ガイドのつぶやき 海辺のエッセイ | 豪海倶楽部 |
たけのこの里? そんなに大昔の話をしているわけではないのですが、私がダイビングにはまり始めた頃、まだインターネットはそれほど普及していませんでした。自宅にパソコンを持っている人も少なかったし、持っていてもワープロや計算機代わり。電話回線につないでインターネットを見ても面白くなかったし、いつも接続時間を気にしていないと恐ろしい金額の回線使用料がかかりました。 そんな時代だったので、自分が行ったことのない地域の海にどんな魚がいるのか、自分がいつも潜っている場所で見慣れている魚は他の場所にも普通にいるのか、なんていう情報は、ダイビング雑誌で垣間見る程度でしか得られませんでした。ダイビング雑誌に載っている情報なんて、ごく限られた種類ばかりですもんね。 例えば、IOPでは見慣れていたキンチャクダイ。 あまりにも見慣れてしまって、何の根拠もなく、キンチャクダイなんて世界中どこにでもいるんだろうと思い込んでいました。そして、いつの間にか無視するようになり、IOPでは滅多に見られない、いわゆる「レアもの」を見て喜んでいたのです。ところが、八丈ではキンチャクダイこそが「レアもの」。まさか八丈の水温で湯当たりというわけでもないでしょうが、水温が低い時期に幼魚が現れるだけで、成長を見ることはありません。逆向きの死滅回遊魚といったところでしょうか? ところで、そのIOPで「レアもの」を追いかけていた頃。 ダイビング後の飲み会で、「数少ないレアな魚は一体どうやって繁殖しているんだろう??」という話題で盛り上がったことがありました。先ほども言ったように、他の場所の情報なんて、無いも同然でしたから。その時、誰かが「たけのこの里」を頬張りながら「きっとさ、実はどっかにそいつらがうじゃーっと群れている場所があるんだよ。たまたま間違ってIOPに来ちゃったのを俺達が見てるだけでさ、そいつらの里がどっかにあるんだよ。」と言って、周りの酔っぱらい達に「おぉぉぉ!!」と賞賛されていたのでした。その時でさえ、IOPが「キンチャクダイの里」だということには、誰も気付いてなかったのですが。 話し変わって。 八丈では、水温が高い時期になると、50m以深でちょっとレアなハナダイが見られるようになります。最近では、オオテンハナゴイとアカボシハナゴイの幼魚が群れになって出現しました。すぐ近くでは、フチドリハナダイの若魚もよく現れます。八丈で見ている限りでは「このハナダイ達は深場の魚」。 ところが、数年前に初めてパラオへ行った時、オオテンハナゴイもフチドリハナダイもハーレムを形成して幼魚から雄まで勢揃い、というのが20mより浅い場所で見られ、ビックリしました。一体、八丈で何をそこまで頑張って見に行っていたのか…。パラオという「オオテンハナゴイやフチドリハナダイの里」へ行けば、エントリーしてから5分以内で撮り放題。 どう考えても、八丈でこんなハナダイを撮ろうとするのは愚の骨頂…。わかっていても、撮りに行ってしまうのは、どうしてなんでしょう? 「たけのこの里」も数量限定発売になれば、飛ぶように売れるってことなんでしょうか? |
水谷 知世 昭和40年代生まれ 兵庫県出身 一見、負けず嫌いで男勝りというイメージだが、実は繊細な女性らしい一面を持つ、頭の回転はレグルス一番!!の頼もしい存在である。(レグルス親方・談) 伊豆諸島・八丈島 レグルスダイビング 〒100-1511 東京都八丈島八丈町三根1364-1 Tel/Fax:04996-2-3539 http://www.edit.ne.jp/˜regulus |