエッセイ 豪海倶楽部  

恐怖の共同生活

他人との共同生活を経験したことがありますか?

初めて友達と一緒に寝泊りした時には、それまでは当たり前のことで、皆もそうに違いないと思っていた日常生活の常識がくつがえされ、驚くことが少なからずあります。家族以外の人と生活してみて初めて自分自身を再認識したり、価値観の違いを感じたりして、人間の幅を広げていくのでしょう。

私が一番刺激を受けたのは、車の免許の週末合宿に参加したときです。教習所の近くマンションの一室、各部屋にぎっしりと2段ベッド。そんなところで、初対面の人たちと一夜を共にするのです。年齢も職業もバラバラ。

私はそのとき24才だったのですが、最年少の18歳の女の子からはオバサン扱い。自称モデルの女の子で、テレビにも出演したことがあるというのがたいそう自慢のようでした。深夜になると、男の子たちが迎えに来て、夜遊びに出かけてしまいます。今の私と同じくらいの年齢のお母さんもいました。なかなかハンコが押してもらえないと愚痴をこぼし、暇さえあれば、何かぶつぶつとつぶやきながら、手でハンドルを回すような仕草をしていました。部屋は別ですが、男性陣の方は、学生、サラリーマン、暴走族、やくざさんの免許取り直しなど、さらにバラエティーに富んでいるようでした。今思い出しても、本当にバラバラのメンバーなのに、特にトラブルもなく、一緒に交通ルールを覚えたり、教官の悪口に花を咲かせたりしていたのです。その後、ボートの免許を取るときにも似たような経験をし、楽しかった思い出の1つになっています。

サカナたちの中にも、小さい時には、こんな共同生活をして過ごすものが少なくありません。例えば、風にのって流れていく海藻の中で過ごすサカナたち。ただ一緒に暮らすだけでなく、そのままどこへ流れていくかわからないのですから、漂流船に乗った運命共同体です。楽しかった思い出にできる程、生易しいもんじゃないんでしょうね。

八丈島は、外洋の囲まれ、あまり複雑な形をしていないため、海藻が流れ込んで停留するような湾があまりありません。それでも、南西の風が吹くと、八重根やナズマドに流れ藻がやってきます。そんな流れ藻で、ちょっと一休みしているアオリイカのちびちゃん達。流れ藻に付いてる甲殻類が食べ放題、といったところでしょうか。甲殻類の方は、たまったもんじゃないでしょうね。

カワハギのちびちゃん達も雑食性。大きな捕食者達からは身を隠しながら、自分たちは食べ放題。みんな、自分の仲間たちと寄り添いあって、流れ藻の中で暮らしているんですね。

でも、この小さな捕食達、食べ物がいっぱいあって、しかも安全な流れ藻の中でスクスク育つ・・・かと思いきや、とんでもないギャングが住み着いてしまったりするのです。かなり大きなサカナでも、丸呑みしてしまうスゴイやつ。ダイバーには人気者ですが、こんなのと相部屋になったら、生きて帰ることはできないんですよ〜。

まさに恐怖の共同生活になっちゃいますね。


水谷
水谷 知世

昭和40年代生まれ
兵庫県出身

一見、負けず嫌いで男勝りというイメージだが、実は繊細な女性らしい一面を持つ、頭の回転はレグルス一番!!の頼もしい存在である。(レグルス親方・談)

伊豆諸島・八丈島

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