沖縄周遊見聞録 豪海倶楽部  

第2回 久米島・秋野面白いじゃん事件

沖縄周遊の6カ所目になる久米島。今回お世話になるのは久米の名店エスティバン。

丁度同じ日程で雄輔さんが撮影のために来ている。雄輔さんにも会いたくてこの日程にしたのだったが、各地で連日歓迎の飲みを授かりちょっと疲れ気味の肝臓を抱えて二日酔い。そんな状態で久米島入りをしたもんだから、空港の外に出たとたんに熱気にやられて気持ち悪い。気温32度。クラクラと倒れそうになるが、そんなこと恥ずかしくてとても言えない。宿に到着すると午後の船に乗れるとのこと。「そのままそっとしておいてください」と言いたい気持ちの方が強いくせに、乗れると聞くと条件反射的に「行きます!」と言ってしまうダイバーな自分が恨めしい。エサを見せるとサッとお座りをするウチの犬と同じレベルか。犬は本能、僕は理性。本能的ではないので僕の勝ち。そんなくだらないどっちでも良いことを考えながら暴れている胃にお弁当を半分だけ入れる。

1時間後の迎えはあっという間に来てくれた。港までの道、車の中でガイドの純平君と少し話す。さわやか好青年である。さわやか好青年と話をしていると爽やかな気分になるものだが、今日だけはそれを許さない胃袋がまだ騒いでいる。本来なら海を見ながら「おお〜」とか「わぁ〜」とか言っているはずなのに、弱った胃袋抱えて「うう〜」とか「はぁ〜」とかいうのはシアワセな状況ではない。もうこれだけ反省しているのだから許して欲しい。

港に着くとエスティバンのガイドメンバー全員と雄輔さんが揃っていた。雄輔さんって人は有名なのにそんなことちっとも鼻にかけずに「お〜、アキノ〜来たか〜」と言って迎えてくれる。一緒に潜っているお客さんたちとも普通に話していて、とにかく一緒に居てとてもアタタカイ人なのだ。僕がこの豪海に参加させてもらっているのもそんな雄輔さんが主幹だからだ。

そんな雄輔さんと、エスティバンのボス川本さんは1月の写真展以来だったので8ヶ月ぶりだ。船に先に乗り込んでいた川本さんに挨拶を済ませ早速海へ。潮風に当たるととたんに気分が良くなる。

初日のガイドは達也君だった。僕に気を使ってくれたのだろう「何が見たいですか?」と丁寧に聞いてくれる心意気がうれしい。「なんでもいいです。エスティバン的、清く正しい久米島を見せてください」とワケのわからないリクエストをした。久米島の勉強不足を大人的“はぐらかし”でごまかす。記念すべき久米島初のポイントは「カスミの根」。第1印象はリーフの上にハナゴイがゴチャッといてとても賑やか。素晴らしい光景だなー。「久米は多いんですよー」と言う達也君はちょっと自慢げだった。そりゃそうだよなー。

4日目は塩ちゃんと潜った。ポイントはトンバラ。名前だけはパラオまで聞こえて来ていた憧れの場所の一つだ。塩ちゃんは僕を“野放し”状態で遊ばせてくれたのでコレデモカ、コレデモカ的にあっちこっちと見て回った。こういうの嬉しいんだよなぁ。

エスティバンで潜っていて物凄く感じた事はガイドそれぞれの色が違うこと。一人ひとりが「僕のガイドはこうである」という、しっかりとしたビジョンを持っている。同じポイントに潜ってもガイド毎に違う切り口、見せ方でとても新鮮に潜れちゃう。ゲストが“楽しむため”には海自体も大事だが、ガイド力に依存する部分がとても大きい。それを改めて実感させられる。当然そこにはきちんとした“ガイドとしての基本”が個々にあるから成せる業で、日ごろからの努力が仕事に見えるようだった。とある場所の新人ガイドが実力の無さを隠すために使っていた「オレの〜スタイルってこうだから〜」的なフザケタものではなく、じっくり自分のスタイルを見つめ続けることによって作られた個性。そこにはそれぞれ個々がお互いのスタイルを真似出来る、ボトムクオリティーの高さ(平均値としての質の高さ)が絶対条件として確立されることが必要で、ここにはそれがある。う〜ん、プロだね。帽子を脱いじゃおう。こんな人たちと潜っているのだから楽しくないわけがない。

そう言えば、最終日に(毎日そうだったが)川本さんと雄輔さんが居酒屋に連れて行ってくれた。また最後は居酒屋ネタかと自分でも書いていて驚きだが、実際こういうところが一番面白かったりする。ビールから始まり泡盛へと自然に、かつ意識的に乗り換えていく。そしてかなり酔っ払った。川本さんが途中で「何だよー、秋野〜、面白い事言えるじゃん」と無性に誉めてくれた。僕の言った言葉がツボに入ったみたいだった。僕も酔っ払っているから歯止めが利かない。騒ぎ、話して、そして飲んだ。雄輔さんもいるのでより楽しかった。今回川本さんには海のことや人生の事、いろんなことを教えてもらった。その時は頭も心も知恵と満足で一杯になった。しかし、いかんせんこちらも飲んでいた。

今、原稿に向かっていろんな事を思い出そうとしている。真っ先に思い出した川本さんの言葉は「秋野〜、面白い事言えるじゃん」の一言だった。


秋野
秋野 大

1970年10月22日生まれ
伊豆大島出身

地元の海でガイドデビュー、その後もっと熱くガイドができる海で仕事がしたい、とパラオへ。移住後、まずは魚を知るべし、と一年以上図鑑を枕にしながら毎晩眠る。自称カメラマニアで写真は好きらしいが、デジタルには全く歯が立たない。

ミクロネシア・パラオ

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