ガイドのつぶやき 海辺のエッセイ 豪海倶楽部  

第二話 羽衣を纏った男

途中で和名が変わった数奇な運命を持つ魚がいます。もともと鹿児島で発見されたので、クマソハナダイと呼ばれておりました。その後、他の海域にも生息していることが分かり「クマソ...っていうのもねぇ?」みたいな話しになったんでしょう。オスの特徴である、赤い横帯からアカオビハナダイと改称されたのです。

この話し、聞いてしまえば単なる学術的なことで終わってしまいそうですが、突詰めて行くと一つの物語ができあがります。もともとクマソって言う、カナリ男らしい!名前が、オスの特徴からアカオビに変わりました。つまり♂つながりで名前が変化しております。しかし、ハナダイの仲間は雌性先熟と言って、生まれた時は皆さんメスなんです。つまり生息数の圧倒的大多数がメスな訳です。民主主義の原則からすると何か違和感を感じてしまいます。それを最初にクマソなんて言う男前!の名前を付けられた挙げ句に、これまたオスの特徴で名前が付いてしまうなんて...。

やっぱし、ハナダイの仲間は、オスがハーレムをつくるくらいだから、オスが強いんですかねぇ? けど、アカオビハナダイの総合的な話しからすれば、数奇な運命を辿っていると思いませんか? しかも、そのオスが綺麗なんです。(自然界ではアリがちな話しですが)性転換して赤い帯がクッキリと見える頃になると、まるで羽衣を纏ったような胸鰭と尾鰭が優雅な感じを醸し出します。(ちょっとホメ過ぎ?)


アカオビハナダイ(オス) 水深20m

鉄
鉄 多加志

1965年生まれ
清水出身

生まれ育った環境が、都市部?の港湾地域に近く、マッドな環境には滅法強く、泥地に生息する生物を中心に指標軸が組み立てられている(笑)この業界では、数少ない芸術系の大学出身で写真やビデオによって、生物の同定や生態観察を行う。

通称「視界不良の魔術師」
静岡・三保

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